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特集 アジアの繊維産業Ⅱ(2)/現地ルポ ベトナム/対日スペース確保が共通課題/現地製生地調達も進む

2019年03月29日(Fri曜日) 午後2時47分

 ベトナムの2018年の実質GDP成長率は7・1%だった。08年の世界経済危機以降10年間で最も高い成長を記録。同年の輸出は2434億ドル(前年比13・2%増)、輸入は2366億ドル(11・1%増)で、この結果、貿易収支は67億ドルと過去最高の黒字を記録し、3年連続の黒字となった。輸出先は構成比19・5%の米国が最も多く、同16・9%の中国が2位につけ、日本は同7・7%で3位だった(日本への輸出は前年比11・8%増)。輸出品目は電話器・同部品が構成比20・2%で首位となり、アパレル製品は同12・5%で2位だった。

 米中貿易摩擦を背景に、米国がベトナムからのアパレル製品輸入を大幅に増やしていることから、今後も米国向けを軸にベトナムのアパレル輸出拡大は続くとみられる。日本向けも増えているが、先行きは明るい話ばかりではない。同国の生地メーカーや縫製メーカーが、米中貿易摩擦の影響で拡大が確実視される米国向けと、今年中の自由貿易協定(FTA)発効が見込まれるEU向けを優先し、日本向けを嫌う傾向を強めている。日系商社の最大の関心事もここにある。

 目下、在ベトナム日系商社に共通する危惧は、縫製スペースの確保と現地製生地調達拡大の二つ。各社がノウハウや強みを発揮して対日縫製品のスペースを確保し、現地製生地比率の上昇にも成功しているが、先行きが安泰かと言えば、そうではない。ある日系商社の幹部は、「本社からは拡大ペースが遅いと叱られるが、ことはそう簡単ではない」と嘆く。同国の縫製品輸出は拡大一途だが、その販路は米国、あるいは欧州が軸であり、日本向けに関しては逆に、忌避の動きすら目立つ。

 日本のオーダーは、欧米と比べて小口が多く、納期要求も厳しい。日本市場のデフレを背景に工賃も低く抑えられる。それなのに品質には相当厳しい。こうした「要求の高さ」が現地工場を日本品から忌避させる要因。

 とはいえ、欧米向けの大ロットをこなせない中小の縫製工場や、品質にうるさい日本向けを請け負うことでレベルアップを図りたい工場は対日に目を向けている。米中貿易摩擦を背景に米国向けがさらに熱を帯びているが、そのおかげで「対日と対米の工場ですみ分けが進み、かえって(選別が)やりやすくなった」(スミテックス・ベトナム、トーレ・インターナショナル・ベトナム)といった声もある。三井物産アイ・ファッションなどのように専用ライン契約で“囲い込み”を進めるケースや、豊通ファッションエクスプレスのように、自社縫製工場を立ち上げる動きもある。対日縫製品のスペース確保という共通課題に向け、各社が試行錯誤している。

 納期短縮やコスト削減の実現に向け、現地での生地調達も進展する。日系生地メーカーがほとんど進出していないため、台湾系、韓国系、中国系生地メーカーとパイプを作ることが肝要だが、生地調達を主事業とする蝶理ベトナムやトーレ・インターナショナル・ベトナムを筆頭に、各商社がそれに成功しており、しばらくこの流れは続きそうだ。

〈自主販売拡大に本腰/ヤギ・ベトナム〉

 ヤギ・ベトナムは引き続き現地製生地比率の引き上げと、自主販売の強化に取り組む。

 縫製品OEM/ODMを主事業とする同社の課題の一つが、現地製生地の調達比率を引き上げること。3年前にはゼロだったが、2017年度には10%に、18年度は20%強にまで高まった。35%を当面の目標とし、いずれは50%まで引き上げる考え。この生地から縫製品までの一貫生産は現状スポーツウエア向けで先行。今後はカジュアルウエアにも広げていく。

 グループの生地商社、イチメンとの連携も重視。イチメンが20春夏向けからベトナムで生地の備蓄販売をスタートすることが決まっており、そことの連携を強めてシナジーを発揮する。

