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特集 今治タオル産地(2)/次の局面、どう生きるか

2019年01月11日(金曜日) 午前11時57分

 2018年は今治タオル産地内の雰囲気が大きく変わった印象を受ける。変化に合わせ、タオルメーカー、染色加工業ともに次代の市場を見据えた施策が明確になっている。

〈染色加工業/メーカー連携と事業領域の拡大を両輪で〉

 産地内の染色加工業でも変化に合わせた独自の施策が進む。

 西染工は、1台保有している織機を5台程度にまで増強、サンプル整経機、部分整経機も導入し、織布事業を本格化する。

 山本敏明社長は、「染色加工という完全受託型のビジネスだけでなく、自己完結できるビジネスモデルを確立する」方針を示す。複数の自社ブランド製品も既に展開しており、付加価値の高い染色加工の体制と自社ブランドの展開拡大を進める。

 村井捺染もインクジェット捺染による高付加価値化を基に、自社での提案、織布、仕上げまで一貫対応できる体制を確立している。矢野光嘉社長は「まだまだ一貫対応できることが知られていない」と話し、見本市などでのアピールを強化し、幅広く新規の取引先を拡大していくと言う。

 越智源は2018年、本社内の加工ラインの大規模更新に取り組んだ。これまで部分的に進めてきた染色機や乾燥機の新規更新の仕上げとして、製品染めや小ロット対応型の施設の並びを再構成し、作業効率の向上を図った。並行して給排水設備の再整備も進める。

 越智裕社長は「働く人のためだけでなく、外部から見ても安心できる現場にする」と話す。懸案だった社員の休憩、交流スペースを新設するなど福利厚生も充実させる。

 愛媛県繊維染色工業組合は、18年9月に燃油価格高騰に起因する加工料金の値上げの打診を行っている。直接の交渉は各企業で行い、定番的な糸晒しやのり抜きなどを中心に価格改定を進める。

 産地内のタオル生産が減少している局面で、単純なコスト転嫁による価格改定は難しい――との認識は染色加工業、タオルメーカーともに共通している。染色加工業側にも提案の手法が広がるなか、どのように交渉を進めるかが問われてくる。

〈メーカー直営店/活用幅が広がる〉

 タオルメーカーが直営店の活用を多様化させている。新店舗の開設も続いており、消費者の志向、需要動向を探るアンテナショップとしての役割を基本としながらも、自社のモノ作りの技術や方向性を業界内外に発信する拠点として重要度を高めている。

 2018年中には首都圏での開設が相次いだ。6月に藤高が東京・銀座に、10月に丸栄タオルが赤坂に、11月に今井タオルが富ヶ谷(渋谷区)に、それぞれ直営店を開設した。このほか、中忠も2019年の春に、高円寺に直営店を開設する。

 藤高の店舗は新たに取得した自社ビルにある。店舗の機能だけでなく、ショールームや事務所機能など総合的な活用で、同社の企画提案力を幅広く見せる。藤高豊文社長は、「本社に準じた機能を持つ首都圏の橋頭堡(きょうとうほ)として活用していく」方針を示す。

 さらに首都圏で新規に獲得した小ロット短納期型のOEM事業は「短期集中型でスピードと細かさが求められる」傾向が強く、首都圏に拠点開設したメリットは多いと指摘する。

 丸栄タオルの直営店は赤坂の出店で9店舗目となった。ブランド「今治浴巾」のショップとしては8店舗目。村上誠司社長は「出店のオファーは多く、今後もブランドの方向性と合致した地域に出店を継続する」意向を示す。

 同社は17年から18年にかけての本社工場改装の中で、生産設備の増強、刺しゅう機、インクジェット捺染機の更新など「手の内でできることの充実とスピード感」を強化してきた。これに合わせ、自社ブランドを軸とした製販一体型のビジネスを追求する。

 今井タオルの新店舗は、個店舗である利点を生かした活用を図る。

 内装や什器(じゅうき)などを用い、同社の世界観を総合的に見せられる空間とする。自社開発の先進的な企画を、シーズン性を問わず提案できる点を生かし、一般消費者への自社ブランドのアピールだけでなく、新規のOEM受託を視野に入れた人材育成にも注力する方針を示す。

〈原糸〉

《「爽快コット」で新感覚/東洋紡STC》

 東洋紡STCは今治などタオル産地向けの原糸として特殊紡績による機能綿糸「爽快コット」を新たに投入する。機能糸の提案を拡大することで、今治産地での新感覚のタオル開発を後押しする。

 爽快コットは特殊紡績によって吸汗速乾性や抗ピリング性を高めた機能綿糸。既に、インナーを中心に豊富な実績がある。これをタオル用途にも投入する。ドライタッチの風合いも特徴で、従来のタオル用原糸と異なる新感覚の風合いのタオルを生産することもできる。

 タオル向け綿糸の主力である「金魚」もバリエーションを拡大した。銀イオン配合アクリル・綿混紡で抗菌防臭性を付与した「金魚AG」やオーガニックコットン使い金魚をラインアップ。オーガニックコットンは富山事業所(富山県射水市)が17年にコントロールユニオンの認証を取得した。

 商品の高度化・高付加価値化への志向が強まる今治産地に対して、それを可能にするユニークな原糸を提供することに取り組む。

《ベトナム生産で備蓄販売/シキボウ》

 シキボウはベトナムの協力工場で委託生産する綿糸の備蓄販売を拡大している。タオル向けでは特殊精紡交撚甘撚り糸「デュアルアクション・スイートツイスト」の提案に力を入れる。

 現在、同社の綿糸は国内の富山工場(富山市)とインドネシア子会社のメルテックス、ベトナムの協力工場で生産する。このうちメルテックスの糸生産は中東民族衣装用織物やユニフォーム地用の原糸として自家消費するものが中心。このためタオル向けなどの生産は富山工場とベトナムの協力工場が主力となる。

 富山工場は別注糸を含めた高付加価値糸の多品種・小ロット生産に特化しており、備蓄販売用はベトナム生産品が中心となる。タオル向けでは、サンホーキン綿を使った甘撚り糸であるデュアルアクション・スイートツイストをベトナムで生産しており、60双級と40双級を備蓄販売する。

 ベトナムで差別化の甘撚り糸を生産できる紡績は少ない。タオル産地では甘撚り糸の需要が底堅くあることから、備蓄販売の強みを生かした提案に力を入れる。