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2018秋季総合特集Ⅳ(2)/テキスタイル輸出座談会

2018年11月01日(Thu曜日) 午後4時27分

〈出席者(社名五十音順)〉

宇仁繊維 営業第三部次長兼第十三課欧豪G課長 小松 恵 氏×柴屋 東京営業所営業課部長代理 川名 一貴 氏×北高 大阪営業部営業2課係長 枚田 真一 氏

 日本の生地にはかつて、世界を席巻した時代があった。時は流れ、生地輸出に往時の勢いはない。ただ、仏の服地見本市「プルミエール・ヴィジョン(PV)・パリ」の出展者数でイタリア、フランス、トルコに次ぐ4番手に位置し、優れた生地を選出する「PVアワード」も日本企業が数多く獲得している。日本製テキスタイルの評価は世界的に高い。ただし課題も多い。輸出拡大を方針に掲げる生地商社で現場の最前線に立つ3人に集まってもらった。

  ――まずは、自社の輸出事業の現状を教えてください。

 川名氏(以下、敬称略) 欧州ではパリのPVのみに出展していて、今回が5回目でした。欧州以外では中国の「インターテキスタイル上海アパレルファブリックス」に出展しています。3社の中では会社の歴史は最も古いのですが、輸出歴はまだ4年目と完全に新参者です。1年半前から欧米でようやく実績が出て、今はそれを拡大しているところです。まだ分母は小さいながら、右肩上がりではあります。

 輸出拡大は会社の一大方針。そのためにイタリア人スタッフを雇いましたし、それが欧州での実績の要因でもあります。英語が話せるスタッフ4人、フランス語が話せるスタッフも1人採用しました。これにより輸出売上高の拡大を加速したいと考えています。商社さん経由も多いのですが、直接輸出の売上高は現状、1億5千万円ぐらいです。輸出人員は中国向けを除いて専任が6人ですね。

 牧田氏(同) 当社はPVパリとイタリアの「ミラノ・ウニカ」(MU)に出展しており、他に「PVニューヨーク」や「LAテキスタイルショー」などに出展してきました。PVパリには2006年から出展しており、日本企業では早いほうだと思います。

 輸出実績については、当社も商社さん経由と直接とがあり、直接輸出で大体3億円前後の売り上げですね。浮き沈みはもちろんありますが、最近はこの水準で安定しています。輸出人員は4人プラスデリバリーという体制です。

 小松氏(同) 欧州ではパリのPV、MU、「ロンドンテキスタイルショー」に出ていて、PVニューヨーク、LAテキスタイルショー、ドバイや香港、ジャカルタの服地展などに出展しています。基本的には出られる展示会には全て出るというスタンスです。

 2018年8月期の輸出売上高はほぼ横ばいでした。昨年あった大口がなくなったことなどで欧州向けが苦戦したのですが、中東や米国、ASEAN地域向けなどは伸びています。地域を分けてグループで対応していて、今は北米グループ、欧豪グループ、それ以外グループという形です。輸出人員は20人です。

  ――エージェントと契約するのが欧州輸出の一般的な手法ですが。

 小松 エージェントは数カ国で契約しています。直接輸出もあれば、商社さん経由もあり、克服すべき課題ではあるのですが、バッティングが起こることもあります。

 川名 当社もエージェント、直接、商社さん経由でそれぞれ実績がありますが、錯綜(さくそう)することも多いため、今後は交通整理が必要だと考えています。

 牧田 以前はエージェント契約もしていたのですが、現在はしていません。当社の特徴は備蓄販売なので、それを理解して強みとして販売してくれるエージェントがなかなかいない。それが契約をやめた理由です。