 対日縫製品の生産管理だけでなく、自主販売拡大も法人のテーマになる。現地日系企業向け生地販売、外資系含め同国内企業への生地、製品販売、同国電子商取引(EC)での製品販売などを既にスタート。いずれも進展を見せつつあり、将来の事業拡大に期待する。ミシンを法人事務所内に設置してサンプルを縫うなど“アトリエ化”にも取り組む。

〈生地調達が順調に拡大/トーレ・インターナショナル・ベトナム〉

 トーレ・インターナショナル・ベトナムは主要事業である同国での生地調達、販売を軌道に乗せている。実質的な初年度として臨んだ2019年3月期は、初期投資分が残るためわずかに赤字ながら、売り上げは計画を上振れする。

 ポリエステル長・短織物のシャツ地やパンツ地が同社の主力商品。ほぼ全量が同国製で、「現地でのコンバーティングが進んだ」ことが計画上振れに寄与した。法人設立以来、用途ごとに最適な生地メーカーを選定し、連携するという作業を繰り返した。現在も「探索」を続けている。

 東レインターナショナルの駐在員事務所で行う対日縫製品との連動も徐々に進展。今後も同事務所が現地での生地調達比率を高める方針を掲げる中で、その担い手の一社として生地供給力を引き上げていく。

 来期は2・5倍増収、黒字化を計画する。その達成のためにも取り組んでいくのが北部地域の開拓で、北部への拠点設置も検討する。織物で先行した同国の生地調達だが、今後は編み地のコンバーティングも本格化する。

〈一貫生産とスペース確保が鍵/スミテックス・ベトナム〉

 スミテックス・ベトナムは、生地から縫製品までの一貫オペレーション強化と縫製スペースの確保を重点方針に掲げる。

 2018年12月期の売上高は、25%増を果たした17年度をさらに10%上回った。増収の原動力になったのが生地からの一貫オペレーション。中国系、韓国系の現地生地メーカーとの取り組みを深耕し、これまでベトナムにはなかった生地の生産にも着手。高まる生地調達ニーズに応えた。

 この結果、生地の現地比率は量販店向けで5割を超え、百貨店向け、セレクトショップ向けを含めた全体で3割を超えた。今期はこれを5割にまで引き上げる構想。同時に独自の生地開発にも力を入れる。日本のカジュアル市場に定着した綿・ポリウレタン混やウール代替としてのポリエステル・レーヨン混などがその対象で、糸からの差別化も図りながら独自開発に注力する。

 縫製スペース確保では、南部、中部の協力工場で占有ラインを増やすことを計画。ミシンを購入して貸与するという手法もとり、受注増、安定供給につなげる。

〈モノ作り機能再強化/豊通ファッションエクスプレス〉

 豊通ファッションエクスプレス(TFE)はモノ作り機能を再強化する。その一環として100%出資で現地法人と縫製工場トヨタ・ツウショウ・ファッション・エクスプレス・ベトナム(TFEベトナム)を立ち上げた。4月にはホーチミン中心部に支店も開設する。

 同工場で縫製するのはツナギ服を中心としたユニフォームやパジャマ。現状は260人で年産40万枚だが、5年後には450人、80万枚体制に増強する計画を持つ。「受注拡大のめどはある」と言う。対日縫製品の強化拡大のほか、輸出、内販など販路開拓にも努める。

 自社工場を保有する目的は、モノ作り機能の再強化。協力工場“丸投げ”OEMの時代を経て「モノ作りの知見が弱まっていた」という危機感がある。自社工場で主体的にモノ作りに関わることで全体の機能を底上げし、それを協力工場にも波及させることで、モノ作りに精通する商社としての存在感を発揮していく。

〈現地製生地調達が進展/蝶理ベトナム〉

 2016年7月に、現地製生地の調達、供給を主要目的に設立された蝶理ベトナムでは、事業拡大が続いている。18年12月期は売り上げが前期比3倍増となり、17年12月には初期投資分として赤字が残っていたが、黒字転換も果たし、累積損失も一掃した。今期も売り上げ倍増を狙う。

 好決算には「(ベトナム製の)糸、生地の需要が高まっている」ことへの対応が寄与した。同社が販売する生地は全て同国製で、特に台湾資本のメーカーとの取り組みが順調に進展している。高まるニーズの中で生地調達の選択肢も狭まりつつあるが、「総じてうまくいっている」と言う。

