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2018秋季総合特集Ⅱ(13)/top interview クラレトレーディング/複合的になる環境変化/社長 村井 研三 氏/日・中・ベトナムの3極を活用

2018年10月30日(Tue曜日) 午後3時17分

 繊維産業を取り巻く環境変化が激しくなる中、クラレトレーディングの村井研三社長は「変化はチャンス。そのスピードに乗り遅れないことが重要」と指摘する。特に環境配慮など重要なテーマへの対応に力を入れる。日本、中国、ベトナムの3極でのモノ作りを強化し、引き続き糸・テキスタイルから縫製品までの一貫型ビジネスの拡大を目指す。

  ――今後の繊維産業にとって大きなインパクトを与える要素は何でしょうか。

 繊維産業はこれまでもさまざまな変化に直面してきました。しかし、現在注目されているIT、環境、地政学リスクなどいずれも、かつてと比べて非常に変化のスピードが速くなっている。そしてグローバル化によって変化が複合的に影響を及ぼし合うようになっています。これが従来と全く異なります。一方で“変化はチャンス”でもありますから、そのスピードに遅れずに対応することが重要。自社の立ち位置を見極め、どこにアドバンテージを見いだすか。当社であればメーカー系商社としてのプレゼンスを発揮することです。消費者の価値観も変化していますから、どこに商機を見いだすのかという判断も重要になります。

 そうした中、やはり今後の大きなテーマになるのは“環境”でしょう。地球温暖化による異常気象や海洋プラスチック汚染などが問題になっています。環境負荷の低い商品だけでなく、生産プロセスでの環境負荷を減らす努力が求められます。例えば当社には低温可染ポリエステル「ピュアス」がありますが、これは染色加工のエネルギー消費を削減することができます。リサイクル関連では使用済み繊維製品を燃料などにケミカルリサイクルする「エコトーク」システムへの注目も高まってくるのでは。新規水溶性繊維「ミントバール」の販売が拡大しているのも同様の理由でしょう。無撚糸の製造工程で使用されるケースが多いですが、通常の水溶性ビニロンと比較して廃水処理の環境負荷を減らすことができるからです。

 こうした商品やサービスは従来、コストが普及のハードルとなっていました。しかし今後は変わってくるでしょう。欧米のメガブランドや国内の大企業向けユニフォームなどで具体的な動きが既に出ています。ですから、当社の素材でも、これからはさまざまな方向で活用が期待できるはずです。

  ――2018年度(1~12月)も終盤です。

 第3四半期(1~9月)までは全体として増収増益基調で推移しました。当社は化学品関連が売上高の65%を占めますが、これがアジア市場を中心に好調です。ただ、最近の米中貿易摩擦の影響で、今後に関しては不透明感が出てきました。

 一方、繊維はほぼ前年度並みで推移しています。特にスポーツ分野は好調でした。学販体育衣料が堅調ですし、スポーツやアウトドアの専業アパレル向けの販売も伸びています。ユニフォーム分野は前年度並みですが、縫製品までの一貫生産が拡大しました。一方、中東民族衣装用織物は市況悪化で苦戦。フォーマル素材も勢いがありません。

 ミントバールや帯静電防止繊維「クラカーボ」など独自素材の拡販にも力を入れてきました。目論見からは少し遅れていますが、徐々に成果が出ています。ミントバールは無撚糸生産工程での環境負荷が少ないことでインドなどでも販売が拡大していますし、デニムなど新しい用途もあります。クラカーボも米国でユーザーと取り組んでいます。

  ――19年度に向けた課題は何でしょうか。

 一つは、引き続き、独自素材の拡販です。そして、ベトナムでの縫製拡大。現在、縫製品生産の70%がベトナム、25%が中国、5%が日本です。分野別ではスポーツ、ユニフォームの10%がベトナムでの縫製です。これを20~30%まで高める。そのためにベトナムでの縫製能力も拡大させます。テキスタイルの現地生産も拡大します。汎用原糸は海外調達しながら、差別化糸は日本から持ち込むなど組み合わせで最適な体制を作らなければなりません。日本、中国、ベトナムの3極での生産を最適な形で組み合わせることで原糸・テキスタイルから縫製品までの一貫型ビジネスを拡大することが目標です。

 新規事業の創出も今期から始まった中期経営計画の大きなテーマです。例えばウエアラブル関連の開発や事業化ですが、これは自社単独では難しい。やはりスポーツアパレルやベンチャー企業などと連携することも必要です。EC(電子商取引)など流通構造の変化に対応したビジネスの創出にも取り組まなければなりません。その場合、素材だけでなく最終製品までやる必要が出てくるでしょう。それに対してどのように取り組むかを検討することも大きなテーマになります。どちらも、メーカーにしかできないことをやるという考え方が重要になるはずです。

〈私のお気に入り/鮮魚、酒、ゴルフを楽しむ伊勢志摩巡り〉

 三重県出身の村井さん。現在も伊勢に村井家の墓があることから、墓参りに合わせて家族らと伊勢志摩巡りをよくするそうだ。「伊勢神宮を参拝し、夜は地元の鮮魚を楽しむ。最近は三重の地酒『作(ざく)』も有名になってきた」。そして楽しいのがゴルフ。「伊勢は景観の素晴らしいゴルフコースが多い」。地元の友人たちとプレーを満喫。三重を離れてからお気に入りの場所はいろいろとできるけれども、「やはり故郷は、いいね」と懐かしそうに笑う。

〔略歴〕

(むらい・けんぞう) 1975年クラレ入社。2002年クラレトレーディング衣料カンパニー東京ファッション部長、05年衣料カンパニー副カンパニー長、06年生活資材カンパニー長、10年取締役、12年常務衣料・クラベラ事業部長、14年専務繊維事業統括。15年から社長。