「リテール20/20フォーラム東京」から(後)

2019年03月12日(火曜日)

デザイナーの皆川明氏/生産者と消費者に喜びを与えたい

 外国人記者の興味を集めたのが、婦人服「ミナ・ペルホネン」を手掛ける皆川明デザイナーの話だった。冷静で論理的にプレゼンする姿は、学者や哲学者を想起させるもので、ブランドの考え方や展望についても明確なビジョンを発信している。皆川氏は「デザイナーの志向から(職人の)労働、物質化とつながることがとても不思議だ」と語る。

 デザイナーのクリエーションが、最終的に顧客の「幸福感」に結び付く。それこそがブランドの本質と説く。「消費者が物質(衣服)を買うことは、デザイナーの志向・意思を買っていることと同じ。ファッションは目まぐるしくトレンドが移り変わるものだが、時代を超えるデザイン、その価値をもっと長くすることに注力している」と自身の考え方を披露した。

 絵画や彫刻などアートの分野は、付加価値を長い間維持している。簡単には比較できないものの、「ファッションも長い期間売っていくことも必要なのでは。テキスタイルの開発に3年かかることもある。パーマネント(半永久的)な展開方法があってもいい」と言う。

 同氏は生産者についても言及。「生産者や職人の満足度を高めながら、消費者に衣服を届けたい。私は糸から加工、縫製まで、パートナー工場の稼働状況を把握している。偏りのない稼働を目指し、さらに工場の得意分野を探りながら新たな生産の可能性を提案している」と語る。

 ミナ・ペルホネンは創業から18年目を迎えたが、直営店でセールをしたことがないと言う。大量生産・大量廃棄のビジネスモデルに疑問を持ち、生産プロセスそのものを見直した。「在庫商品はアーカイブとして販売するほか、先行予約会で需給バランスを把握することもある。とにかく商品を余らせない」と強調した。

 米国人記者から雇用について質問が及ぶと、「直営店では85歳の女性が店頭に立っている。会社としては100歳まで雇用する考えで、基本的な定年制度がない。先輩方の経験は非常に貴重で、接客方法も見ていて素晴らしい」と笑顔で話した。

 希少でこだわりの強いテキスタイルを使用した服は、店頭で永続的に販売。永続商品の展開で工場も安定的に稼働できるので、「いい関係が築ける。今後も生産者と消費者に喜びを与えたい」とまとめた。

(おわり)