メーカー別 繊維ニュース

特集 環境新書(2)/有力繊維企業/環境への取り組み

2018年12月07日(Fri曜日) 午後3時21分

〈「サステナビリティ・ビジョン」を策定/「ウルトラスエード」でもエコ拡充/東レ〉

 東レは環境関連分野を成長市場に位置付けた全社的な取り組み、グリーンイノベーション事業拡大(GR)プロジェクトを推進している。

 今年7月には「東レグループ サステナビリティ・ビジョン」を策定し、2030年に向けた数値目標、50年に向けた取り組みを盛り込んだ。

 省エネ、新エネルギー、バイオマス、水処理、空気清浄、環境低負荷、リサイクルという七つの切り口で同事業と取り組んでおり、繊維部門は省エネ、バイオマス、空気清浄、環境低負荷、リサイクルで各種素材・製品を展開している。

 例えば、大手SPA経由の販売が好調な「ヒートテック」。吸湿発熱効果によって、室内の暖房温度を1℃下げられるという。

 春夏シーズン向けの冷感・清涼素材、染色しないで済む原着糸、染色温度を下げられる常温カチオン可染糸なども省エネ素材の範疇(はんちゅう)に含まれる。

 マイクロプラスチック問題が関心を集めるのに伴い、東レは「リサイクルが改めて注目されつつある」としており、引き合いを集めつつあるリサイクルでの取り組みを充実させる。

 スポーツ系のメガブランドだけでなく、これまでは価格優先だったカジュアル系の顧客からも「エコ素材が欲しい」との声が寄せられるようになってきたという。

 短繊維が中心だったペットボトル再生ポリエステル「エコユース」の品種拡大を進める一方、「ウルトラスエードBX」を開発するなど、人工スエード事業でもサステイナブル(持続可能)な素材開発を強化し、ユーザーからの要望に応えていく。

 原料を植物由来100%で商品化する“バイオポリエステル”では、スポーツや自動車資材用途でテキスタイルによるプレマーケティングが始まっている。

〈「ティレニーナ」打ち出す/環境へのスタンス見つめ直す/クラレ〉

 クラレはクラリーノ事業で、環境負荷を低減した製造方法で生産する人工皮革「ティレニーナ」の販売拡大に力を入れている。

 操業当初はなかなか稼働率が上がらず苦しんでいたというが、環境問題への関心が高まってくるにつれて、「ここに来て注目を集めるようになってきている」と言う。

 クラレは年産250万平方メートル体制でティレニーナを生産しており、中期経営計画の最終2020年度で設備をフル操業させる。

 クラレは新規に開発した生産システム・CATS(クラリーノ・アドバンスド・テクノロジー・システム)でティレニーナを生産する。

 製造工程で有機系溶剤を使わないため、揮発性有機化合物の発生を大幅に削減できるとともに、製造工程の短縮化によって排水量、CO2発生量を従来品よりも70%削減できる環境フレンドリーな物性がティレニーナの特徴。

 レジ袋やストローのような石油製品の使用を回避する動きが強まる一方、森林伐採を伴う大規模綿作について否定的見解が示されるなど最近、何が環境にいいのかについてさまざまな見方、考え方が出てきている。

 これらを踏まえ、クラレは「当社として、環境に関わっていく立ち位置を再度、整理したい」との認識を示す。

 これまでは有機系溶剤を使わないプロセスで生産することをティレニーナの売りにしてきたが、「無溶剤だけでは不充分」との見方だ。

 このため、大きな潮流を形成しつつあるとする「リサイクルの要素をクラリーノ事業に取り入れながら、環境にかかわる当社としてのスタンスを確立する」とともに、リサイクル以外の環境フレンドリーな技術の導入にも意欲を示している。

〈環境配慮素材の評価高まる/「ベンベルグ」「ラムース」「ロイカ」で/旭化成〉

 旭化成はSDGsやESGを事業ポリシーとして積極的に取り入れている。中でも繊維事業本部はキュプラ繊維「ベンベルグ」、人工皮革「ラムース」、スパンデックス「ロイカ」など独自性のある素材を強みとするが、いずれも世界的に環境配慮型素材としての評価が高まってきた。

