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特集 アジアの繊維産業Ⅰ(5)/インドネシア/素材の高付加価値化進む

2018年10月04日(Thu曜日) 午前11時42分

 2018年に入っても5%台の安定した経済成長が続くインドネシア。2018年第2四半期(4~6月)の実質GDP成長率は前年同期比5・27%増となり、第1四半期の5・06%増から加速する。けん引役となるのはGDP全体の5割強を占める個人消費。こうした現地の景気の拡大を背景に、日系繊維企業は従来の対日輸出に加え、内販及び第三国輸出にも力を入れる。

 日系繊維企業の18年9月までの業績はおおむね堅調に推移する。9月に取材した企業の売上高の大半を日本向けが占めており、特に好調な日系SPAとの取り組みを増やした企業は軒並み前期を上回る実績となっている。素材メーカーでは日本で市場の拡大が続くユニフォーム素材の販売が底堅い。東京五輪などに関連した製造業からの需要が追い風となっている。

 一方、縫製や紡績、織布、編み立て、染色加工といった、生産体制に目を向けるとこれまでの量産素材一辺倒から変化の兆しが見られる。これまで現地で調達する素材は技術的に簡単で量産向けの商材が多かったが、ここに来て付加価値の高い生地を現地で開発する動きが見られるようになってきた。

 インドネシア内販や第三国への“外・外ビジネス”を拡大する課題も日系企業に共通する。ただ一部の企業を除き、順調には進んでいないのが現状。所得水準が上がり、消費の多様化が進んだことで、現地の衣料品消費は力強いが、現地素材メーカーや中国企業との価格競争が激しさを増している。

 原材料高や人件費上昇によるコストアップや今年に入ってルピア安が進んだことも逆風となっている。得意の高品質や高い機能は現地のボリュームゾーンのニーズにはなっていないことも内販が進まない原因の一つ。

 今後、日系繊維企業にとって日本向けをターゲットとしたインドネシア産の高付加価値品による業績拡大と、現地のニーズに合った商材開発による内販のボリュームアップが業績拡大の鍵を握る。

《グループ連携で生産高度化へ/東レ》

 インドネシア東レグループは、インドネシアに加えASEANのグループ各社と連携し生産品や商流の高度化を進める。グループ全体の2018年上半期(4~9月)業績は前年同期比増収増益となる見通し。ポリプロピレンスパンボンドや日本向けの縫製品が堅調、非繊維も順調に拡大する。利益面では要員の合理化、生産の効率化、ロス削減にも取り組んだことで増益を予想する。原燃料高が差し迫った課題となっており、コストダウン策を続けるとともに価格転嫁も順次進める。

〈短繊維販売が堅調/インドネシア・トーレ・シンセティクス〉

 インドネシア・トーレ・シンセティクス(ITS)は紡績用ポリエステル短繊維の需要が堅調なものの、インドネシア国内でのフィラメント需要は低調に動く。一方、ナイロン原料の高止まり、ポリエステル原料価格の急騰が収益を圧迫しており差し迫った課題。

 対策として加工費、燃料費、労務費などのコストアップ要因を生産の効率化、ロスの削減、省エネなどにより収益を確保する。業績拡大に向けて、高付加価値素材の開発、高度な商流の構築と拡大を進める。

 日本向けは、衣料・資材用ともに原糸販売を中心に安定して動く。

〈特価品比率高め収益向上へ/アクリル・テキスタイル・ミルズ〉

 アクリル紡績のアクリル・テキスタイル・ミルズは18年第1四半期(4~6月)前年同期比増収増益となった。日本向け靴下用の特品の販売数量が伸びたことが主因。利益面は少人化設備投資と製造工程の合理化などの固定費削減で原料価格アップ分をカバーした。

 第2四半期以降は、アクリル原料高の影響をカバーするため値上げ交渉に臨む。特品化比率を高めることで収益率向上を図る。第3四半期の閑散期対策として、マットなどの資材用途拡販のために新商品開発を進める。第4四半期では生地糸販売から染め糸販売への転換を進めるべく新たな商流開拓に力を入れる。

