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東レ「LIVMOA(リブモア)」/高通気と集じん性を両立/作業現場の必須アイテムに

2019年01月29日(Tue曜日) 午前11時24分

 快適性と安全性の向上に役立つ――今、そんな“服”が注目されている。東レが展開するリミテッドユース(使い切り型)防護服・保護服「LIVMOA(リブモア)」だ。エアフィルターに使われる不織布の応用によって優れた集じん性能と高通気を両立しており、着用時の不快感を軽減する。商品の認知も高まりつつあり、作業現場などでの必須アイテムになりそうだ。

 使い切り型の化学防護服・保護服は、目的や用途に応じたさまざまなタイプが販売されている。主な着用シーンとしてはアスベスト対策やダイオキシン対策、感染対策、除染などが挙げられるが、一般的な化学防護服・保護服は通気性が低く、高温環境下では衣服内の温湿度が上昇するといった問題があった。

 そのような背景の下、東レは安全性を備えながら快適に着用できる新しいタイプの化学防護服の開発に着手したが、「化学防護服市場には有名企業やガリバー企業が存在し、特徴のある商品の創出が不可欠」(機能製品事業部)だった。そこで帯電不織布「トレミクロン」の機能性に目を付けた。

 トレミクロンは、ポリプロピレン(PP)極細繊維から成る不織布をエレクトレット化した独自の高性能シートで、エアフィルターなどに用いられている。このシートをPPスパンボンド(SB)不織布で挟み込んだ3層構造とすることで、防じん性(固体粉じんを吸着して衣服内の侵入を防ぐ)と通気性能を両立。2013年に「高通気タイプ」、14年に「防水透湿タイプ」を開発した。

 15年には全国農業協同組合連合会(JA全農)と安全で快適な農作業に貢献する農業用防護服「カッパ天国エース」を製品化した。タイアップは、JA全農の「農作業者の農薬散布時の安全性や快適性を追求したい」という考えと、東レの「高機能な先端素材を活用した製品開発を通じて、より良い社会の実現に貢献していく」という方針が一致して実現した。

 防水透湿フィルムとPPSB不織布(トレミクロンは不使用)の3層構造生地を使い、農薬散布時や雨天時だけでなく、農作業以外の日常の作業や汚れ作業など、幅広い場面での着用を可能にした。製品化に当たって、農家による試着アンケートを実施し、要望を反映している。

〈年間100万点の販売を〉

 17年5月、既に除染処理などの用途で販売実績があった使い切り型防護服の高通気タイプを「リブモア3000シリーズ」として市販を開始した。同製品は化学防護服のJIS T8115:2015タイプ5(浮遊固体粉じん防護用密閉服)に適合し、目に見えないサブミクロンの微粒子ごみから大きなごみまでキャッチして吸着する。

 最大の特徴とも言える通気度は96立方センチ/平方センチ/秒。1秒間に1平方センチ当たり96立方センチの空気を通すという意味で、一般的な防護服の通気度(0・6立方センチ程度)を大きく上回り、ニットのポロシャツに匹敵する。衣服内湿度も他社製品と比べて最大で31%RH(足踏み時)低減した。事業者向け通信販売サイト「モノタロウ」で取り扱う。

 蒸れ感軽減による快適性などが評価を受けて好評を博したが、同時に機械油などを使用する現場では油が浸透しにくいタイプ(内側の服が汚れにくい)のニーズがあることも分かった。そこで同年10月にはリブモア高通気タイプに油の浸透抑制機能(耐油性能)を付加した保護服「リブモア3500シリーズ」を市場投入した。

 3500シリーズは独自の耐油加工を施すことで、96立方センチ/平方センチ/秒という高通気度と防じん性を保持しながら、外部からの油の浸透抑制機能の向上に成功した。3000シリーズがカバーオールであるのに対し、3500シリーズはフードを廃してより作業服に近い形を採用。胸や尻に大きめのポケットを配置するなど利便性を高めた。

 昨夏にはプロモーションを積極的に仕掛け、3000シリーズの涼しさを体感してもらうキャンペーンを実施した。建設業や製造業、保守点検関連など、120を超える企業・団体に着用してもらったところ、81%がまた着用したいと答え、「涼しさが体感できた」「着心地が良かった」「動きやすい」「従来品と比べて耐久性があった」などの声が返ってきた。

