メーカー別 繊維ニュース

特集 アジアの繊維産業Ⅰ(6)/わが社のアジア戦略

2018年10月04日(Thu曜日) 午前11時44分

〈適地適品の生産体制へ/生産性の向上に注力/三菱商事ファッション〉

 三菱商事ファッション(MCF)は、東南アジアに展開する製品OEM事業で各国・地域の拠点ごとの特性に合った生産基盤を構築する。顧客のニーズに応じた適地適品の生産体制を目指す。

 東南アジアでは近年、急速な最低賃金の上昇が続くが、インドネシアもここ数年、経済成長に合わせて毎年8%程度賃金が上昇している。それでも中部・西部ジャワの最低賃金はカンボジアやベトナムより低く競争力は依然として高い。人口で世界4位、生産労働人口も増え続けているという点も縫製拠点としての大きなメリットになる。

 半面、調達可能な生地のバリエーションが少ない、技術レベルの低さといったデメリットもある。これらの弱点をいかに補っていくかが今後の躍進の鍵を握る。

 MCFのインドネシア・ジャカルタ駐在事務所は素材から縫製まで一貫した生産進捗(しんちょく)状況について本邦との間で連絡業務を行っている。大手SPA、スポーツアパレル、カジュアル衣料のOEMが主力。今年度は日系SPAの好業績に支えられ順調に取り扱いを伸ばしており、2018年4~9月期の取扱高は前期比10%増となりそうだ。

 ターゲットとなる市場は日本向けが中心だが近年、日系企業との実績を強みに海外マーケットや内販向けの連絡業務も増えてきた。日系に限らず現地の素材調達網も充実しつつある。今後、ニットに加え布帛の現地調達先の拡大に取り組む。

 桑本幸三駐在事務所長は「既存の顧客に加え新たな顧客の開拓が急務」とし「そのためには生産性を高めることが必要不可欠」と話す。協力縫製工場は中部ジャワに1社、西ジャワに2社あり、当面は現状の生産規模を維持していく。

 今年度は協力工場の生産性と品質の向上、リードタイムの短縮が課題。「生産体制は今のままでも技術や効率の改善で前年度比15%程度は生産性の向上が見込める」(桑本所長)と言う。現地で技術者を増員し、各縫製工場への指導を強化する。

〈アジア全方位で拡大へ/着実に伸ばしていく/宇仁繊維〉

 宇仁繊維(大阪市中央区)のアジア戦略は、日本製生地をバリエーション豊富に小口から即納するというもので、国内市場のそれと全く同じ。顧客や市場の特性を見極めた上で販売戦略は細かく修正するが、基本戦略に国内・海外の違いはない。懸案の中国市場向けは足踏み状態が続くことから事業構造の改革に着手。分母は小さいながら徐々に拡大する中国以外のアジア諸国向けは勢いをつけながら今後も着実に伸ばす。

 同社で中国市場向け生地販売を担うのは、子会社の宇仁テキスタイル。宇仁テキスタイルの2018年8月期売上高は11億円だったが、そのうち約3億円を中国市場向け生地販売が占める。これに、北京と上海の両法人の約5億円が加わる。

 上海法人は今年6月から、そのスタッフ個人との代理店契約という体制に切り替えた。法人も残すが“休眠”状態としている。欧米向けなどと比べて中国向けは売り上げ横ばいが続くなど足踏み状態にあり、そのてこ入れに踏み切った。

 北京法人は法人機能を維持し、引き続き拡販に臨む。法人を介した生地販売に加え、日本の宇仁テキスタイルから現地アパレルへの直接販売を増やしていく構想で、そのために人材育成や登用も同時並行で進めていく。

 「中国は大きな市場。あきらめるつもりはない」とし、試行錯誤しながら拡大を目指す。

 中国以外のアジア諸国向けは順調な伸びを見せる。タイ、ベトナム、インドネシア、香港向けなどを合計して現在の売り上げは約3億円。展示会出展や日本の商社を介した商流を構築しており、今後も伸ばす。

 これまで輸出の部署は豪州・欧州チーム、ASEAN・北米チームという二つに分けていたが、ASEAN向け強化の一環として今期(2019年8月期)からはASEANと北米を分離し、3チーム体制とした。

〈ベトナムで高い評価/中高級品生産で強み/スミテックス・インターナショナル〉

 長年、ベトナムでのアパレル生産に注力してきたスミテックス・インターナショナル。住友商事グループが最初にベトナムに縫製ラインを作って、今年で25年目を迎えた。スミテックス・インターナショナルでは現地法人のスミテックス・ベトナム(SVL)を軸にこの生産ラインの管理運営を行い、より一層の効率化や人材確保、既存拠点以外の地域での生産ライン開拓など、さらなる拡大、強化に取り組んでいる。

 現在、ホーチミンを拠点とするサミット・ガーメント・サイゴン(SGS)には同社専用の縫製ラインが26ライン稼働しており、主にカジュアル製品の縫製を行っている。元々メンズ製品中心の生産ラインだったが、現在はレディース製品も含めアイテムが広がったことで、季節要因による繁閑差がなくなり稼働が平準化。一年を通じて順調な稼働を見せている。他方、カジュアルパンツの縫製を主力とするダナンのサミット・ガーメント・ホイアン(SGH)では九つの生産ラインが稼働している。

 今やベトナムはチャイナ・プラス・ワンとして、アジアのアパレル生産の重要拠点となっているが同社の場合、一般的なチャイナ・プラス・ワンという位置付けにはない。25年前から日本の技術と品質管理を導入し、日本基準のモノ作りができる工場として成長してきた。生産される製品も日本向けの中高級品が主力であり、ありがちなボリューム商品ではない。

 近年、ASEANでの縫製ニーズはますます高まり、特にボリューム商品だけでなく、中級品以上のものも求められる。この中で同社のベトナム生産は高い評価を得て、工場はフル稼働状態にある。ユーザーの要望によって直貿にも対応。

 ただ、ベトナムも人件費の高騰など、難しい問題も顕在化してきている。同社は課題として①生産効率の向上②人材の確保③SGHのライン増強と他地域での生産模索――などを挙げる。特にここ数年は経済の発展とともに、人件費のアップはもとより、一部では人材の確保そのものも難しくなってきている。このため、合理化設備の導入など、生産効率を上げるための取り組みを強化。SGSではピーク時の36ラインから10ライン減少も、生産力能力は落ちていないという。人材確保のため、労働環境の充実にも注力している。さらに生産力の増強を図るべくSGHの生産ラインの増強や、ベトナムでの他の地域での生産ライン確保なども視野に入れている。