 同社はこのほど、キュプラ繊維の商標を欧州などでも「ベンベルグ」に統一し、提案を強化した。その一つが日本、欧州、アジアのコンバーター・染工場などパートナー企業と共同開発した革新フィブリル加工「ベルティーン・エヴォ」。加工プロセスを改良することで加工時の環境負荷を大幅に低減することにも成功した。

 イタリアの環境関連認証機関であるICEAから従来加工との比較で温室効果ガス排出量16・5%減、エネルギー消費量21%減、電力消費量20・5%減、蒸気使用量15・9%減、水使用量19・5%減など具体的な評価も得た。ベンベルグをコンポスタブル(堆肥化可能)な生分解性素材としても打ち出しを強める。こちらも認証機関による評価を得ている。

 ラムースは自動車内装材で採用が拡大しているが、特に欧州では環境配慮型人工皮革としての評価が高まる。早くから原料に再生ポリエステルや水系ウレタンを使用していることが評価されている。

 ロイカでも独自の取り組みが進む。スパンデックスは環境負荷を抑えるのが難しい素材と考えられがちだが、同社では生産工程で発生する不使用糸などを再処理して生産する「ロイカEF」を開発している。ポリウレタン弾性糸としては世界で唯一、GSR認証を取得した。

〈多様な商品でSDGs達成へ/「エコプロ2018」に出展/東洋紡グループ〉

 東洋紡グループは「環境、ヘルスケア、高機能で社会に貢献する価値を創り続けるカテゴリー・リーダー」を理念に、国際社会共通の課題の解決に貢献することを目指している。このため国連が提唱する「持続的な開発目標(SDGs)」を事業運営や商品開発・提案に組み込む取り組みを進めた。

 SDGsへの取り組みを打ち出すために、6日から8日まで東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催される「エコプロ2018」に出展する。今回展では「人にも地球にも優しい技術『EE。技術』」をテーマにフィルム、スペシャリティケミカル、機能材、繊維・商事、機能膜・環境の各本部がSDGs達成に貢献する具体的なソリューションを積極的に提案する。

 東洋紡STCと日本エクスラン工業を中心とする繊維・商事本部は、環境配慮型のファーをエコファーとして打ち出す。機能材本部は火力発電所などの排ガスのバグフィルターなどで使用され、耐熱・耐薬品性に優れるポリフェニレンサルファイド(PPS)繊維「プロコン」や、ポリエステルエラストマーによる3次元構造クッション材「ブレスエアー」などを紹介する。

 フィルム本部は原料の一部を植物由来とすることで石化資源の使用削減に貢献するプラスチックフィルム「バイオプラーナ」や、100%バイオ原料によるポリエチレンフラノエート(PEF)フィルムを打ち出す。スペシャリティケミカル本部はバイオマス高融点ポリアミドのエンジニアリングプラスチック「バイロアミド」を紹介する。こちらも機能性とバイオマス原料による環境負荷低減が特徴となる。

 機能膜・環境本部は水処理で実績のある逆浸透膜エレメント「ホロセップ」やVOC(揮発性有機化合物)回収装置など紹介する。

〈ここにきて注目浴びる/PLAで体制拡充を検討/ユニチカ〉

 ユニチカは植物由来のポリ乳酸(PLA)を原料とするバイオマス素材「テラマック」を繊維、不織布、樹脂で展開している。

 ユニチカによると、環境をテーマとする愛知万博が開催された2005年から「テラマック」の販売量は右肩上がりへと転じた。

 その後、リーマン・ショックに見舞われた2008年にピークを記録して以降、しばらくは右肩下がりを続け、最近までは目立った動きがなかったという。

 しかし、今年の5月、欧州委員会が使い捨てのプラスチック製品10アイテムの使用を欧州連合(EU)全域で禁止する法案の提案を発表する。

 この影響で、「夏頃からテラマックが改めて注目を浴びるようになってきた」と言い、ユニチカは下半期以降、具体的な試作にとりかかれる案件が滑り出すと見通している。

 ユニチカはPLAを導入した日本のメーカーの先駆けとして、これまで繊維で浴用タオル、ティーバッグ、3Dプリンター用フィラメントなどを、不織布でヘッドレストカバー、防草シート、手提げ袋、軟弱地盤安定材(写真)などを、樹脂で自動車部品、電子機器部品、食器――といった多くの用途を開拓してきた。

