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2018秋季総合特集Ⅲ(5)/top interview シキボウ/非衣料分野の繊維市場拡大/社長 清原 幹夫 氏/中計で大規模な設備投資へ

2018年10月31日(Wed曜日) 午後4時36分

 シキボウの清原幹夫社長は、繊維産業における直近のインパクトのある事象として「産業資材や衛生材料といった非衣料分野の繊維市場が年々拡大していること」を挙げ、「こうした分野で、当社が今まで培ってきた技術をいかに応用するかが今後のテーマ」と話す。今年度から始まった中期経営計画に関して「かつてないほどの大きな設備投資を行う」と述べ、繊維事業ではインドネシア工場の生産設備を強化する考えを示す。上半期(2018年4~9月)の業績については「決して悪くないスタート」と評価する。

  ――繊維産業にとって直近のインパクトのあることは何でしょうか。また、それにどう対応されますか。

 私が今、注目しているのは国内外で産業資材や衛生材料といった非衣料用途の繊維市場が年々拡大していることです。これは当社の今後の進むべき方向を示唆するものと捉えています。衣料用途は現在の主力事業で、今後も重要な分野ですが、これからテーマとなるのは成長が続く産業資材などの分野で、いかに当社の繊維の知識やノウハウを応用していくかです。衣料以外ではまだ手つかずの分野も多く、これからまだまだ可能性があると感じています。

  ――2018年度上半期の業績を振り返ると。

 全社ベースの売上高は前年同期並み、営業利益も横ばいとなる見通しです。ただ、繊維事業が利益面で苦戦しており、この分野の落ち込みを産業材事業の伸びで、カバーできるかどうかがポイントになります。

 繊維事業は原糸販売、中東向けの生地輸出で厳しい状況が続いています。既に底を打ったと思いますが、回復しているという状況ではありません。利益面は繊維原料、染料、薬剤、原燃料など製造コストが軒並み上がっており、これらの負の要因が業績に大きく影響しています。

 ユニフォーム分野は計画通りに堅調です。ワークウエアを中心に、ビルの建て替え需要増などを背景に底堅い動きが続いています。寝装分野は悪くはありませんが、強みのある羽毛布団の高級側地で収益が悪化しています。布団メーカーが羽毛高騰のコスト対策として、単価の低い商材に切り替えているためです。

 ユニフォーム分野の堅調により繊維事業全体のマイナス幅は幾分緩和されてはいますが、バランスの偏った状態でフル生産が続いているため、生産効率は落ちています。当社の国内外の生産設備は中東輸出用生地、ユニフォーム、寝装、シャツなど得意分野にバランス良く供給することを前提としています。今期のように中東や糸売りの不振に対して、ユニフォームが順調といういびつな構図では、効率があまり良くありません。

  ――産業材事業の現状は。

 総じて底堅い動きが続いています。製紙用ドライヤーカンバスについては国内市場が縮小する中でも前年並みを確保しています。フィルターは一般産業の設備投資需要増に比例して順調です。航空機の部材関連は、当初想定したよりも遅れていますが、今年度下半期、あるいは来年度からは好実績となって表れてくると思います。

  ――今後の方針について。

 今年度から20年度を最終とする中期経営計画が始まりました。絶好の滑り出しとは言えませんが、決して悪くないと感じます。出遅れた部分はありますが下半期で巻き返せる範囲と見ています。

 今回の中計では当社としてはかつてないほどの規模の大きな設備投資を行います。産業材事業で工場を2カ所新設します。一つは三重県鈴鹿市に建設予定の製紙用ドライヤーカンバスの工場で、増産を目的とします。年内か、来年初旬に着工する予定です。

 もう一つは東近江市に新設する航空機の部材の研究開発棟です。来年には竣工(しゅんこう)予定で、完成後しばらくは研究開発を主眼としますが、軌道に乗ればその棟をそのまま主力工場にします。

  ――繊維事業での投資は。

 インドネシアの紡織加工子会社のメルテックスに投資をします。紡績では今期からダブルツイスターを導入し、ポリエステル綿混の双糸の生産を強化しています。今、海外紡績のレギュラー糸の生産規模は日本勢より大きく、機械も最新鋭で品質は日本と変わらないレベルになっています。私達がこの土俵で戦っても、コストなどが重荷となり勝つのは難しい。そこで双糸、強撚糸、さらに複合糸といった高付加価値の糸を海外で作れるようにし、一格上の素材で勝負する戦略です。

 最終的にはメルテックスから販売する全ての糸を双糸などの高付加価値糸にしたいと考えています。従来は織布まで一貫生産する工場として原料となる糸は自ら作ることを基本としレギュラー糸も生産していましたが、現在はその方針を転換し、レギュラー糸はローカル企業から買うことも選択肢に入れています。ローカル紡績の品質が高くなった今、レギュラー糸は買った方が安くつくこともあるからです。負ける糸で戦うのではなく、“勝てる糸”で勝負する。そのための設備投資です。

  ――富山工場とベトナムの協力工場の現状は。

 富山工場は限界まで縮小しています。小量生産、短納期対応や新素材の研究開発も行い、技術面でのマザー工場になります。富山工場から技術者を海外に派遣し、海外工場の技術指導、生産管理のノウハウの提供など、量産工場のレベルアップも担います。ベトナムでは撤退したタイシキボウの綿100%糸の商権の移管が済み、順調に供給しています。綿糸以外にも国内から技術移転を進め、精紡交撚糸、2層構造糸、原綿からこだわった特殊紡績も可能です。差別化糸の量産拠点としての役割を担います。

〈私のお気に入り/美術館の音声ガイド〉

 「最近、美術館巡りをよくする」と話す清原さん。お気に入りは館内で借りる音声ガイドだ。「絵に詳しくなくても、チケット代に500円ほど追加するだけで画家や絵の特徴、描かれた時代背景なども解説してくれて便利。ぜひ、皆さんにもお勧めしたい」。最近では美術館が人気のある俳優と組んで、その俳優の声で展示会を解説する音声ガイドもあるそうだ。ちなみに清原さんの好きな画家はディエゴ・ベラスケス。今年、マドリードを訪れた際にはプラド美術館まで足を運んで鑑賞したほどだ。

〔略歴〕

(きよはら・みきお)1983年シキボウ入社。2002年繊維部門衣料第1事業部長、08年メルテックス社長、11年執行役員、12年取締役、15年取締役上席執行役員。16年6月から取締役社長執行役員。