 現状の販路は日本の大手SPAの同国縫製品向けが大半を占めるが、今後は「(生地生産の)サプライチェーンを生かして」他の販路開拓にも力を入れ、欧米向けなど輸出の可能性も探る。糸加工機の購入、貸与など設備投資も順次進める。

〈グループ連携を強化/モリリンベトナム〉

 モリリンベトナムの主要事業は対日縫製品OEMの生産管理とミシン糸販売で、売り上げもほぼ等分。法人立ち上げ8年目を迎えて両事業とも堅調に推移する。

 チャイナ・プラス・ワンの流れも追い風に対日縫製品OEMの取り扱いが急激に拡大している。今期(2019年12月期)も拡大計画で臨むが、その際に重視するのが、モリリンタイランドから糸を持ち込み、ベトナムで編み立て、縫製し、日本へというスキーム。グループ連携強化の一環だ。ベトナムで生産する吸水速乾のオリジナル糸ブランド「ミリオンドライ」も付加価値化の一環として提案を強める。

 ミシン糸販売は品種を現状の3品番から5品番に増強してニーズの取り込みを図り、今年央からはコスト低減と在庫圧縮を目的に、ベトナム内販をスタートする。競争は激化一途だが、「先行者としての安心感」を訴求する。同時に、自由貿易協定の発効を控える欧州向け拡大にも力を注ぐ。

〈現地工場と専用ライン契約/三井物産アイ・ファッション〉

 三井物産アイ・ファッション(MIF)は、同社スタッフを置く三井物産のベトナム法人を通じて、同国を活用した対日縫製品ビジネスの拡大に取り組んでいる。現地製生地の調達比率引き上げや、協力縫製工場との関係強化を図り、競争力向上につなげる。

 約20年前からスーツ、スポーツウエアを軸に同国で対日縫製品ビジネスを行ってきた。チャイナ・プラス・ワンも背景に近年も「安定した成長」を続けており、今後も伸ばす。

 米中関係の悪化やTPP11を背景に同国の縫製品生産と輸出は右肩上がり。この流れに対応するために同社が改めて力を注ぐのが、協力工場との関係強化。品質の安定化を実現するため、ある特定工場とは専用縫製ライン契約を結んだ。本社、現地法人が一体となって同工場の活用を進め、ニーズに応えていく。

 分野についてはカジュアルを重視。特にレディースに拡大余地があるとみる。

〈将来は現地製を10割に/清原ベトナム〉

 清原ベトナムの2018年12月期は、売上高が前期比1・6倍、営業総利益が1・7倍だった。2倍という計画には届かなかったものの、16年度からの本格営業開始以来、事業拡大が続く。

 中国からの縫製品生産シフトが続くベトナムだが、近年は「ベトナム国内で副資材も全てそろえたい」というニーズが高まっている。このニーズをつかむために法人を設立。思惑通り、「注文がどんどん増えている」。

 「まだ全ての副資材を国内で調達することは不可能」だが、協力工場の拡充や品質管理に努めており、品数も徐々に増える。売り上げの中で現地製は現状6割だが、将来的には10割近くまで引き上げる。

 今月、ハノイに支店を開設。北部地域の開拓を加速するほか、同国内でユニフォーム分野の開拓、人員の拡充、カジュアル分野の継続拡大などに取り組む。シャツ、ジャケットなどアイテムごとの見本帳も拡販ツールとして活用する。

〈街角/パクチーには要注意〉

 海外出張の楽しみの一つが現地の食事。ベトナムと言えばフォー。フォーと言えばベトナム。米粉でできたやや平たい麺を、牛や鳥からとった透明なスープと一緒に食べる。要するに、小麦を米に変えたラーメンである。過去3回のベトナム出張時、幾つかの店でフォーを食べた。うなるほどおいしいわけではないが、さっぱりと食べられるので重宝する。フォーの特徴は、パクチーなどの野菜類がたっぶり取れるヘルシーさにある。たいていは山盛りの野菜が別皿に添えられてくる。筆者はパクチーが大嫌い。たまに、別皿ではなく麺の上に盛られてくることがある。その時はもう、一口も食べられない。ベトナムでは、大量のバイクが行き交う道を渡る際と同じぐらい、パクチーの直盛りには注意が必要である。