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2018秋季総合特集Ⅱ(18)/top interview カケンテストセンター/事業転換必要な時代に/理事長 長尾 梅太郎 氏/中国国際輸入博にも出展

2018年10月30日(Tue曜日) 午後3時20分

 「検査機関は過当競争の時代にある」とカケンテストセンター(カケン)の長尾梅太郎理事長。「カケンは1970年に検査業務から試験へ。海外進出も新しいビジネスモデルとして掲げていた」。試験業務が売上高の半分になったのは6年後、海外進出には18年かかった。「事業転換には時間が必要だが、検査機関は今、同じように事業転換が必要になっている」と見る。

  ――環境変化が著しい中、検査機関としてどのような事象に関心がありますか。

 一つは日本の人口減少です。これは全ての産業にとって需要減を意味します。30年先を考えると、生産年齢人口は2~3割減り、企業数も380万社から230万社へと4割減が予想されています。所得減があるかもしれない。海外需要は増加しますから、これにどう対応するかが課題となります。

 二つ目は米中の貿易摩擦問題。これによりサプライチェーンの生産拠点の移動があれば、検査機関も対応が必要になります。

  ――厳しい未来図ですね。

 ただ、歴史を調べてみると、先人はそうした変化に常に対応し、生き残りを図ってきました。カケンの場合も、東京五輪のあった1964年当時は大きな転換期を迎えつつあった。68年にカケンを含め4検査機関が米国の試験機関を視察するため、渡米しました。当時は強制検査中心でしたが、合繊輸出が急速に落ち込んでいったことが背景にあります。検査業務が過当競争に陥っており、新たな事業を模索していました。

 渡米して分かったことは、「検査から依頼試験への転換」でした。70年のカケンの試験業務は全体の9%でしたが、試験を中心にしたビジネスモデルへの転換を進め、76年には50%を超える規模に成長しました。現在の試験中心のビジネスモデルはこの時期に確立されたともいえます。

 中国が鄧小平の「南巡講和」で市場経済を加速したのが92年です。90年代は繊維企業の中国進出が加速しました。カケンが上海科懇検験服務を設立したのは94年。拠点も縫製産地のシフトに合わせて、中国各地に拡大し、さらにチャイナ・プラス・ワンとして東南アジアにも広げることで、ここまで生き抜いてこられたわけです。

  ――まさに変化への対応の歴史ですね。この上半期(2018年4~9月)の状況は。

 厳しかったですね。昨年度は3年続いた減収がプラスに転じました。国内、海外とも良かったのですが、今年度は国内が前年並みを維持していますが、海外は減収を見込んでいます。これは一部顧客の試験依頼が減ると、ある程度予想していたことですが。インドネシアやベトナムは順調ですが、中国がまだら模様です。南通、青島、無錫は増収ながら、上海、大連、寧波は伸び悩みました。

 ――国内は。

 機能性試験は8%近く増えました。しかし、最近は新しい機能を打ち出す商品が少なく、試験依頼も鈍る傾向があります。それでも新しい取り組みを開始しています。

  ――というと。

 一つはマイクロプラスチック問題です。日本化学繊維協会と、生地からマイクロプラスチックがどれくらい発生するか、合繊くずの定量試験方法を開発しているところです。昨年度始めました。

 衣料以外の試験も進めています。東京五輪開催に向けて、国内唯一の国際陸上競技連盟(IAAF)認定試験機関となり、9月から陸上競技場に敷設された舗装材の試験を行っています。試験項目は舗装材の外観確認、平坦性、厚さ、衝撃吸収、垂直変位、滑り抵抗など。国際ホッケー連盟、日本ホッケー協会の認定を受け、人工芝の試験を行ってきた実績が評価されたものです。

 大阪事業所の重量法による物質の吸放湿特性を自動的に測定する装置「CTC+」も開発には2年ほどかかりました。試験も時代に合わせて進化させていかなければ。

  ――下半期はどのような取り組みを。

 11月に上海で開かれる「第1回中国国際輸入博覧会」にカケンとして出展します。カケンの事業活動を紹介します。上海では消臭試験も開始しており、SEKマーク試験の実施も視野に入れています。国内ではラベル業者へのケアラベルのデータ連携サービスを行っていますが、これを中国の内販向けでも本格展開していきます。

  ――人材育成も重要です。

 4月から人事制度改革を行い、運用段階に入りました。パフォーマンス評価指標を検討しており、各部門や事業、個人にも広げていきます。また、海外での仕事に挑戦したい人には、海外のチャレンジ制度も始めます。グローバルな人材の育成も重要です。意識改革として70周年記念誌も10月末に発行。仕事の仕方改革では外部コンサルの活用も検討中で、組織の意識改革を進めていきます。

〈私のお気に入り/赴任先で求めたもの〉

 「お気に入りは赴任した地で買ったさまざまな物。数十年愛用している」と長尾さん。日本では徳島県の藍染の作務衣。冬の必需品になっている。通産省(現経産省)時代に関わった著名デザイナー亀倉雄作氏がデザインした「89デザインイヤー」のポスターも残してある。日中経済協会北京事務所長時代では、兵馬俑のレプリカを土産に買い、今も玄関脇に置いてあると言う。理事長室にも北京で購入した中国工芸品の七宝の額を飾る。集めた物には仕事で関わった人との思い出があるのかもしれない。

〔略歴〕

(ながお・うめたろう)1974年4月通商産業省入省。92年6月日中経済協会北京事務所長、2001年8月環境事業団理事、2007年7月東京工業品取引所専務理事に就任。12年6月からカケンテストセンター理事長。