メーカー別 繊維ニュース

特集 尾州産地総合(6)/尾州産地けん引する有力企業

2019年03月27日(Wed曜日) 午後2時28分

〈西川毛織/新規開拓やオーダー強化〉

 紳士服地製造の西川毛織(名古屋市中区)は2019年11月期の第1四半期を増収と見込んでいる。ただ、暖冬の影響で店頭販売の不振などもあり、通期では厳しくなると予想する。そのため、今まで以上に新規開拓やオーダー向けの強化に力を入れる。

 前期の業績は4%の増収を果たした。特にレディース向けの商品がけん引、中でもキャリア層向けの梳毛ボトム地などが好調だった。近年はレディース向けへの提案に力を入れており、売上高の比率はメンズ向け8割、レディース向け2割となっている。

 会社の10年後を見据え、今後は人材の増員を図る。現状は若い世代が不足しており、20~40代の企画や営業の強化を進める。尾州産地では職人の高齢化により外注の機業で廃業が進行していることも危惧しており、人員を拡充することで機動性を高めることも目的。

 サステイナビリティー(持続可能性)への取り組みも強めている。昨年から、ウールを使った生地を購入すると途上国に井戸建設の資金を寄付できる「ホープ×ウールファブリックプロジェクト」を始めた。

 生地はウールの混率を問わず、1反からでも購入できるため、気軽に支援に役立つことが可能。これまでサステイナビリティーの展開となると、原材料などコストが負担になることが多かった。

〈宮田毛織工業/工業としてできるエコを〉

 丸編み地製造大手の宮田毛織工業(愛知県一宮市)は、自社工場を保有する強みを生かして高品質なニットの生地を生産する。その生地は日本国内だけでなく、海外の著名ブランドにも販売している。

 自社工場には丸編み機を140台以上保有しており、他社にはないゲージや改造した設備などもあり、クイックな対応や差別化商品といった生産背景を備える。定期的に最新鋭の機種に更新するなど設備投資も積極的に進めている。

 近年では「環境と未来を考える企業へ」というテーマを掲げ、サステイナビリティー(持続可能性)への提案に力を入れている。さまざまな展示会に出展する際にはサステイナビリティーを全面に押し出し、幅広い商品を訴求する。

 再生ポリエステルやノンミュールジングウールなどに加え、持続可能な綿花栽培を推進する「ベター・コットン・イニシアチブ」対応の綿などをそろえる。最近では原料からの提案だけでなく“工業としてできるエコ”も推進する。

 その一つがかせ染めの伴染工(同)とコラボした取り組み。染色後の糸の乾燥を機械から天日干しに変えることで、どれだけエネルギーを削減できたかが一目で分かるようにする。原料に依存するのではなく、生産工程で省エネや環境配慮をした商品として打ち出す。

〈日本エース/顧客からの信頼度高める〉

 豊島グループで婦人服地製造の日本エース(愛知県一宮市)は、糸の備蓄を強みにしつつ、価格や納期などの対応力を持つ。「コンビニエンスな生産者になる」(小島幹人社長)ことで、顧客との信頼度を高めている。

 現在の商況は紡毛コート地が圧倒的に多いが、総量としては昨年より若干落ち込んでいる。2月からは織布や染色スペースが混み始めているという。18秋冬の店頭不振が響くとみて、6月以降のリピートの受注は多くないと予想する。

 そのためにも既存顧客とのパイプをより太くするとともに、強みとする秋冬向けの分野をより強化する方針を掲げる。昨年は秋冬向けの生産に追われたため春夏向けの取り組みは遅れたが、今後は企画の開発を進める。

 2月に発効した日EU・EPA(経済連携協定)については、「国内調達は必ず残ると思うので、そこで当社として何ができるか、何を打ち出せるかが大事になる」と語る。さまざまなニーズに対応できることをアピールし、顧客からの信頼度を高める。

 同社は尾州を軸に泉州や北陸など全国の産地に生産拠点を持ち、それぞれの産地の強みや特徴を生かして生地を生産する。素材もウールだけでなく、合繊との複合素材など多彩な生地をそろえる。主力は婦人向けで、一部メンズ向けも手掛ける。

〈中伝毛織/海外での知名度向上へ〉

 婦人服地製造の中伝毛織(愛知県一宮市)は、製織から染色整理までの一貫した生産体制を敷く。自社工場には織機や編み機を保有し、ハイゾーンからボリュームゾーンまでの生地を生産する。近年は海外の新進デザイナーとの協業を進めており、会社の知名度向上を図っている。

 織機は76台保有し、カラミ織りや織りネームなどができるように独自にカスタマイズする。定期的に更新もしており、積極的に設備投資を行う。編み機は39台で最近、新たな設備も導入。コンピューター横編み機も保有する。グループ会社に染色整理企業もあることで、企画の開発やそのスピードにもたけている。

 海外デザイナーとの協業では、海外でショーを開く際に同社の生地を提供する。今年で3年目を迎えた取り組みだが、着実に成果も表れ始めている。国内デザイナーともコラボしており、原料段階から密接に取り組み発注は年々増加。電子商取引(EC)の発展により、デザイナーが実店舗を持たなくても売りやすい環境にあることが奏功している。

 秋冬向けとして、モデリストの長谷川彰良氏とコラボしたコートを発売する。同社が作ったウール100%の高密度ギャバジンを使い、昔のイギリス軍バイク部隊が着用していたストームコートを再現。前端と裾をボタンで留められズボンのようにもなる。

