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不織布新書19春(8)/東レ ウルトラスエード/グローバルにブランド戦略加速

2019年03月20日(Wed曜日) 午後4時11分

 ファッションだけでなく自動車や航空機の内装、ソファなどのインテリア、モバイル機器のアクセサリーといった幅広いフィールドで活躍する東レのスエード調人工皮革「ウルトラスエード」。超極細繊維によるしっとりとした風合い、独特の高質感が他の追随を許さない先端材料として独自のポジションを構築してきた。最近は環境配慮型の新素材を相次いでラインアップし、新しいゾーンへもその用途を広げようとしている。川田昌史ウルトラスエード事業部長に事業の中期的な戦略を聞いた。

〈「ウルトラスエード PX」YUIMA NAKAZATOとコラボ〉

 東レはYUIMA NAKAZATOとのコラボを通じ2018年2月に、東京ミッドタウンで「YUIMA NAKAZATO Exhibition―HARMONIZE―」を開催した。

 エキシビションでは、同年1月22日にパリ・オートクチュール・ファッションウィークでYUIMA NAKAZATOが発表した最新コレクション、独自に開発した革新的な衣服の生産システム、東レの環境配慮型の人工皮革「ウルトラスエード PX」による新プロダクトを紹介した。

 東レはウルトラスエード事業の中で、ファッションを開発の重要分野と位置付けている。売上高に占める割合は、自動車やコンシューマーエレクトニクス(CE)などの分野に比べて高くは無いが、最先端のニーズを探索でき、商品のレベルアップに生かせるためと言う。さらにブランド戦略への影響も大きい。ファッション分野で、デザイナーから寄せられるさまざまな要望に応えることで、「ウルトラスエード」は進化してきた。今後も、ファッション分野を起点として、さらなる拡大を目指す。

〈マツダがアテンザに採用/自動車分野などで展開が加速〉

 東レの「ウルトラスエード nu」が昨年、「マツダ アテンザ」の上級車種「エル パッケージ」のインストルメントパネル、ドアパネルに採用された。「ウルトラスエード nu」が車輛内装材として採用されるのは、これが世界で初めてのケースである。

 「ウルトラスエード nu」は、銀面調の光沢とスエードタッチを両立した素材として2015年に開発された。これまではファッション用途を中心に展開してきたが、自動車用途に求められる物性を付与することに成功し、採用に至った。ファッションで求められる外観や質感をベースにしながら、高い機能性を付与することで、用途展開を加速させている。

 「ウルトラスエード」は用途を多様化し、各分野で求められる感性や機能性を融合させることで、ラインナップを拡げてきた。昨今では、高級ヘッドホンの外装やモバイル機器のアクセサリー、さらにインテリア用途や航空機内装用途など幅広い分野に採用が広がっている。

〈ウルトラスエード事業部長 川田 昌史 氏/サステイナブル志向強め/高級車市場に攻勢〉

 ――間もなく2018年度が終わろうとしています。

 18年度上半期は全体が好調に推移したため、前年度よりも売上高を7~8%伸ばすことができました。下半期に入って多少、上半期の勢いは、鈍化していますが、全体の流れは大きく変わっていません。

 ――19年度に向けた方針は。

 現在、年産1千万平方メートル体制への増設を進めています。増設分をしっかり売り切っていくために、自動車を中心に販促を強化していて、良い感触が得られています。ウルトラスエード事業をけん引してきた自動車とコンシューマーエレクトロニクス(CE)が好調で、この先も今の調子を維持できそうです。当社の強みは自動車、CE、ファッション、インテリア、シューズ・雑貨といった広範な領域をカバーしているところにあります。

 ――ファッションでの取り組みをどう位置付けていますか。

 ファッション業界からは常にレベルの高い最先端の素材を求められています。当社は欧州をはじめとしたトップブランドへのアプローチを重視しており、ここで採用されることが「ウルトラスエード」のブランドイメージの向上につながります。その結果、日本や米国、中国などのファッション市場へも良いイメージが波及していくことが期待できます。さらに、ファッションだけでなく、自動車やCE、インテリアでも「ウルトラスエード」を使ってみようという機運が広がっていくような、そういうブランド戦略に今後も力を入れていきます。

 ――中国や欧州で自動車販売の伸びが鈍化しています。

 われわれのターゲットはあくまで高級車の市場です。一部の車種で伸びが鈍化しているとはいえ、高級車は今後も伸びていくとみています。かつては採用部位がカーシート中心でしたが、多様な物性を持つ品種を幅広く開発することで天井やドアパネル、インパネなどへの採用が広がっていますので、需要拡大は今後も進むと考えています。

 ――この間、環境配慮型の素材群を充実させてきました。

 ポリエステルとポリウレタンの原料を部分的にバイオ化した新素材「ウルトラスエード BX」の販売を19年1月からスタートさせました。2月の「プルミエール・ヴィジョン」に出展し、欧州のお客さまから高い評価を受けました。BXはスエード調人工皮革として世界で初めてバイオ原料比率30%を達成した素材です。ポリエステルを部分バイオ化した「ウルトラスエード PX」と合わせて早期に、全体を環境配慮型素材に切り替えていく方針です。

〈「ファッション・スマート・クリエーション・プライズ」/PVがサステイナブル評価〉

 リサイクル原料を使用した「ウルトラスエード nu」が18年9月に開かれた世界最高峰のファッション素材見本市「プルミエール・ヴィジョン」(PV)で、この年、初めて設けられた「ファッション・スマート・クリエーション・プライズ2018」を受賞した。

 製造工程で発生したフィルム屑(くず)をポリマーリサイクルしたポリエステルを使用したタイプで、クリエーションとサステイナビリティー(持続可能性)を高度に両立させた素材として評価された。

 リサイクルの他にもバイオ原料を使用したタイプとして、ポリエステル原料に植物由来成分を使った「ウルトラスエード PX」と、ポリエステルに加えポリウレタンの原料にも植物由来成分を使用した「ウルトラスエード BX」など、環境配慮型の商品群拡大に取り組んできた。質感や機能性は通常の「ウルトラスエード」と同等であることから、今後は環境配慮型素材としての特長を訴求してさらなる拡大を目指す。

〈産学連携/デザイナー志望の学生支援〉

 東レは、「ウルトラスエード」を通じて、若手デザイナーの支援活動に取り組んでいる。

 国内では、文化ファッション大学院大学、多摩美術大学、中国では、中国初の国立美術教育機関として設立された中央美術学院、さらに英国では、ロンドン芸術大学などで、ファッション、インテリア、家具、車両のデザインを学ぶ学生に対して、ウルトラスエードの素材特徴を紹介する授業や、素材提供を行っている。

 ウルトラスエードの独特の質感・風合いに加え、加工性の良さ、耐久性、エコといった特徴が好評で、卒業制作等にウルトラスエードが使用される事例が増えてきている。

 若手デザイナーを発掘・インキュベートするイベントなどへの素材提供他、支援も行っている。こうした活動を通じて、デザイナー育成を支援している。