横山達也のチャイナ・アウトサイト(16)/「ハタ・ウタ・ギョクガン」

2019年01月28日(Mon曜日) 午前11時11分

 最近気になること。

 全豪オープンテニスで、コート横にあるスポンサー看板の「國窖1573」。では、ない。その会場に揺れている国旗、いわゆるナショナルフラッグ、日本でいうと「日の丸」だ(ちなみに國窖は、中国の白酒メーカーである)。

 ある金曜日の夕刻、筆者の職場から、徒歩で自宅を目指した。阪神大震災で故郷が被災したことや、東日本震災時の帰宅困難を教訓に、「ひとり防災訓練」と称して毎年一度は歩いて帰ることにしている。具体的には、東京・飯田橋から新宿経由で、新青梅街道をゆくおよそ12㌔、のんびり歩いて3時間の道のりだ。この日は、同じ方向に帰る同僚と出発。周囲を見回しながら歩くと、普段の電車通勤では知ることのない路地裏の下町風情や、思わぬしゃれた飲み屋などを発見する。

 道すがら、イタリア、フランスの三色旗がやたらと目に入る一方で、日の丸がない。それも一本もない。イタリアンレストランには、必ずと言ってよいほどトリコローレ(ちなみにフランスはトリコロール)が掲げてあるが、居酒屋には日の丸はない。平日の日本ではイタリア国旗が一番多い、と誰か言っていたが、本当にそうかもしれない。ついでに思い出したのは、中国の街中にあふれんばかりに並ぶ五星紅旗のこと。自国の国旗だから当然だろうが、その数は尋常ではない。愛国心か、政治か、とにかく平日でも紅い旗が町じゅうを埋めている感じだ。対抗できるのは、米国くらいだろう。

 で、ようやく本題。日本では国旗国歌法で、国旗は日章旗とする(第1条)、国歌は君が代とする(第2条)と、しごくあっさり。かたや中国では、国旗法は20、国歌法は16に及ぶ条文が並ぶ。国旗は愛国主義精神の発揚とされ、最大限に尊重し、掲揚場所やタイミングなども明記。国歌法でも、歌を流してよいシーンをはじめ、曲が流れる間の私語の禁止などこと細かく決められ、両法とも違反者には拘留を含めた刑事罰が定められている。うっかり中国の飲み屋で、国旗を振りながら国歌を歌うと、重大な法律違反となるのだ。企業活動においても、広告や式典での国旗・国歌の使用は厳禁なので、関係者には注意してほしいところだ。

 ついでに言うと、中国は国家要人に関する肖像権の規則も定めている。中国政府との共催イベントで、彼の国の要人が写った資料を使おうとしたら、「当局の許可が必要」として断られた経験もある。旗も歌も大変だけど、「玉顔」(高貴なお顔)すら、簡単に使っちゃいけないそうだ。皆さん、これにも気を付けよう。

 で、「ひとり防災訓練」。街並み新発見でテンションを上げていたが、気が付けば新宿の居酒屋に吸い込まれ、結局は帰宅困難者となった。

 よこやま・たつや:1971年兵庫県生まれ。静岡新聞記者を経て2001年、北京に留学。02年から日中経済協会。12年5月同協会上海事務所長(成都事務所長兼務)。17年8月からは同協会本部事業開発部に勤務