〈メゾンも備蓄機能を求めている〉

  ――それぞれの会社の輸出に関する特徴、セールスポイントは何でしょうか。

 小松 備蓄機能による小口・短納期対応が最大の特徴だと思います。PVのバイヤーも最近は1反、2反を発注してくるところが多いため、小口対応という機能が重宝がられます。大手商社さんや大手メーカーさんがロットの面で対応できなかったような小口を求めるブランドを拾っていっているイメージですが、それこそが当社の役割であると感じています。最近はメゾン系のブランドからも「備蓄品以外は見せなくていい」という声が出るぐらい、欧州でも備蓄品による小口即納サービスの需要が高まっています。梨地などの定番品が売れ、それを聞いた他のブランドや他の国のバイヤーも買っていくといったケースも増えています。

 一度でも買ってもらうと、継続的に買ってもらえることが多いのも当社の輸出事業の特徴です。いわゆるリピート客ですね。全ての品番を十分に備蓄しているわけではないのですが、生産の部署が各営業課と連携して、引き合いがあった段階で糸を用意し、生機をすぐに生産するという体制を、自家工場、提携工場で構築しています。

 課題はプロをうならせるような開発がまだまだできていないこと。今回のスタイレムさんや東レさん、前回のエイガールズさん、過去グランプリに輝いた小松マテーレさんなど複数の日本企業が、優秀な生地に与えられる「PVアワード」という称号を獲得してきていますが、当社もやっぱりそこは目指したい。顧客から情報を得て、先も読み、売れるものを作る能力は一定あると思うのですが、生地自体が本当に優れていたり、独創的だったりするものを開発する力は当社にはまだありません。後加工で表情を変えるような開発は得意なのですが、糸や織り組織で一から独自のアイデアを出し、それを形にするような開発力はまだ知識の面でも足りていません。企画部隊と輸出部隊の連携もまだまだ弱い。今後は開発力をグッと引き上げ、来年2月のPV20春夏ではこの部分に力を入れた展示をしたいと考えています。

 牧田 強みは宇仁繊維さんとほぼ同様です。当社も強みは備蓄力。加えて言えば、プリントコンバーターとして年間数百点の柄をオリジナル開発する柄開発力は強みだと思います。それを、アーカイブ含めて別注につなげているところも強みです。

 今は休止しているのですが、以前は輸出専用の企画として「アッシュ・ソレイユ」という自社生地ブランドを展開していました。PV事務局からの要請を受けたものでもありました。ただ、見せる商品と売れる商品はやっぱり違う。同ブランドでは見せるほうに重きを置いていたのですが、あまり売れなかった。ですので、今持っている(国内向けで備蓄している)生地をいかに海外でも買ってもらうかに精力を傾けるようにしました。個人のレベルで輸出を意識した開発を行うことは今でもありますが、会社全体として輸出向けの生地をカテゴライズすることは今はやっていません。限られた人員の中で現場なりに効率を見極め、優先順位をつけた形とも言えます。

 川名 当社も宇仁繊維さん、北高さんと似たようなところです。備蓄機能を強みとしており、即納・小口サービスを磨いて発信しています。独自の企画力も評価されています。PV出展の歴史がまだ浅いこともあって、独自開発品を新鮮に受け止めてもらえていると感じます。無地から先染め、プリントまでを展開し、染工場さんと組んだ独自の後加工による機能や風合いが受けています。全てが独自企画品であり、結果として目新しさを出せているのでしょう。

 海外市場向けに別途開発するようなことはないのですが、「メードイン・ジャパンの商品を海外へ」をテーマにしながらPV出展を契機に仕入れ先も開拓しました。それが別注獲得にもつながっています。PVで新作を披露してその反応を持って、備蓄する、しないを判断し、またその情報を企画にフィードバックするというルーティーンもできてきています。見せるものと売れるもののバランスは大事です。見せるものも開発しつつ、売れるものの中でも目新しさや独自性を出していきたい。今後も「柴屋らしさ」の開発を追求していきます。

〈微妙な風合い出しや生真面目さが評価〉

  ――日本製の生地、および日本という国の優位性とは何だとお考えですか。

 小松 お客さまからよく言われるのは、仕上げ加工による生地の見た目や風合いが日本は優れているということです。似たようなものは中国なり韓国なり他の国からも出てきますが、最終の加工による違いは見る人が見れば分かるようで、日本の生地は高級感があるようです。具体的に言えば、ビンテージ加工やタンブラー仕上げなどです。

