繊維街道 私の道中記/東京ソワール 顧問 萩原 富雄 氏⑤

2019年02月01日(Fri曜日)

アートの部分をプラス

 2009年6月の社長就任は、その半年ほど前に児島絹子さんと、何人かの役員との会議で告げられました。「えっ」という感じでした。ちょうど総会で質問が増えてきた時代でしたので、責任重大だと思ったことを覚えています。

 百貨店の卸売事業中心でしたので、何とか自前で小売りまでやれないか、と取り組みました。直営店部隊は、ようやく売上高10億円規模になりました。

 東京ソワールは11年秋冬からグレーディング技術「シルエット美人」を導入した。フォーマルウエアは3号から25号まで製造するが、機械によるグレーディングだけでは無理がある。そこに人間の手を加えてより立体的に見せ、着心地を良くしたものだ。16秋冬からさらに新たなグレーディングピッチも導入している。

 会社としてフォーマルに固執することはないと思っています。ワークマンがカジュアルウエアに進出する時代です。フォーマルという切り口で何か新しいことができないか。フォーマルもニットとシフォンとを組み合わせるなど、もっとストリート寄りになってもいい。それで新しい顧客の開拓ができれば。

 顧客がワードローブを探す中で、フォーマルにも着て行けるような商品開発もあります。フォーマル売り場は短期間のリピーターが少なく、1回買えば、当分お見えにならないお客さまが多くいらっしゃいます。シーズンごとに訪ねていただけるような、商品展開が求められます。しかし、これは売り方、物流、全てのシステムの開発が必要だと思います。「コイノブヒデ フォーメル」もそうした一例です。

 13年3月に会長職、17年4月に顧問となった。

 社長は6年くらいと考えていました。新卒から四十七、八年。入社当時は長髪でしたが、髪も薄くなりました。創業者の存在が大きな会社でした。そのまじめさ、モノ作りに対する姿勢が会社のDNAかもしれません。ですが、これからのビジネスはアート(遊び)の部分が増えてくると思います。モノ余りの時代ほど、アートが必要になる。低成長、成熟化の今、顧客に共鳴、共感してもらうことです。

 フォーマルにはドレスコードがあります。それはその場の雰囲気を崩さないよう、相手のことを思いやるのが基本です。その人が浮いたり、恥をかかせたりしない。その一方で、新しいビジネスとして違うやり方があってもいい。フォーマルにはFORM(形作る)が内包されていますが、頭はフォーマルにしないでほしい。次の世代には、自由な発想でフォーマル市場を進化させていってほしいと思っています。(この項おわり)