メーカー別 繊維ニュース

スクールユニフォーム(8)/学生服の価値を生み出す/素材メーカー編

2018年09月28日(Fri曜日) 午後4時32分

 学生服は一般衣料とは異なり、入学から卒業まで、毎日の着用に耐えうる強度と学校生活をより快適にする機能性が求められる。さらに冠婚葬祭での礼服としても着られるため品位も欠かせない。素材メーカーはこうした学生服の根本的な価値を決定づける生地の開発と安定供給を担う。

〈教育支援事業にも注力/ニッケ〉

 ニッケは、ウール主体の学生服生地ブランド「ミライズ」のラインアップを大幅に拡充する。

 これまで既製のセーラー服のみで提案してきたが、今年から強度を高めてブレザーや詰め襟服にも使えるようにした。セーター、ベストといったニット製品、さらにニュージーランド(NZ)の高級原毛だけを使用した商材もそろえた。

 ミライズは長短複合偏芯構造交撚糸「ニッケ ナガラガワ」を51%以上使った高級テキスタイルブランドで昨年から本格的な販売に乗り出した。上質なウールの性質に加え、軽量、高いストレッチ性と耐久性、家庭での手入れが簡単といった高い機能性を備える。

 近年、学生服の価格へ社会の関心が強まっていることを受けて、学生服の教育での価値やウール素材の優位性の発信にも力を入れる。6月に東京、大阪で5年ぶりに開催した学生服素材展では、「ニッケ教育研究所準備室」を新たに発足させ、素材販売に加え服地を通じた教育面での学校支援も行う方針を打ち出した。

 その一環で、今夏から同社の服地を制服に採用している高校にNZの羊牧場での体験学習プログラムの提供を始めた。ニッケが販売する高品質のメリノ種を使った生地ブランド「ZQ」を制服素材に採用している学校に、NZの羊牧場を見学する機会を提供する。

 私立順天高等学校(東京都北区)が初めて、このプログラムを活用し、34人の生徒が8月上旬にNZの羊牧場を訪れた。ウール原毛の刈り取り工程や牧場経営者との交流を通じて、羊が育まれる環境、羊への倫理的な配慮の必要性、環境保護の大切さなどを学んだ。

 幾永詩木ユニフォーム事業部スクール販売部長は、「まずはZQ素材の採用実績がある80校を中心に提案を続けていく」と話す。

〈新素材「オプティラ」開発/東亜紡織〉

 東亜紡織の強みは、学校やアパレルの要望を短期間で生地に反映する提案力だ。多彩な柄の生地もデジタルデータで検索可能なシステムを独自に開発している。

 このシステムはタブレット端末に基本色、ラインカラーなどの条件を入れて検索すれば、自社開発の柄物のデータベースから条件に合った素材が高画質のグラフィックで表示され、画像の拡大も自由にでき、提案スピードの礎となっている。

 今期に学生服地の新素材「オプティラ」を開発した。ウール50%・ポリエステル50%のサージ素材で、ウールとポリエステル、両方の良さを最大限に引き出した。糸の設計と織り組織の工夫で横方向に12%のストレッチ性を持つ。これまでの同社ストレッチ素材の約3倍の伸縮率を実現。2020年の入学生向けをターゲットに提案する。

 オプティラはウール50%混ながら、ウール高混率生地に劣らない質感が特徴。ウールならではの天然の消臭機能で汗の臭気に対応するほか、吸放湿性、保温効果もある。高強度のポリエステルを絡ませることで耐久性にも優れる。シワになりにくく、回復力も高いため家庭でのケアもしやすい。

 オプティラという商品名は、商品開発に当たりウールとポリエステルの最適なバランスを追求したことから“最適な”という意味のラテン語からとった。今後、ウール30%・ポリエステル70%混タイプも開発する。

 18年1~6月期の学生服地販売は前年同期比減収減益だった。4~6月は堅調に推移したものの、1~3月に学校側から学生服メーカーへの追加発注が少なくなったことが影響し減収となった。減益は羊毛価格の高騰や製造コスト、輸送費などの上昇による。

〈機能強みにシェア拡大/シキボウ〉

 シキボウは、スクールシャツ地で独自の機能性生地のシェア拡大を図る。主要販路は中学・高校向けで一部、園児服の扱いもある。

 定番織物シャツ地が売り上げの大半を占めるが、機能素材も徐々に採用が増えている。近年、ニットシャツがスクール分野での拡大していることを受け、トリコットのシャツ地の提案にも力を入れる。機能では、部屋干し対応、制菌・消臭・抗ウイルス加工といった清潔・衛生面で優れた効果を持つ機能が充実する。

