アパレルトップインタビュー2019④

2019年01月10日(木曜日)

三陽商会 社長 岩田 功 氏

攻めの投資を再開/提携企業とのシナジー期待

  ――昨年の商況を振り返ると。

 春のスプリングコートの商戦に始まり、冬のアウター販売も気候変動に泣かされた。台風や豪雨、猛暑、暖冬で消費行動にも影響があった。一概に天候不順のせいにできないが、消費が鈍かったことは確かだ。

  ――現在の衣料品市場を分析すると。

 世代によってファッションの向き合い方が違う。特に若年層は、服へのこだわりがなくなっている印象だ。興味や思い入れの熱量が分散し、お金を使うコト消費の内容も変わっている。その中で、百貨店アパレルが主力とする実店舗での販売は厳しさを増している。

  ――情報関連で新たな施策を打っている。

 情報の価値が変わり、ファッションビジネスの在り方も変化した。以前はウェブサイトでパリコレクションの画像を掲載するブランドは少数派だったが、今は違う。情報の民主化で、われわれ供給者(アパレル企業)の優位性は崩れた。顧客情報を握っている者が強い、そのことを認識した年でもある。

 その一方、昨年10月に業務提携したABEJA(東京都港区)は、AI(人工知能)を活用した顧客体験や流通分野でテクノロジーを実装する企業だ。購買データの一元化やAIによるデータ活用、さらに当社バリューチェーンの改革にも貢献するだろう。

  ――情報の民主化で、求められるブランド価値とは。

 質の高い「本物」しか生き残れない。または、圧倒的な1番になることが求められる。デファクトスタンダード(事実上の標準)を握るような気概でコートを販売するなど、三陽商会の絶対的な価値を高めないと今後は戦えない。

  ――2018年度下半期(7~12月)から攻めの投資をしている。

 18年度上半期(1~6月)までは収益の改善に重きを置いたが、下半期からマーケティング、宣伝販促などの投資を再開している。トップラインを挙げての投資も行い、ファッション分野で電子商取引(EC)支援サービスを手掛けるルビー・グループ(東京都品川区)を買収したほか、ライフスタイル雑貨を販売するECサイト「MONOCO」(同港区)に出資しながら、当社にはないノウハウを補完する。

  ――サステイナビリティー(持続可能性)も追求する。

 既に会社としてファーフリー(脱毛皮)を宣言しているが、さらに環境負荷を軽減するブランド、企業との資本提携もあり得る。当社にCSR委員会を立ち上げたことで、社会貢献を事業化できないかと考えている。得意分野であるモノ作りを通じ、企業と市場の相乗的発展を図りたい。