 日本向け靴下用特品需要は、一時的で基本的に今後は減少が続くと予想。大手SPA関連も今年度は前年比増量だったが、来期は不透明。

〈アフリカで販売量増加/インドネシア・シンセティック・テキスタイル・ミルズ〉

 ポリエステル・レーヨン混織物のインドネシア・シンセティック・テキスタイル・ミルズの18年第1四半期(4~6月)業績は中東市況の低迷でスパンポリエステル織物の販売量が前年同期比減となり苦戦した。

 第2四半期はスパンポリエステルの数量がやや回復したものの、中東向け織物は低調が続く。唯一、成長市場のアフリカ向けで販売量が増えたことで、売上高、営業利益は増収増益となる見通し。下半期(18年10月~19年3月)は、スパンポリエステルの販売数量確保とポリエステル・レーヨン混織物はアフリカ向けを中心に、原料コストアップ分の価格転嫁が課題となる。

 インドネシア国内の一般衣料向けのポリエステル・レーヨン混織物の需要は低調。ユニフォーム用途は需要が根強いが価格競争が厳しい。

〈付加価値品へ品種転換/センチュリー・テキスタイル・インダストリー〉

 ポリエステル綿混紡織物のセンチュリー・テキスタイル・インダストリーの18年第1四半期(4~6月)の業績は前年同期比増収増益となった。第2四半期から増設が完了した染色ラインの本格稼働を開始し、定番品から付加価値品への品種転換を進める。

 日本向けで主力のシャツ市場では、百貨店、量販店、ロードサイド店など従来の小売業態で苦戦が続くと予想する。そのため数量の拡大ではなく、定番から付加価値品へのシフトを目指す。ユニフォーム市場は中肉機能素材の開発に力を入れる。

 インドネシア内販は、ドレスシャツ、フォーマルボトム用途に加え、カジュアルシャツ・ボトム用途への商品を開発する。

〈内販と第三国輸出も堅調/トーレ・ポリテック・ジャカルタ〉

 ポリプロピレン(PP)スパンボンド不織布のトーレ・ポリテック・ジャカルタの18年上半期(4~9月)の業績はインドネシア内販、ASEAN、インド向けの輸出がそれぞれ堅調に推移した。販売量と売り上げは前年実績を上回る。

 下半期も市況はおおむね底堅く動くと予想するが、原料価格の上昇分の価格転嫁、差別化品の拡大を通して収益拡大を目指す。PPの価格上昇とルピア安が当面の懸念材料。

 インドネシア内販は差別化品拡大を進める。ASEAN輸出ではベトナム向けが拡大中。

〈販売拡大とコスト削減進む/イースタンテックス〉

 ポリエステル綿混織物のイースタンテックスの18年上半期(4~9月)業績は増収増益の見通し。東レグループ向けを中心とした販売量拡大とコスト削減を進めたことによる。第1四半期業績は前年同期比増収減益だった。ポリエステル綿混織物の市場の低迷は続き、価格競争の激化の影響を受けた。原料価格上昇に対して、価格転嫁が進まない状況にある。

 下半期は原料価格の上昇、主要仕向け先のトルコの為替影響が懸念されるため、価格転嫁、東レグループ向けの販売増、コスト削減が課題。

 インドネシア国内向けの商況は堅調が続く。バングラデシュ、トルコ向け一般商品では量は確保するが価格面で苦戦。

〈グループ連携強化で拡大/トーレインターナショナル・インドネシア〉

 トーレインターナショナル・インドネシアの18年上半期(4~9月)の業績はインドネシア国内向け衣料品用途や中東向け民族衣装用途は市況の低迷により苦戦したが、日本向け縫製品販売は前年の記録的な寒さの影響で堅調に推移し前年実績を上回る見通し。

 下半期は東レグループとの連携を引き続き強め、ASEAN域内を中心とした糸・わた、生地、製品まで一貫型ビジネス拡大を進める。日本向けは上半期は底堅く動いたが、19年度向けの販売が始まる下半期以降は不透明感が漂う。中東は、依然として市況低迷が続く。インドネシア内販もドル高ルピア安が進み、輸入原料価格が上がっており、ビジネスの環境は厳しさを増している。

《樹脂が堅調、繊維は横ばい/東洋紡》

 インドネシア東洋紡グループは、現地事業統括・販売の東洋紡インドネシア(TID)、編み立て・染色加工の東洋紡マニュファクチャリングインドネシア(TMI)、縫製のSTGガーメント(STG)で構成する。

