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2018秋季総合特集(9)/top interview 東洋紡/環境配慮型商材・ビジネス拡大/取締役執行役員繊維・機能材部門の統括、繊維・商事本部長 東洋紡STC 社長 西山 重雄 氏/機能材と繊維・

2018年10月29日(Mon曜日) 午前11時38分

 「SDGs(持続的な開発目標)を意識した経営が一段と重要になっている」と指摘する東洋紡の西山重雄取締役執行役員。「当社は早くから環境配慮型の商材を開発してきた。こうした商材を改めて打ち出す」と話す。繊維・機能材部門の統括として機能材事業と繊維・商事事業が融合することで、よりスピーディーな成長戦略の実行と、新たなビジネスチャンスの開拓に取り組む。

  ――繊維業界を取り巻く環境が大きく変化しています。今後、繊維業界にとって特に大きなインパクトとなる要素は何でしょうか。

 やはり“環境”ということがあると思います。近年、SDGsを意識した経営が一段と求められるようになりました。実際のビジネスでもバグフィルターなど環境関連のビジネスが拡大しています。こうした流れを的確に捉えることがますます重要になります。その点で当社は早くから環境配慮型商品を数多く開発し、「エコパートナーズシステム」として提案してきました。機能材や繊維だけでなく化成品やフィルムなど当社が扱う全てのアイテムの中から環境配慮型の商材をまとめたものです。「衣服内気候」なども環境負荷低減に貢献する技術となります。こうした商材を改めて打ち出し、拡大していくことが重要になるでしょう。

 再生ポリエステルや生分解性樹脂・繊維へのニーズも急速に高まっています。特に欧米のメガブランドなどが再生ポリエステルなどに原材料を大々的に切り替える動きを見せています。ですから、こうした素材をどれだけ用意できるか。これは機能材、繊維・商事いずれでも喫緊の課題です。

 一方、環境配慮型商材というのは、どうしてもコストがかさみますから価格も割高になってしまう。このあたりを供給先企業、そして消費者にどのように理解いただくかも今後の普及にとって重要になってくるでしょう。

  ――2018年度も上半期(4~9月)が終わりましたが繊維・機能材部門の商況はいかがでしたか。

 機能材は売上高こそ順調でしたが、燃料価格の高騰の影響が大きく、利益面が厳しかった。衣料繊維も原料高騰の影響を受けました。ただ、東洋紡STCとしては化成品やフィルムの販売が好調に推移し、機能材と繊維の減益をカバーしています。

 機能材ではスパンボンド不織布はまずますの商況でした。自動車のトノカバーといった新しい用途が順調に拡大していますし、重金属捕集シートや導電性不織布など機能性不織布製品の販売が拡大してきました。エアバッグも利益面こそ厳しいですが、販売数量は計画通りに推移しています。スーパー繊維は高強力ポリエチレン繊維「ツヌーガ」が手袋用途で好調。19年度に増設を予定していますから、そこに向けて拡販しています。もう一つの高強力ポリエチレン繊維「イザナス」は釣り糸用途がやや苦戦。PBO繊維「ザイロン」は新しい用途が出てきました。

 衣料繊維は中東民族衣装用織物が依然として市況低迷で苦戦ですが、ここに来てようやく底が見えてきました。19年度からは回復の兆しがあります。スポーツはオリンピック需要も出始め堅調です。インナーも中国の関係会社によるオペレーションなどがうまくいっており、順調でした。ただ、原糸は苦戦です。綿糸はタオル産地でも消化量が減少しています。

  ――9月に敦賀事業所の機能材工場で火災が発生しました。

 残念ながらエアバッグ用のナイロン66や衣料用ナイロン6の紡糸設備などが焼失しました。現在、警察・消防など関係当局とも協力して原因究明などに当たっています。周辺住民の皆様にご心配をかけないように安全管理体制の強化にも取り組んでいます。エアバッグ原糸に関してはグループ会社であるPHPの生産品で代替する方向で検討を進めています。

  ――今後の重点課題は何でしょうか。

 直近は現在の原料高騰に対して価格改定による転嫁を進めることです。社内でも関係会社再編などで重複した仕事を減らすなど効率化による自助努力を続けています。また、IoT(モノのインターネット)活用も進めます。現在、技術系役員による勉強会・会議も実施しています。近年はセンサーやカメラなどの価格も低下して設備投資のハードルも下がりましたから、富山事業所でも色合わせの自動化など小さな改善からでも実行していく計画です。

 中長期的な課題として機能材・繊維部門として機能材事業と衣料繊維事業の融合を進めることがあります。まず先行して10月から両事業の技術部署を統合しました。現在、富山事業所では生産品の約30%が機能材関連になっていますが、これをさらに引き上げる。全社で「カエルプロジェクト」を推進していますが、そこでも今後の各部門の在り方を議論しています。よりスピーティーに成長戦略を実行できるような形に再編することもあるでしょう。

 繊維・商事本部でも合同商事、東洋紡テクノユニ、東洋紡アパレルシステムズを統合して東洋紡ユニプロダクツを発足させました。これは後ろ向きのリストラではありません。企業内アライアンスとしてシナジーを発揮させることが目的です。合同商事は学販シャツが主力ですが、そこに東京の拠点や物流設備を持つ東洋紡テクノユニや、東洋紡アパレルシステムのニット縫製のノウハウが加われば対応アイテムも拡大できます。

 こうした取り組みを機能材でも進めていきます。そこに東洋紡STCの商社機能が融合することでさらなる成長戦略が可能になるはずです。

〈私のお気に入り/母親からのお土産がお守り〉

 「これまで車は何台も乗り換えたけれども、キーに付けるキーホルダーはずっとこれ」と言って西山さんが見せてくれたのが不思議な木彫りの人形。アイヌの幸福の神「イナンクルカムイ」というそうだ。「40年以上も前に、北海道を旅行した母親からお土産にもらった」とか。以来、不思議と大きな事故に遭わない。「大きなもらい事故に遭っても、ケガ一つしなかったこともある」。先日、その母親が亡くなられた。「改めて母親からのお土産がお守りだったんだということに気付いた」と話す。

〔略歴〕

(にしやま しげお) 1983年東洋紡績(現・東洋紡)入社。繊維生産・技術総括部長などを経て12年東洋紡STC取締役執行役員、14年機能材事業総括部長兼技術開発調達総括部長、17年東洋紡執行役員繊維・商事本部長兼東洋紡STC代表取締役社長執行役員、18年4月東洋紡繊維・機能材部門の統括兼岩国事業所の統括。