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特集 アジアの繊維産業Ⅰ(8)/わが社のアジア戦略/シキボウ/国内外の拠点で連携強化/上席執行役員繊維部門長 加藤 守 氏

2019年03月28日(Thu曜日) 午後4時9分

〈インドネシアで付加価値糸/タイ市場で販売スタート〉

 シキボウは繊維事業の国内外の生産拠点の連携を強め業績拡大を図る。国内工場とインドネシアの紡織加工会社、メルテックス、ベトナムの協力工場、そしてシキボウグループの新内外綿の繊維商社J.P.ボスコ、それぞれの強みを生かす有機的な連携体制を模索する。国内のみならず、海外市場での販路開拓にも力を入れる。

  ――貴社のアジア戦略における中国の役割は。

 現在、中国には寝装品縫製の上海敷島家用紡織、寝装プリントの湖州敷島福紡織品があります。

 ニット縫製の上海敷紡服飾は、1996年に操業を始め、これまで日本の百貨店で売られるカジュアル衣料の縫製を担ってきました。しかし、百貨店の販売不振による受注減少や中国での人件費をはじめとするコスト上昇で業績回復のめどが立たないため、今年2月に解散を決めました。これに伴うニット縫製の量産体制は、中国の協力工場への切り替えや数年前から取り組んでいるベトナム生産で対応し、収益力の向上を目指します。

  ――国内、ベトナム、インドネシアの現状は。

 富山工場での原糸生産については、ベトナムの協力工場への移管を今期も進めました。成果は着実に出ています。ベトナム生産糸の販売比率が増え、富山生産品の採算が改善しています。富山工場は最小化し、中量産と難度の高い商材の生産や新素材の試験生産を担います。

 ベトナムは現地の紡績会社に技術指導をしながら特殊な紡績糸の量産拠点という役割を担います。綿100%を得意としています。日本からの生産移管により年々、生産できる品種が増えています。

 ニット縫製もベトナムが増えています。紡績から編み立て、染色、縫製と一貫して現地で行い、糸段階から差別化したポロシャツ、Tシャツなどを生産しています。スポーツ衣料用途に加え、ユニフォーム市場でも供給量が増えています。

  ――今期から国内と海外の生産拠点の連携を強めていますが、進捗(しんちょく)は。

 今年に入って「原糸販売プロジェクトチーム」を発足して、各拠点の責任者が定期的に集まって国内、ベトナム、インドネシア、タイにある拠点ごとの生産・販売状況、グローバルな生産戦略について意見交換を行っています。ターゲットとする市場に各拠点の強みが最大限に発揮できる適材適所の供給体制を構築します。

 インドネシアでは毎年最低賃金が8%台で上がるため、これまでメルテックスで生産してきた汎用糸の採算が悪化しています。そのため、汎用糸の生産を徐々に減らし、コストを抑えられるベトナムの協力工場から調達するよう切り替えを進めています。メルテックスでは汎用糸の代わりに、付加価値糸の増産に力を入れています。

 特に今期からポリエステル短繊維を綿で包み込む2層構造糸「ツーエース」の生産量を増やし、ダブルツイスターを増設して双糸にしたり、精紡交撚糸にしたりと生産の高度化を進めます。この糸を日本向けのユニフォーム市場に加え、成長市場であるホテルリネン分野のシーツやタオルなどにも提案し、販売量のかさ上げを狙います。

 さらにインドネシアの付加価値糸をタイ市場に売る新たな商流も具現化しつつあります。当社グループの新内外綿子会社、J.P.ボスコを通じてタイの日系企業や現地インナーアパレル向けでテスト販売したところ好感触を得ており、間もなく本格輸出が始まります。ゆくゆくはベトナムの差別化糸をタイで販売するという構想もあります。

〈メルテックス/2層構造糸「ツーエース」/販路開拓の“切り札”に〉

 インドネシアの紡織加工子会社、マーメイドテキスタイルインダストリーインドネシア(メルテックス、東ジャワ州モジョケルト県)は、ポリエステル・綿混の糸・生地を主力とし、日本を仕向地とした商材が売上高の7割程度を占める。ユニフォーム向け、中東民族衣装向け、寝装・リネン向けの順で販売量が多い。日本人約10人、現地従業員620人体制で生産する。

 今期(2019年12月期)は、糸売りを強化する。紡績を祖業とするシキボウグループとして最も強みを出せる糸で差別化し、他社ではできない付加価値を競争力にする。タイのインナーアパレルにメルテックス製差別化糸の提案を始めており、今期中にも実績となる見込み。

 メルテックスの高付加価値糸で新たな切り札となるのは綿・ポリエステル混の2層構造糸「ツーエース」。ポリエステル短繊維を綿で包み込む構造で肌触りが綿に近く、吸水速乾性がある。これまでワークウエア用途が多かったが、混率でバリエーションを増やしたり、双糸にしたり、精紡交撚を加えたりすることで新たな販路開拓に力を入れる。

 18年はダブルツイスターを増設してツーエースの双糸の増産体制を整えた。双糸にすることで生地の強度に加え洗濯耐性も高まるため、主販路であるユニフォーム用途のほかにも、ホテルで使われるタオルやシーツといったリネン商品にも商機が広がる。

 尾崎友寿社長は「紡績設備は富山工場並みになりつつあり、今年も更新を進める」と述べ「これまで中東向け生地輸出の不振で苦戦を強いられてきたが、今年は高付加価値素材の販売強化で反転攻勢に出たい」と話す。