 順調に売れている機能商材の一つが部屋干し対応素材「ルームドライ」だ。速乾機能に抗菌防臭機能を加えることで、室内で干しても不快な臭いが抑えられる。

 学校での食中毒やウイルスの集団感染対策として、制菌加工「ノモス」や抗ウイルス加工「フルテクト」「ノロガード」にも高い関心が寄せられている。繊維上の細菌やウイルスの増殖を抑制する加工で、SEKマークのオレンジと赤を取得しており、日本学校保健会の推薦も受ける。

 防汚に関しては防汚加工「汚れま戦隊シリーズ」を提案する。ユニークな名前の通り汚れが付きにくく落ちやすい。皮脂をはじめボールペンや油、血液の付着にも対応する。

 年々厳しさを増す酷暑に対応した快適素材もそろえる。ワークウエアで好調の高通気素材「アゼック」や涼感素材「すだれ織り」、加工では綿の放熱性を高める涼感加工「トレハクール」がある。紫外線遮蔽加工率90%以上というUVカット加工「リカガード」も今後の伸びが期待される。

 ストレッチ性もワークウエアをメインに提案する「パワール」をスクール向けにも展開する。糸設計、組織、後加工などさまざまな手法で高いストレッチ性を実現。洗濯後の取り扱いが簡単で肌触りも良いことで高い評価を得ている。

〈「トレラーナ」好調続く/東レ〉

 東レは、合繊メーカーとしての強みが生きるポリエステル高混率の学生服地の拡販に力を入れる。近年、好調に売り上げを拡大しているのが「トレラーナ」だ。定番のポリエステル50%・ウール50%混素材に、ポリエステル高混率品も加え、機能での強みを打ち出す。

 ウール素材の高騰や機能性に富む生地のニーズ拡大でポリエステル高混率品の市場占有率は年々高まっている。長らくウール混が基本とされてきた学生服地だが、近年はポリエステル100%素材の採用も徐々に出てきた。「薄利多売ではなく、着用者や保護者のことを考えた合繊だからできる提案が徐々に受け入れられている」(武田一光機能製品事業部長)

 ポリエステル素材に機能や物性で市場から強く求められる要素としてはシワになりにくさ、高い強度、家庭での手入れのしやすさ、高い伸縮性などがある。最近では風合いや質感といった感性面でも改良が進んだことも拡大の背景にありそう。

 これまで詰め襟でポリエステル100%素材の採用はあったが、ブレザーにも広がりつつある。ポリエステル100%梳毛調織物「マニフィーレ」は数年前に女子セーラー服地として販売を始めたがブレザーやスーツでも実績ができてきた。

 スクールニットシャツの拡販にも取り組む。着心地の快適さやアイロンがけが不要といったメリットからビジネスに加えスクールでもニットシャツの市場規模は拡大しており、トリコットのシャツ地の提案を強める。

 今後、ワークウエアで展開してきた、防汚加工「テクノクリーン」や防虫機能素材「ウィズリリーフ」、高視認素材「ブリアンスター」などをスクール分野にも提案していく。ウィズリリーフは小学生服や園児服での需要を模索し、ブリアンスターは雨具などスクール関連アイテムでの採用を狙う。

〈学生服素材メーカー/教育現場で存在感/高視認で交通安全に貢献〉

 学生服や体操服といった学校衣料用の生地を製造する素材メーカーで、商材を通じた学校での教育支援や通学路の安全に貢献するといった新たな取り組みが広まっている。少子化による学生服着用者数の漸減により、これまで通り服地のみを開発・販売するだけでは業績拡大が難しくなっているためだ。

 こうした学校の教育現場をサポートする動きは学生服メーカーや商社で先行していたが、素材メーカーでも生地販売とは別の角度から学校や教育行政に存在感を示す事例が増えてきた。ここ数年、一般メディアから学生服業界の商習慣や価格に批判が相次いでいることとも無関係ではなさそうだ。

 学生服地最大手のニッケは6月、「ニッケ教育研究所準備室」を立ち上げ、服地を通じて教育現場をサポートする方針を打ち出した。制服の価値やメリットについて科学的に検証し、ゆくゆくは学校や生徒を対象としたセミナーやイベントを開催し幅広く発信する。

 東レは昨年、菅公学生服、ダイイチと共同で高視認服を作成。横浜市に提供し、市内の小学生や交通ボランティア、市職員など路上で活動する人に着用してもらう公民連携活動を始めた。こうした取り組みの中で高視認服着用による安全性の向上をアピールし高視認生地の販売増につなげる。

 体操服素材を供給するクラボウは今年、子供たちの安心・安全、快適、学びをサポートするプロジェクトを立ち上げた。その中でインフルエンザを予防するためのアイテムをひとまとめにした「クレンゼキット」を販売している。キットの中の抗菌・抗ウイルス成分を含むクレンゼスプレーは培地を使って、生徒たちの目で効果を見てもらえるようにし、教育面でも役立つよう工夫している。