 本年度上半期(2018年4~9月)までの業績はTIDが二輪・四輪向けの樹脂販売が堅調、繊維関連は横ばい。TMIは日本市場の不透明感と低価格志向、原材料高の影響で苦戦する。STGガーメントは、シャツ用途でニットシャツブームが追い風となり受注は堅調。スポーツ用ニット衣料は販売量より採算を重視する。

 第三国輸出は不振も内販はニットビジネスシャツを中心に順調に拡大する。縫製地が人件費のより低い中部ジャワにシフトしていく中、東洋紡グループは追随せず工賃が比較的高いカラワンを本拠とする。そのため高級品ゾーンの開拓が業績拡大の鍵を握る。

 日本をマザー工場とするTMIは、差別化機能素材の生産移転を引き続き進め、素材開発・生産面での競争力を強化する。

 STGは人件費上昇によるコストアップに対応するため、自動化、省人力化を進める。

《高付加価値素材の開発強化/帝人フロンティアインドネシア》

 帝人フロンティアインドネシアは、現地で高付加価値素材の開発に取り組む。これまで縫製品は現地素材メーカーの定番生地を使った商品が大半だったが、顧客から高付加価値素材を使ったアイテムのインドネシア生産の要望が増えているためコンバーター機能を強め新たな商品の開発を強化する。

 縫製品販売を手掛ける製品部と生地の開発・販売を担うテキスタイル部とが連携し、製品部によせられたオーダーをテキスタイル部で開発し両部の相乗効果を狙う。一部の縫製品には帝人独自の高機能素材を使う。

 中東の民族衣装向け生地販売は市況が厳しいため苦戦が続くが引き続き拡販を続ける。江成俊一社長は「昨年から市況が悪いが、回復の兆しもある」とし「粘り強く続けていく」と話す。トーブの既製品販売やレディースの衣装に使われる刺しゅうやレースといった商材の販売にも力を入れる。

 産業資材分野ではここまで車両用部材、工業フィルター用途の素材が堅調。これ以外に紙おむつなど衛材用不織布の同国内需要が徐々に出ており来年度から本格的なビジネスにつなげる。

《UTIと連携し開発強化/ユニテックス》

 ユニチカのインドネシア紡織加工子会社、ユニテックスは、ユニチカトレーディングインドネシア(UTI)と連携した素材開発に力を入れる。

 UTIと組んで高付加価値のカジュアルシャツ地を開発し、日本のアパレルメーカーに提案する。強みとなるのがユニテックスの複重層紡績糸「パルパー」。ポリエステルの芯に綿をカバリングする構造で、綿の肌触りの良さとポリエステルの速乾性に抗ピリング性も特徴。

 本年度上半期(2018年1~6月)にはUTIと共同開発した素材で実績ができた。パルパーを使った生地に外注で汗染み防止加工を施した素材で、日系アパレルのカジュアルシャツで採用された。

 下半期は、パルパーの強撚糸を使った織物に感性で価値を付ける加工を外注で施したシャツ地を開発するほか、レーヨンとパルパーを使ったシャツ地も試作している。

 主力の生機・先染め地販売で、下半期はユニフォーム用途の拡販に取り組む。同社の売上高の9割が生地売りで、そのうち日本向けは45%、インドネシア内販は55%の構成比率となっている。

《現地で新素材開発に注力/ユニチカトレーディングインドネシア》

 ユニチカトレーディングインドネシア(UTI)は2018年下半期(7~12月)にスポーツ衣料とカジュアルシャツ地の新素材開発に力を入れる。

 主力のスポーツ衣料用生地ではユニチカの岡崎工場の差別化糸を使ったニット地の現地生産が先行しているが、織物でも日本の機能合繊を使った素材の現地生産をスタートする。

 UVカット機能素材「こかげマックス」、接触冷感素材「打ち水」、吸放湿性ナイロン素材「ハイグラ」を使った生地をインドネシアで開発する。

 UTIの売上高の8割が日本への輸出を中心としたスポーツ衣料向け生地販売だが今後、カジュアルシャツ素材の売り上げ拡大に力を入れる方針。

《加工数量が過去最高更新/TTI》

 東海染工グループのトーカイ・テクスプリント・インドネシア(TTI)の本年度上半期(2018年1~6月)の加工数量が1990年の創業以来、過去最高となる2670万ヤード(前年同期比2・7%増)になった。

