メーカー別 繊維ニュース

特集 アジアの繊維産業Ⅰ(9)/シキボウ/適材適所の生産体制構築

2018年10月04日(Thu曜日) 午前11時48分

〈国内外拠点の連携強化へ/海外売り上げ拡大に注力/上席執行役員繊維部門長 加藤 守 氏〉

 シキボウは繊維事業の業績拡大に向けて今期から国内外の生産拠点の連携を強める。国内工場とインドネシアの紡織加工子会社メルテックス、ベトナムの協力工場、そしてシキボウグループの新内外綿の繊維商社J.P.ボスコ、それぞれの製造・販売での連携を密にして相互の強みを発揮し、適材適所の生産体制を構築する。

  ――中国の生産体制の現状について。

 中国にはニット縫製の上海敷紡服飾、寝装品縫製の上海敷島家用紡織、寝装プリントの湖州敷島福紡織品があります。これまで中国での人件費の上昇などでニット縫製の収益性が低下していたためベトナムへの生産移管を進め、2年前に再編を完了しました。現在、中国の自家工場は規模を縮小し、小ロット生産やサンプル生産を中心に行っています。量産はベトナムと中国の協力工場に切り替え収益性の向上に取り組んでいます。

  ――国内、ベトナム、インドネシアの現状は。

 今期に入って、原糸販売事業の収益改善の一環で富山工場から海外への生産移管を進めました。富山工場は最小化し、中量産と難度の高い商材の生産や新たな素材の試験生産を担います。

 ベトナムは現地の紡績会社に技術指導をしながら特殊な紡績糸を生産しており、綿100%を中心とした付加価値の高い糸の量産を担っています。糸の生産品種も年々増えてきました。国内生産の細番手糸や昨年撤退したタイシキボウの差別化糸の生産もできるようにします。編み立て・染色・縫製の協力工場を活用し、糸段階から差別化したポロシャツ、Tシャツなどのニット製品OEMもできます。

 一方、インドネシアのメルテックスの主力はポリエステル綿混、CVC(綿混率50%以上)素材(糸・織物・加工布)で、売上高の大半は日本向けです。前期に現地の人件費高騰対策として希望退職を募り、5%の人員削減を進め600人体制にしました。

 今期から糸売りを強める方針です。低価格競争になりがちなポリエステル・綿混素材で、最も当社が強みとする紡績段階で価値を付けてアピールします。内販に関しては現地の低価格品との競争や為替環境で難しい状況ですが、撚糸機や加工による高付加価値化で違いを出して拡販を狙います。

 ポリエステル・綿混糸、CVC糸をメインに糸構造、原綿のブレンド方法などで価値を付けた素材の製造もできるようになっています。こうした素材の一つが綿70%・ポリエステル30%混の2層構造糸「ツーエース」でポリエステル短繊維を綿で包み込む構造で肌触りが綿に近く、吸水速乾性があるユニフォームで実績が豊富です。

 新たな売り先の開拓を狙って、この糸のバリエーションを増やしており国内や現地でのリネン用タオルやシーツへの提案も進めます。白衣・作業着を主販路とする双糸の生産・販売を増強します。今期に入って20台のダブルツイスターを導入し生産力を高めています。日本国内で堅調な伸びが続くユニフォーム市場へ供給拡大を見込んでおり、洗濯耐久性、生地強度の向上といった双糸のメリットをアピールしていきます。

  ――長期的なアジアの生産戦略は。

 今年に入って「原糸販売プロジェクトチーム」を発足しました。各拠点の責任者が定期的に集まって国内、ベトナム、インドネシア、タイにある拠点ごとの生産・販売状況、意見交換を行っています。ターゲットとする市場に各拠点の強みが最大限に発揮できる適材適所の供給体制の構築を目指します。

 タイのグループ繊維商社に寄せられた商材のニーズにベトナムの協力工場で作ることで対応したり、ベトナムで必要とする商材をインドネシアで手当てしたりすることで、これまで各拠点単独では対応できなかった需要にも応えられるようにします。こうした体制の実現により国内販売に加え、日系以外も含めた海外での売り上げを増やします。

〈メルテックス/シキボウ江南と連動強化〉

 メルテックスは紡織編加工を手掛けるシキボウ江南(愛知県江南市)との連携を強める。素材のロス削減と作業の効率アップが狙い。

 メルテックスの売上高の7割ほどを占める日本向けでは、以前からシキボウ江南が大口供給先になっていたが、受発注の状況、生産体制、国内の売れ行きなどの情報をこれまでより綿密に共有し合うことでさらに連動性を高める。顧客ごとに違う生地幅・ロット、機械に最適な素材の供給量など細部まで情報を交換することでロスをなくし、作業効率を大幅に高める。

 メルテックスの尾崎友寿社長は、今年3月までシキボウ江南の社長を務めており、両工場で生産するユニフォーム、シャツ、寝装用途といった織物の営業部署を指揮した経験もある。そのため江南の生産設備だけでなく供給先の要望にも明るい。

 尾崎社長は「(江南に)どういう顧客がいて、それぞれの売り先が欲しがる生地の幅、江南の機械に最適な糸の量も把握している」とし、「江南が欲しがる素材をタイムリーにしかも使いやすい幅や量で供給することで、グループ同士でしかできない無駄のない最適な供給体制を目指す」と話す。

〈トーブ既製品に素材供給〉

 中東の民族衣装、トーブの既製品へ素材の供給を始める。これまで中東向けはメルテックスの生機を日本で価値を高めて中東へ輸出するルートが主力だが、新たに既製品用途の生地をインドネシアから販売することで、不振の中東民族衣装ビジネスをてこ入れする。

 日系商社と組んで今年中にもメルテックス製の生地を第三国で縫製しサウジアラビアやドバイで売り出す。シキボウの日本加工のトーブ地は品質の高さから中東で長らく最高級クラスの位置付けにある。パッケージの「マーメイド」マークは高級ブランドの証しとして認知度が高く、このマークを既製品にも付けてブランド力を生かす。トーブ既製品市場の中でもワンランク上の商品として売り込む。