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シリーズ事業戦略(6)/富士紡ホールディングス/社長 中野 光雄 氏/繊維で利益体質を作る/国内縫製は受託生産も重視

2019年02月27日(Wed曜日) 午前11時55分

 「繊維事業も高収益な体質を作らなければならない。そうでないと、これからは人材の確保もままならず、事業継続が難しくなる」――富士紡ホールディングスの中野光雄社長はこう強調する。そのために特にインナーブランド「BVD」などアパレル製品事業は流通構造の変化に対応した販路改革やEC(電子商取引)拡大に取り組む。需要減退が続く国内縫製も稼働率向上に向けて受託生産の拡大を重視する。

  ――2018年度(19年3月期)もあとわずかです。繊維事業の商況をどのように見ていますか。

 17年までに不採算分野の整理や在庫圧縮など構造改革が完了し、財務体質も非常に良くなったことから、18年度は反転攻勢を目指す年でした。しかし、結果的には繊維事業全体として非常に厳しい環境となりました。要因は幾つかありますが、特に大きかったのが取引先企業の事業戦略の変化です。BVDを中心としたアパレル製品事業は従来、GMS(総合小売業)を主力販路としてきました。ところが近年、GMSはプライベートブランド中心にシフトし、さらに衣料品売り場自体を縮小しています。この傾向は百貨店も同様です。この影響が顕在化してきました。売り場縮小で売上高拡大が非常に難しくなっています。

 一方、糸・生地については原料価格が高止まりしていることに加え、染料・薬剤価格の高騰などの影響を受けました。何とか価格転嫁を進めたとたんに、再び原料が上昇して採算が圧迫されることの繰り返しになっています。

  ――今後の対応策は。

 これまで以上にコストに関してシビアに考えることが必要です。例えばアパレル製品事業は売り場の規模縮小で1店舗当たりの販売量が非常に小口化しています。これへの対応で経費増となり、ますます採算が悪化するケースがあります。こうなると、やはりある程度は大口の売り場への集約を進める必要があります。その代わりに小口需要に対しては電話受注やECによる販売を拡大することが必要でしょう。実際にECでの販売が拡大しており、いまやBVDを中心としたインナー製品の売上高に占めるECの割合は10%程度までになりました。もちろん、さらなる拡大のためにはECに適した商品企画力の強化が欠かせません。

 収益性を高めるためには在庫を極少化する必要があります。ポイントになるのは物流システムの強化です。理想は“ジャストインタイム”。それに少しでも近づけるように投資もします。そして、需要見通しに基づく生産もポイントです。繊維業界ではあいかわらず景気や天候まかせ、あるいは競合の動きに合わせただけの需要予測に止まるケースが少なくありません。もっと厳密にデータを活用し、予想の精度を高める必要があります。それこそAI(人工知能)の活用などが必要になるでしょう。

  ――生産面での取り組みも必要になる。

 インナー製品は現在、国内、中国、タイで縫製していますが、稼働が最も厳しいのが国内の縫製子会社です。どこまで国内縫製を維持するのか考えなければなりませんが、やはり現在のような量販品中心の生産では難しいでしょう。そこでグループ会社であるアングルの百貨店向け商品のうち、外注生産しているものを内製化するのが一つの方法。もう一つは受託生産の強化です。受託生産は利益率こそ低いが、その代わりに確実に利益を確保でき、工場の稼働率を維持することができます。もちろん、受託生産も利益構成の分析が雑だとすぐに赤字になります。ですから工場と営業が一体となって厳密な分析を行った上で受注することが重要になります。

  ――糸・生地についてはいかがですか。

 国内での紡績やテキスタイル生産・加工は既に量を追い掛けることでは成り立たなくなっています。そこで重要になるのが“ローカル発想”です。国内の産地と一体となって高付加価値な商品へ特化することです。これは既にフジボウテキスタイルで紡績の大分工場、染色加工の和歌山工場それぞれが考えながら動いています。例えば和歌山工場は和歌山ニット産地と連携し、産地ブランドなどの取り組みに参画しています。

  ――利益重視の姿勢が一段と強まりました。

 「繊維といえば低採算」と思われがちですが、実は高収益な商品や事業もあるというイメージをもっと作り上げなければなりません。そうでなければ人材も集まらなくなり、本当に日本の繊維産業はなくなってしまいます。だからこそ利益が出る商品に特化することが重要です。たとえ規模が縮小しても確かな利益体質を確立し、設備投資とその償却が可能な用途や商品に取り組むことが不可欠になります。そうやって中身を転換すれば、繊維もサステイナブル(持続可能)な事業となり得るはずです。