 7月は550万ヤード、8月は470万ヤードと前年の実績を大きく上回るペースが続く。川本修社長によるとレバラン(6月の断食月明けの大祭)後は毎年ペースが大幅に落ちるが、今年は珍しく好調が続いていると言う。「このペースが続けば、通期の売上高は前期比10%増が見込め、16年度とほぼ同じ過去最高水準になる」(川本社長)。TTIの月間平均加工能力は430万ヤード、そのうち230万ヤードがプリント、200万ヤードが無地染め。

 一方、営業利益はわずかな増益にとどまる。染料、カセイソーダ、人件費、為替変動で圧迫された。今年の最低労働賃金の増加幅は8・7%増で、西ジャワ州ブカシ近郊では平均月給がジャカルタより高い。染色・薬剤は4~6月ごろに影響が出始めた。染料や薬剤の使い方の工夫で上昇を抑制する。

《製品や素材開発に注力/TYSMインドネシア》

 豊島のインドネシア法人、TYSMインドネシアは、製品や素材の開発に力を入れる。今後、インドネシア市場での内販に加え、ASEANでの販路開拓に取り組む。

 原綿から糸、生地、製品までを一貫して扱う。現地で製造技術に精通した人材を雇用し開発力を強化するとともに縫製のロス削減といった生産効率アップも図る。インビスタの伸縮性ポリエステル「T400」や涼感ポリエステル「クールマックス」といった付加価値のある商材も充実させて新たな需要を掘り起こす。

 売り先は日本向けが主力で内販比率は少ない。インドネシアは今後も継続的な経済成長が見込まれるため、内販の拡大に力を入れる。課題となるのは現地人の営業社員の育成。

 本年度上半期(2018年1~6月期)は既存顧客への営業強化と新規顧客の開拓に取り組んだことにより、原料、糸、生地、製品ともに前年を上回るペースで推移する。

《日本向け生地供給拡大へ/蝶理インドネシア》

 蝶理インドネシアは日本向けを中心とした生地の販売量を増やす。そのために合弁染色加工場、ウラセプリマを活用した付加価値の高い生地の提案を強める。蝶理インドネシアの縫製品事業への生地供給以外に日系のワークウエア、食品・病院白衣用途でも提案する。

 ウラセプリマは、染色加工のウラセ(福井県鯖江市)、現地繊維企業のダリアテックス、そして蝶理が出資する合弁染色加工場。フォーマルブラックなどの無地染めや風合い加工が可能。月100万メートルの加工能力に対して現在は月30万~40万メートルの規模での稼働にとどまる。

 田中裕司社長は「近い将来、まず月50万メートルを達成したい」と述べ、「顧客へのアプローチはできており、これから半年ぐらいをかけて拡大が見込める」と話す。同社のレディースフォーマル縫製への生地供給に加え、日系の商社、SPA、小売業などをターゲットにパンツ、スカート、ワンピース、ブラウスなど幅広い用途で拡販する。

《コラム/アジアの街角/車窓から見る偽らざる姿》

 2017年12月に開通したジャカルタ空港鉄道に乗った。スカルノ・ハッタ空港から終点スディルマン駅までを1時間ほどで結ぶ。駅から日系企業が集まるビジネス街までは歩いてすぐだ。

 車内の設備はあらゆるものが新しく椅子の座り心地も快適そのもの。日本の電車より座り心地は良い。もちろん渋滞とは無縁でダイヤの狂いも今のところないようだ。運賃は片道500円ほどとリーズナブルで物を盗られるといった身の危険も全く感じなかった。車窓からの眺めも一見の価値あり。

 裸足でサッカーに興じる子供たち、昼間から線路脇で裸で寝転んでいる人、沿線に立ち並ぶ破れたバラック小屋、大量のごみを運ぶ濁った川。経済成長にひた走るこの国の偽らざる姿が流れゆく。タクシーからは決して見ることのできない眺めだ。