 牧田 微妙な風合い出しは日本の有位性でしょうね。こだわりのない人が見れば「同じじゃないか」という微妙な違いを出せるのが日本の技術。日本人の特性であるきめ細かな性質がそれを実現しているのだと思います。プリントの柄にしても、欧州のような派手さや大胆さはないのですが、地味ながら日本人特有の柄のセンスはあるようで、それが徐々に世界に広がっていることも実感します。欧州と日本との差別化が自然に生まれているという感じでしょうか。

 品質面でも信用が高いし、最後まで顧客と向き合ってきっちり仕事をするという点も評価されているのではないでしょうか。機能素材も日本の得意分野で、当初は日本でしか評価されないようなものもありましたが、それも世界で認知され、広がっていっていますよね。当社の顧客からも「日本のテクノロジーを駆使してほしい」といった要望が寄せられますし、日本の独自性へのニーズを感じます。

 川名 輸出の歴史がまだ短いながら感じるのは、日本のポリエステルは優れた素材だということ。見た目も触感もポリエステルだとは分からないものもありますし、複合の能力もすごいと思います。あとは、麻もそうですね。日本製の奇麗めなラミーは欧州にはないもののようですし、ラミーとリネンの混紡も日本が開発したもの。こうしたアレンジの力は明らかに日本の優位性だと思いますね。

 先ほどから話に出ているように、備蓄機能も日本の優位性でしょう。大手メゾンも現物を求めるようになっています。必ず商品をお届けするという日本の真面目さも信頼感を得ていますし、商品とサービスの両面で優位性はあると思います。われわれの先人が作り上げてくれたものですが、ありがたいことですよね。

〈リードタイムが長すぎる〉

  ――逆に、日本が劣っているところはありますか。

 川名 備蓄サービスを強みとする当社ですが、国内市況が良くない中、経営上の問題からもその奥行きがめちゃくちゃあるわけではない。となると、まとまったオーダーが入った際にはそこから生産を始めるわけです。ただ、納期がかかりすぎるという現状があります。スペインのエージェントに「リードタイムは2カ月」と伝えたら、「意味が分からない」と驚かれました。海外では300万メートルの生地を40日で上げるところもあり、「なぜ日本はこんなに少ない量なのにそんなに時間がかかるのか」と言われました。日本でものを作っているわれわれからすればそっちのほうが驚きなのですが、輸出を伸ばすにはそれに対応していかざるを得ない。でも、加工場の混雑などでそれが実現できないのです。

 牧田 ここ数年、リードタイムの遅れが顕著になっていますよね。むやみにオーダーを受けて結果的に迷惑をかけるわけにもいかないですし、当社の責任問題になる場合もあるので、納期が合わないから断るケースが増えています。以前であれば、加工場さんに無理を言ってねじ込ませてもらうこともありましたが、今のパンパンに混んでいる状況ではそんな無茶もできないですからね。

 小松 当社でもたまにあります。あるバイヤーから「前回は2週間で上げてくれたのに、なぜ今回はできないのか」と言われたのですが、素材や工場の状況によって納期は変化するわけです。綿のオーダーが入った時に、「これは2カ月かかります」と答えると、「ポリエステルは2週間でできたのに」となるわけです。ポリエステルの場合は織布も加工場も自家工場がありますので、ある程度は突貫の対応ができる。ただ、ポリエステルでも他の工場に出さざるを得ない場合もありますし、ポリエステル以外の場合は途端に納期が大幅に増えてしまいます。外注工場にそこまで無理は言えませんからね。

〈サステイナビリティーも重要〉

  ――欧州はサステイナビリティー(持続可能性)やエコロジーへの関心も高い。

 川名 エコのニーズが強まっていることは感じますので、オーガニックコットンなどをそれなりには用意しています。

 牧田 今年のPV2月展でかなり引き合いがありました。なので、9月展でオーガニックコットンや再生ポリエステル使いなどを用意したのですが、あまり引き合いがありませんでした。2月展の際にあまり用意していなかったので、そのイメージが付いてしまったのかもしれません(笑)。

