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特集 アジアの繊維産業Ⅰ(10)/わが社のアジア戦略/富士紡ホールディングス 社長 中野 光雄 氏/日・中・タイで最適生産/自動化などで生産性高める

2019年03月28日(Thu曜日) 午後4時21分

 富士紡ホールディングスの繊維事業はインナーブランド「BVD」を中心にタイ、中国で生産基盤を強化してきた。中野光雄社長は「日本、中国、タイそれぞれの生産を最適化することで収益力を高めることが重要」と指摘する。そのため紡績設備の縮小と縫製能力の拡大、自動化投資などに取り組む。中野社長に繊維事業のアジア戦略のポイントを聞いた。併せてタイフジボウテキスタイル、ジンタナフジボウの現状と今後の方針を紹介する。

  ――海外事業の状況をどのように見ていますか。

 現在、タイで紡績と編み立て、縫製を行っていますが、特に紡績は市況が非常に厳しい。このため、タイフジボウテキスタイル(TFT)の紡績はこれまで2万錘体制だったものを1万4千錘に削減するなど、構造改革を実施しました。その一方でTFTは編み立てと縫製の能力を増強しています。同じく縫製のジンタナフジボウと合わせてタイでの縫製品生産能力を増強するためです。

  ――中国はいかがですか。

 富士紡〈常州〉服装と協力工場でインナー製品の縫製を行っていますが、こちらは従来通りの生産規模を維持しています。ただ、やはり中国での人件費上昇などから自家工場がコスト競争力の面でやや苦しくなっています。そこで協力工場の活用を強化することで生産を維持していく考えです。

  ――タイ、中国に日本を加えた3極での生産体制が整備されています。

 その中で、最も苦戦しているのは日本です。肌着など実用衣料では日本製というだけで評価されるわけではなくなってきました。このため国内工場の稼働率がなかなか上がってきません。海外での縫製を強化する一方で、国内の縫製をどこまで維持するのかというのは難しい課題です。一つ言えることは、従来のような量販品では国内生産を維持することはできないということです。そこでタイや中国でBVDなどの生産を拡大する一方で、国内工場はこれまで協力工場で縫製していたアングルの百貨店向け商品を内製化するという方法があります。受託生産で利益を確実に確保しながら稼働率を維持することも考えなければなりません。その場合、受託する商品の利益構成を厳密に分析することが不可欠です。

  ――タイや中国でも人件費の上昇などコストアップ要因が増えています。

 海外工場も自動化などへの投資がますます重要になります。それによって生産性を高め、確実に利益を確保できる体質を作ることが欠かせません。その上で、日本、中国、タイの各拠点での生産を最適化していくことになります。

〈ジンタナフジボウ/工場の“筋肉質化”を推進〉

 タイの縫製子会社であるジンタナフジボウは、インナーブランド「BVD」の主力工場として多能工化やロス削減などで工場としての“筋肉質化”に取り組む。そのための設備投資も積極的に実施した。

 同社の2018年度(12月期)は、販売好調で生産数量が拡大した17年度との比較では若干の減産となったが、総じて順調に推移した。特に「良いものを、より安く、タイムリーに供給する」という基本方針により品質管理の強化と効率的生産に取り組んでいる。18年度も省力化投資を実施。縫製工程の自動化はハードルも高いが、可能な範囲で設備投資を実施する。

 19年度は、さらなる工場の筋肉質化と収益力強化が課題。このため多能工化や無駄な動作の排除による作業速度向上、中間材の不良率低減などに取り組む。主力の紳士肌着に加えて婦人インナーの受注も増加していることから、これに対応するために従業員の熟練度向上に取り組む。1人当たりの生産性を高めることで前期並みの収益確保を目指す。

〈タイフジボウテキスタイル/縫製月産15万枚体制に〉

 タイの紡績・編み立て・縫製子会社であるタイフジボウテキスタイル(TFT)の縫製が順調に拡大している。2018年年度(12月期)は月産約15万枚体制となり、2017年に実施した縫製増設の成果が上がる。

 TFTは、富士紡グループのインナーブランド「BVD」向け原糸生産と編み立て・縫製を担う。現在、綿糸生産の60~70%がBVD用原糸、残りはフジボウテキスタイルへの供給と自販向け。編み立て・縫製は全てBVDなど富士紡グループのインナー製品向けとなる。

 17年度には構造改善を実施し、市況が低迷する紡績を縮小する一方、縫製能力の増強を進めた。18年度は縫製スタッフの育成などにも取り組んだことで、「ほぼ15万枚体制に近いところまで到達している」と岩國信利社長は話す。

 ただ、19年度に関して「受注環境は決して良くない」とみている。このため受注状況に合わせた生産対応力の強化に努める。多能工化を進めることで人員の効率的配置を可能にし、生産コストに占める固定費の影響を抑えることが目的となる。

 紡績では既に工程内での多能工化が進んだ。19年度は編み立てと縫製でも同様の取り組みを進める。縫製はミシンを扱う関係上、急激な多能工化は難しいが、「検品・品質管理など周辺工程から着手していく」と話す。こうした取り組みで生産性を高め、収益力の維持・強化を目指す。

 一方、紡績事業は自販の拡大が課題。現在、同社の原糸自販比率は5~10%程度だが、別注糸を中心に販売拡大を目指す。既に日本のアパレルに採用されるなど一部で成果が出ている。