〈鈴憲毛織/さまざまな企業とコラボ〉

 婦人服地製造の鈴憲毛織(愛知県一宮市)はウールを中心とした天然繊維に加え、ポリエステルなど合繊との複合素材を含めた企画力に定評がある。これらを生かし、近年はさまざまな企業とのコラボを展開している。昨年10月には生地のネット販売も始めた。

 19秋冬向けに展開する「ブルガリアハイランドウール」と浅野撚糸(岐阜県安八町)の特殊撚糸「スーパーゼロ」製法と組み合わせた糸を経・緯に使った生地を開発した。膨らみ感が増し、羽織り物向けなどに提案。昨年は伝統工芸の「有松絞り」を手掛ける企業とコラボし、特徴的な凹凸感を表した生地を展開した。

 最終消費者の声を聞くため、通販サイト「尾州生地工房SKラボ」を昨年10月に立ち上げた。見本生地や在庫など約120アイテムを販売しており、リピーターも増えているという。特にカシミヤやアンゴラ、リネン素材の生地が好調。

 商況については、18秋冬向けが暖冬の影響により店頭での販売が不振のため、19秋冬向けの受注は減少するとみる。尾州の生産現場の規模縮小で生産スペースのタイト化が進んでいるため、早めの発注があったものの、5月の連休明け以降は不透明と言う。

 20春夏向けの企画ではポリエステル・レーヨン混やウールとの複合素材、トリアセテートなどを使った生地を提案する。

〈長谷川商店/糸から製品まで提案〉

 高級天然繊維を扱う長谷川商店(愛知県一宮市)は、シルクを中心にバリエーション豊かな糸を製造し備蓄販売する。ここ数年は糸だけでなく最終製品まで手掛けており、昨年からは製品提案をさらに強化するため単独展示会も開いている。

 シルクをメインにモヘア、ウール、綿などさまざまな原料で撚糸を製造。特にシルクは長繊維糸、絹紡糸、紬糸など多彩な種類をそろえ、単糸は100番手以上、双糸は200番手以上あり、カラーも豊富にラインアップする。

 2015年ごろから製品展開を本格的に始めており、島精機製作所の「ホールガーメント」横編み機や「SRY」横編み機なども導入。OEM/ODMを主軸とするが、今後は自社ブランドとして「ハセガワ」と銘打ち提案を進める。

 海外の展示会にも積極的に出展し、会社の知名度向上を図ってきた。イタリアの「ピッティ・フィラティ」展には15年前からほぼ毎年出展。その成果もあり、現在では欧州を中心に26カ国に販売し輸出比率は50%に達する。

 昨年9月に初の単独展示会「シルク+」を開催し多数の来場があった。今年も4月3~5日の日程で、東京都渋谷区の「クロマティックギャラリー」で開催する。今回は糸のラインアップを大幅に拡大し約400品番展示。さらに、セーターや靴下、ショールなどの製品も並べる。

〈ササキセルム/ER素材を進化〉

 婦人のボトム・スーツ素材を得意とするササキセルム(愛知県一宮市)の2018年12月期決算は、増収増益を確保した。首都圏の販売先強化に向けた新部署「TS部」(事務所・東京都中央区)の開設が功を奏し、販売単価は横ばいとなったものの、新規の販売先件数の増加に寄与。売上高を押し上げた。

 主力となる素材はストレッチ性を持たせたポリエステル・レーヨン混(ER)とウールなどの天然繊維を絡ませた複合素材。特にER素材は先染め織物を主力に糸、生機でも備蓄力を発揮し、顧客の要望に短納期でカスタマイズする。

 生産体制は1937年の創業以来、尾州で培われたモノ作りとそのノウハウを生かした中国生産の2拠点。特に中国生地は開発、生産管理、検品だけでなく、補修、修正まで同社の現地法人上海拷斯茉紡織が担う。高級生地を生産してきた尾州ならではの技術を駆使し、顧客に品質面での安心を提供する。

 今秋冬素材では尾州の加工技術を発揮させたトルコの特殊ポリエステル長繊維糸を尾州産地でER混紡糸と交織。ウールライクな合繊素材を提案する。ウール混素材では縦ER、緯紡毛糸の2ウエーストレッチ素材の格子柄を拡充し、さらに進化したER素材を訴求する。

〈ソトー/事業領域の拡大を〉

 ソトーはウールや綿などの天然繊維だけでなく、ポリエステルなど合繊使いの複合素材を含め、あらゆる素材への加工を得意とする。事業領域の拡大を掲げており、スポーツ・ユニフォーム向けで機能加工の開発を進めるほか、輸出にも力を入れる方針で、生産から販売までのグループ力を生かす。

 国内にある3工場の特徴を生かしてさまざまな素材への加工に対応するほか、子会社のソトージェイテック(岐阜県輪之内町)では製織と編み立てを手掛けており、モノ作りで連携を図る。テキスタイル販売子会社のJファブリック・インターナショナル(東京都渋谷区)は、スポットではなく顧客との取り組みによるビジネスを構築し輸出を強化する。

 昨年11月に東京で開かれたソトー総合展では、スポーツ、インナー、ユニフォーム向けに、機能加工を中心としたさまざまな商品をそろえた。「オフィスユニフォーム」「医療ユニフォーム」「アスレジャー」など9シーンに分けて提案した。

 各シーンで重点とする加工をメインに置いた。オフィスユニフォームではポリエステルを改質加工し、軽さや膨らみを付与する「Eエステ」、医療ユニフォームは環境配慮型のウオッシャブル加工「エア・フォース」、アスレジャーではポリエステルの吸水加工「Qスィート」を打ち出した。