 「実際、この10年くらいは大きな動きがなかった。しかし、ここに来て先を走り過ぎていたわれわれに世の中の方が追いついてきた感じがする」との手応えを示しており、今後は組織の拡充を含むテラマックでの取り組みを強化・拡大するタイミングを迎えているようだ。

 ユニチカは商品開発や販売促進、広報宣伝などの全てにわたって「改めて仕掛け直す」としており、環境という追い風をエンジンに再び拡大戦略へと転換しようとしている。

〈PVDF膜製品が伸長/膜集積率や洗浄性が評価/三菱ケミカルアクア・ソリューションズ〉

 三菱ケミカルアクア・ソリューションズ(東京都品川区)は、膜分離活性汚泥法(MBR)向けにPVDF膜モジュール製品を展開している。省スペースや高度な処理水が得られるといった特徴を持っており、海外を中心に販売が伸びているほか、国内も堅調。2018年は前年を上回る水準で推移している。

 沈殿槽が不要のMBRは、標準活性汚泥法(CAS)の3分の1から2分の1のスペースで済むことなどから世界中の下排水処理設備で採用が増えている。同社のPVDF膜モジュール製品は繊維技術と高分子コントロール技術が融合されており、高い膜集積率やばっ気洗浄性を誇る。

 MBRの世界市場は、年率5~7%で成長していると推定されるが、同社のPVDF膜モジュール製品の販売は市場の伸び率を上回る。国内では、中食の広がりによって食品工場からの引き合いが活発化しているという。海外では中国の需要が旺盛で、農業集落排水用と産業排水用がともに順調な動きを見せている。

 中国は、数年は良好な状況が続くと予想し、引き続き重点を置く。環境規制の影響や半導体工場の増加などから高くても性能の良い商品が欲しいというニーズが拡大しており、好機と捉えている。そのほかでは旧東欧諸国やロシアなどでも販売実績を重ねている。インド市場にも期待する。「早い段階でマーケットを開拓したい」とし、現地に担当者を置いた。

 PVDF膜モジュール製品以外では、二酸化炭素を濃縮する膜(ガス分離膜)製品の開拓を進める。炭素税(温室効果ガスの排出を抑えるための税金)を導入している国もあり、潜在需要は大きいとみている。発電所や工場への提案が主体となり、早い段階での事業化を目指す。

〈「シンク・エコ」起点に/7カテゴリーで環境貢献/帝人フロンティア〉

 環境活動指針「THINK ECO(シンク・エコ)」を掲げている帝人フロンティア。同指針では①リサイクルの推進②バイオ由来原料の使用③省エネ貢献型製品④環境汚染物質排出低減――など七つのカテゴリーを設け、環境に配慮したビジネスを進めている。

 リサイクルの推進では、使用済みペットボトルや繊維廃棄物の再利用によって二酸化炭素削減や社会全体の資源効率の向上を図る。バイオ由来原料の活用でも二酸化炭素削減を推し進めるほか、化石燃料の消費抑制に資する。省エネ貢献型製品ではエネルギー効率向上に寄与する。

 環境汚染物質排出低減では、空気や水に関するフィルトレーションに加え、マイクロプラスチック問題にも視線を注ぐ。そのほかではフッ素フリーなど有害化学物質使用低減、第三者認証を取得したオーガニックコットンの活用、気候変動への適応の取り組みなどをカテゴライズしている。

 具体的な展開を見ると、ポリトリメチレン・テレフタレート(PTT)繊維「ソロテックス」などでバイオ由来原料を使用している。そのほか、天然繊維複合の場合、一般的なポリエステルと比べて低い温度と圧力で染められる。「快適性を高めることで長く着用でき、廃棄物抑制にもつながる」と話す。フェアトレードコットンとの複合も進める。

