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2018秋季総合特集(10)/top interview クラレ/貿易戦争の影響を懸念/代表取締役専務執行役員繊維カンパニー長 松山 貞秋 氏/SCMの組み替えを検討

2018年10月29日(Mon曜日) 午前11時39分

 2018年度から中期経営計画「プラウド 2020」をスタートさせたクラレ。競争優位の追求、新たな事業領域の拡大、環境への貢献など五つの経営戦略を掲げている。繊維カンパニーは素材が持つポテンシャルをいかに引き出せるかを重視しており、引き続き独自性に磨きをかけるための開発に重点を置く。中計初年度の18年度はおおむね計画通りに推移しているようで、19年度からは増設を含む次代への布石を投じていく。松山貞秋代表取締役専務執行役員繊維カンパニー長に聞いた。

  ――業界に今後、インパクトを与える要因を何だとお考えですか。

 人手不足や原燃料の高騰といった問題がありますが、私が最も大きいと考えるのは中国と米国との貿易戦争です。中国が輸出するざっと5千億ドルのうち、2千億~3千億ドル分に関税がかかる。

 中国の場合は、中国に進出した海外の企業が全世界を相手に輸出しているケースが多い。以前からチャイナ・プラス・ワンが言われてきましたが、今回の貿易戦争によって今後、SCMを組み替えないと関税を取られるケースが発生します。

 当社の場合、自動車関連のパーツの中国生産がけっこうあって、ここの動向をきちんとウオッチしておかないと大変なことになってしまいます。中国以外の国で生産し、米国へ輸出する方策を考えなければならないかも知れません。

 今も6%前後で経済成長を続ける中国を無視できるわけがありません。内需の高度化も進んでいます。

 中国国内で年間2千数百万台のクルマが売れているわけですから、今後も中国が当社にとっての重点市場であり続けることに変わりはありません。

  ――まもなく迎える12月期決算の見通しは。

 1~6月期は売上高が331億円、営業利益が33億円でした。売り上げはそこそこでしたし、営業利益率で10%越えを目標に掲げていたことを踏まえると、まずまず健闘したといえます。

 その後は、原燃料の高騰を値上げで転嫁する努力を続けてきましたが、どうしてもずれが生じるため、その分の全てをカバーし切れていない、というのが現状でしょうか。

  ――素材別の状況はいかがですか。

 「ビニロン」では、ボリュームを占めるFRC(繊維強化コンクリート)向けがほぼ計画通りに推移しています。中国勢が価格攻勢をかけてきているため、利益面が多少マイナス方向にぶれるかも知れません。ブレーキホースやゴム資材といった自動車関連向けの販売が順調なため、「ビニロン」トータルでは大きな齟齬(そご)は発生しない見通しです。

 スーパー繊維「ベクトラン」では、トータルで多少の伸びを確保できそうです。具体的な用途はお話しできませんが、高採算の加工品が好調です。

 クラレクラフレックスの不織布は極めて順調です。メルトブロー不織布やスパンレース不織布との複合品へのニーズがコスメティックやメディカル、フィルターなどの用途で旺盛です。

 製品展開する「カウンタークロス」では、特に海外需要が伸びています。日系企業が海外進出するとその分が増えますし、地場の企業へも波及しています。収益性の高いビジネスではありませんが、販売数量は今も順調に拡大しています。

 ファスニングでは前年実績、予算ともクリアしました。戦略用途に位置付ける自動車、航空機などに今後、難燃タイプ、耐熱タイプで切り込んでいきます。

 人工皮革「クラリーノ」では、スポーツシューズ向けが減っていますが、ランドセルやハンドバッグ向けなどが伸びています。欧州のしっかりした代理店や当社のドイツ法人との連携を強化し、今後も集中的にワークしていきます。

  ――「クラリーノ」で環境対応型の新製造プロセス「CATS」を打ち出しています。

 製造工程から溶剤を一掃し、排水やCO2を削減できる環境対応素材であることをかつて打ち出しましたが、当時はコストが優先され大きなインパクトにはつながりませんでいた。

 ところが、最近はこういう商品が脚光を浴びています。今後はこういう商品の開発を強化する戦略が欠かせなくなってきます。環境対応というのは企業が負わなければならない責務です。これがビジネスにつながってくれれば、こんなにありがたいことはない。「CATS」は今後、大きく伸びてくるとみています。

  ――新年度(19年1月~12月)に向けた方針は。

 素材の潜在能力をいかに引き出していくかに尽きると思います。当社の事業はボリュームを追求するものではありません。今後も素材にいろいろな機能性を付与し、収益性につなげる取り組みに重点を置きます。

 不織布では、メルトブローやスパンレース、乾式の複合品に機能性を持たせる商品開発を強化し、より快適な生活を後押しできる商材を提供していきます。

 エチレンビニルアルコール共重合体「エバール」や高耐熱性ポリアミド樹脂「ジェネスタ」をいかに繊維化するかも重要なテーマです。エバールではタイヤ部材向けの開発を進めていますし、ジェネスタでも繊維化を急いでいます。

  ――設備投資は考えていますか。

 メルトブローで19年度以降増設を検討したい。「ベクトラン」では逐次、増産対応をとっていきます。「ビニロン」では新製造プロセス「VIP」の量産機を7月に立ち上げました。20年ごろ、増産を検討することになりそうです。中国のヘーシンクラレでは、当局の認可を待って増設に踏み切ります。

〈私のお気に入り/淡路島がパワースポット〉

 淡路島で生まれ2歳までを島で過ごしたこともあり、生まれ故郷の淡路島が見えるロケーションが大のお気に入り。子供の頃は夏休みのたびに訪れ、親戚の子供たちと一緒に魚釣りをしたり、海で泳いだりすることが楽しかったという。「天橋立並みの景観を持っているのに、誰も評価してくれない」のがどうにも不満らしい。両親は既に他界してしまったが、淡路島を眺めながら「うちのルーツに思いをはせていると、力がみなぎってくる」とパワースポットのような欠かせない存在になっている。

〔略歴〕

(まつやま・さだあき)1975年クラレ入社。10年6月執行役員、12年6月常務執行役員、13年6月取締役・常務執行役員、16年6月代表取締役・専務執行役員、18年1月繊維カンパニー長・大阪本社担当。