 小松 MUもPVも展示会自体がエコを強く打ち出していますが、当社ブースに来てくれるバイヤーからの声はそこまで強くありません。「高くなるから嫌だ」という声もあります。どこまでエコ商材をそろえるのか、悩んでいるところです。北欧系のブランドなどはかなりエコの意識が高く、企業姿勢を打ち出すところも多いのですが、当社がそのゾーンをまだ攻められていないとも言えます。

 牧田 チャンスではありますよね。一部の先進的な事例を除いて、皆が皆その対応ができているわけではありませんので、先行してニーズを取り込んでいくことは戦略としてありかもしれません。

〈磨くのは企画開発力と生産体制の整備〉

  ――さらに輸出事業を伸ばしていくために必要なこととは何でしょうか。

 川名 まだ新参者なので、頭を打つ段階ではありません。4年前は英語が話せるスタッフも一人しかいませんでしたし、契約書の書き方や為替の計算方法、エージェントとの契約など社内インフラから固めました。3年は我慢しないといけないと各方面からは言われていましたが、実際はもっと早い段階で実績が付き、伸びていっています。市場自体は大きいわけですから、輸出人材の育成がさらに進めば、まだまだ伸びると確信しています。2割増のペースでの拡大を目指し、ゆくゆくは全社売上高の2割を輸出で占めたい。宇仁繊維さんほどではないにせよPV以外の海外展示会にもトライしていく計画ですし、商品開発力と提案力も磨いていきます。

 会社全体として輸出を伸ばそうという雰囲気がありますので、それは現場としては心強いですね。まだ苦労を知らないだけかもしれませんが、夢のある事業ですし、やりがいもあります。2~3年以内には輸出専門の部署も設ける予定です。

 課題は国内向け企画とのタイミングのずれ。欧州向けはもっと早くしていく必要がある。どの商材を輸出用に向けていくかは精査する必要がありますが、企画タイミングにも気を配っていきます。

 小松 備蓄機能やメーカーであることをベースとした生産スピードなどの機能、システムは構築できていますので、課題は企画開発力です。

 先日、パリの店頭で服を見ていたら、「うちの生地だ」という製品が幾つかあって、帰国後に調べたのですが、うちから出したものではありませんでした。商社さん経由の可能性もあるのですが、おそらくは企画をまねされた。まねされるような開発力が身に付いたとも言えますが、まねの出来ないものを開発していくことも重要だと思いました。コストを抑えたモノ作りも必要ですし、売れ筋を読むような感度を磨いていくことも大事なポイントだと思います。

 牧田 生産背景の整備が輸出拡大に向けた課題です。先ほども申し上げましたが、リードタイムがかかりすぎるのが日本の現状。オーダーを断らざるを得ないこともあり、機会損失となっています。何か改善策を見いだしたい。輸出のコンペチターは国内ではなく海外。海外と同等のリードタイムを実現しない限り、輸出拡大は成し得ません。

  ――本日はありがとうございました。

〈参加企業の概要〉

《宇仁繊維》

 来年4月で創業20年を迎える生地商社で、織機や染色機を自社で購入して提携メーカーに貸与するなどメーカー色が強い。展開生地のほぼ全量が国産で、多品種・小口・短納期機能が強み。20期連続増収を果たし、世界中の服地展に出展するなど輸出拡大にも積極的。

《柴屋》

 創業110年を超える老舗(しにせ)生地商社。独自開発した生地を軸に製品事業も手掛け、近年は拡大戦略を鮮明にする。生地輸出もその一環で、本格化は3年前と新参ながら、PVの同社ブースはいつもバイヤーでにぎわいを見せる。

《北高》

 創業38年の生地商社。綿プリントを主力にした柄開発機能と備蓄機能が強み。日本の生地商社の中ではPV出展が2006年からと突出して早く、先駆者的存在。近年は綿プリントだけでなく先染めやレース、ジャカード、合繊、ニットなども充実する。