 産業資材用途では、ポリエステルナノファイバー「ナノフロント」使用のバグフィルターなどを展開。低圧力損失、長寿命化、ランニングコスト低減が可能になる。水処理フィルターでもカートリッジ提案を進めている。

 衣料繊維(ソロテックスなど)と産業資材(フィルターなど)は国内だけでなく、世界市場で積極展開を行っている。

〈再資源化と高付加価値両立/「ループラス」が本格始動/クラボウ〉

 クラボウはこれまで、工場からの廃棄物削減・再資源化を進めるゼロエミッション活動に力を入れてきた。そうした取り組みで培ったノウハウを生かしてスタートしたのが裁断くずなどを原料に再資源化し、繊維製品へと再生する「ループラス」。いよいよ取り組みが本格化しつつある。

 これまで自社工場内での廃棄物再資源化に取り組んできた同社だが、テキスタイルメーカーとして生地の販売先で発生する廃棄物も再資源化できないかという思いがループラスの出発点。繊維のリサイクルは原料組成と色が多様なことがハードルとなるが、自社が販売した生地なら事前に原料組成も色も管理できる。これを生かし、まずは綿100%品から取り組みをスタートさせた。

 既にループラスの取り組みに参加する販売先企業も現れた。裁断くずを原料に再生し、カットソーにする取り組みが進む。そのほかにも参加に向けて声を上げる企業もある。裁断くずの発生量の計算などができるソフトウエアも開発しており、パートナー企業に提供することで企画・生産管理面からの支援にも取り組む。ループラスが目指すネットワーク構築が進む。

 ループラスは「“もったいない”からうまれた“もっといい”」というコンセプトが示すように、再資源化と高付加価値なモノ作りの両立を目指すところにも特徴がある。再資源化された原料が生み出す「ユニーク」、新たな用途・アイテムに活用できる「ボーダレス」、そして身近な繊維製品から環境配慮を実践する「サステイナブル」といった価値を創造することを目指す。

 クラボウは現在、SDGs(持続的な開発目標)を事業戦略に組み込むことにも積極的に取り組む。ループラスの取り組みは、その一つの具体化と位置付けている。

〈環境配慮と機能性を融合/独自の原料・加工で実現/ダイワボウノイ〉

 ダイワボウノイは、環境負荷低減などに貢献する商品や加工を総合提案する「エコフレンド」プロジェクトを推進するなど、早くから環境や安心・安全に焦点を当てた素材開発と提案を実行してきた。独自性のある原料や加工を活用する“ファイバー戦略”とも合わせ、サステイナビリティ―(持続可能性)と機能性を融合したモノ作りと提案に取り組む。

 エコフレンド商品の中でも特にヒットしたのが防汚加工の綿100%生地「エコリリース」と、同じく防汚加工のポリエステル・綿混生地「ミラクルリリース」。いずれも素材の親水性を高めることで汚れが落ちやすいのが特徴。洗濯時の洗剤使用量を低減でき、すすぎでの水使用量も減らすことができる。インナーやシャツのほか、寝装でも採用が多い。

 原料でも独自性を発揮する。綿のほかにグループ会社である王子ファイバーの紙糸「OJO+」や、ダイワボウノイとして製造販売する紙糸「KAMIの糸」をラインアップする。撚糸は特許技術である水撚りにより均整度が高い紙糸ができる。テキスタイルにすると毛羽が少なく、クリアな表面感とハリ・コシのある風合いで接触冷感性、吸放湿性も持つ。

 繊維以外でも、同社が開発した羽毛洗浄材は環境保全に貢献する機能材。特に環境規制が強化されている中国では、この洗浄材により羽毛の精製加工時の水使用量を削減できる。

 天然原料の活用と加工技術を組み合わせることで、環境と機能性が融合した開発に力を入れる。これにより同社の機能素材開発は、サステイナビリティ―戦略に組み込むことを目指す。そのために加工剤も繊維製品の安全性に関する国際認証である「エコテックス規格」を取得しているものだけを採用するなど、生産・加工プロセスの持続性にも徹底的にこだわる。