 機能製品事業部によると装置や機械、部品の製造を行う業種、機械メンテナンスの担当者らの評価が特に高かったほか、繊維強化プラスチック(FRP)やグラスファイバーなどを扱う工場の作業員からも好評を博した。「どの業種、職種でニーズがあるのかが分かったことも大きかった」とキャンペーンを振り返った。

 リブモアの認知度は着実に高まっており、今年から本格的な販売拡大を志向する。化学防護服・保護服の市場規模は世界で1千億円(東レの推計)とされている。市場の95%を欧米(欧州が450億円、米国が500億円)が占め、日本だけでなく、欧米マーケットも積極的に攻める。機能製品事業部は「早い段階で年間100万点の販売を実現したい」と力を込める。

〈東レ 機能製品事業部部長代理 勅使川原 崇 氏/「我慢」からの解放〉

 快適性を付与した化学防護服・保護服として高い評価を獲得する「リブモア」シリーズ。従来品にはなかった高通気という機能を前面に押し出し、化学防護服・保護服を着用する際に求められてきた「我慢」から解放する。機能製品事業部の勅使川原崇部長代理にリブモアの現状や販売戦略を聞いた。

     ◇

  ――リブモアの開発経緯を教えてください。

 きっかけは2011年の東日本大震災です。化学防護服を着て除染に向かう作業員をテレビで見た人は多いと思いますが、化学防護服は通気性が低く、高温環境では衣服内の温湿度が上昇し、着用者に過酷な状況をもたらします。素材や製品で作業負荷軽減に役に立てないかと思っていました。

 働く人のウエアは多種多様なアイテムを手掛けてきましたが、「カバーオール」で「不織布」で「使い切り型」のウエア(化学防護服)は東レのビジネス領域ではありませんでした。ただ、不織布は注力分野の一つであり、防護服が除染だけでなく、建設や製造業などにも広がっていることを知り、開発に着手しました。

  ――知見がなく、製品化には苦労も多かったのでは。

 化学防護服は後発であり、既存商品と同じ物では勝負できないのは明らかでした。当社は高通気でありながら優れた集じん性を持つ帯電不織布「トレミクロン」を展開しており、これを応用することで市場にはない製品を作ることができると考えました。

 滋賀県大津市の環境・エネルギー開発センターで開発を進めましたが、衣服を取り扱った例が少なくて苦労もありました。スポーツの縫製に携わってきたスタッフや社外アドバイザーを含めてチームを組み、快適性を得るための設計やコスト、粉じんを入りにくくする構造などについて研究を重ねました。

  ――完成した製品は高通気が大きな特徴です。

 ユニフォームは夏場でも快適に着用できるよう進化しています。一方で化学防護服は暑さを我慢して着用するのが当たり前でしたが、リブモアが誕生したことで我慢からの解放が可能になりました。ビジネスやユニフォームで浸透したのと同じように、化学防護服にもクールビズを広めたいと思っており、その先陣を切ります。

  ――日本と欧米が重点市場になる。

 日本に加え、化学防護服・保護服の一大市場である欧米は積極的に攻めます。知名度アップのために昨年10月下旬に米国で開催された「NSCコングレス&エキスポ」に出展しました。

〈感染対策衣をギニアへ/高透湿性が診察に寄与〉

 「リブモア」は、感染対策衣としてギニア共和国に1万着寄贈された(2017年)。エボラウイルス病(EVD)のアウトブレイク(感染集団発生)を経験した同国は、終息後も再発と新規感染の発生を予防する対策を強化しており、不足している資材を補うための手段として用いられた。

 感染防止タイプのリブモアは、不織布とフィルムを組み合わせて血液ウイルスバリア性を付与すると同時に、高い透湿性も誇る。一般的な感染対策衣は暑く、発汗量も多いため、10分ほどしか着られない。リブモアは20分程度着用が可能で、その10分間で何人も患者を診察できる。

 機能製品事業部は「ギニア共和国保健省の求めに応じる形で寄贈したが、リブモアが役に立つことが分かった。感染防止タイプの市場開拓も進めていく」と言う。