ベトナム/インドとの繊維貿易に期待/AITIGAで綿糸など関税撤廃

2019年04月08日(Mon曜日) 午前11時57分

 インドとASEANの間で結ばれた物品貿易協定(AITIGA)が適用されることで、今年1月、インドから輸出される多くの糸や繊維に対し、ベトナムでは輸入関税が撤廃された。ともに繊維輸出大国だが、原料に強みを持つインドと縫製など加工に強みを持つベトナムの間では、貿易拡大に向けた期待が高まりつつある。

 世界の繊維・アパレル輸出7557億ドル(2017年実績、以下同)のうち、インドは374億ドルと約5%を占め、ベトナムの輸出額は329億ドルで4・4%を占める。中国の2585億ドル(34・2%)は別格としても、インドは世界2位、ベトナムは6位と、ともに繊維の「輸出大国」。

 両国の繊維関連の貿易は、ベトナムがインドから原材料を輸入し、他国へ輸出するという構図が鮮明となっている。インドの対ベトナム繊維輸出は4億2900万ドルで、繊維製品の輸入は1億7800万ドル。インド産の綿花の輸出額のうち39%はバングラデシュ向けで、ベトナムは18%とこれに次ぐ規模となる。インドの綿糸輸出は年間34億2400万ドルで、このうちベトナムには2・3%の8千万ドルほどが輸出されている。一方、インドの綿製品の輸出先として、ベトナムは上位15カ国・地域にも入っていない。

 インド綿製品輸出促進会議の共同ディレクター、シャイレシュ・マルティス氏は、「ベトナムは米国や欧州連合(EU)といった大市場向けの輸出が多く、東南アジアの繊維製造のハブになりつつあることから、インドにとって原材料の大きな輸出先となっている」と話す。

 ベトナム産「繊維・縫製品」の米国向け輸出額は、18年に137億ドル。前年比で11%以上拡大しており、米国のアパレル輸入の大部分をベトナム産が占める。ASEANと日本の自由貿易協定(FTA)や、ベトナムと韓国の2国間FTAは発効しており、EUとベトナムのFTAも発効間近だ。今年1月からはベトナムで環太平洋連携協定(CPTPP、TPP11)も発効している。これらのFTAを活用すれば、ベトナムは主要国への輸出がしやすい環境にある。

 近年の「チャイナ・プラス・ワン」に加え、18年はじめから続く米中の貿易摩擦の影響で、中国からベトナムへの生産移管が加速している。ある繊維業界関係者は「ベトナムはタイやインドネシアよりも人件費が安く、中国やミャンマー、カンボジアと比べて、政治的に安定している」とし、「総合的に見て、人件費がそれなりに安く、部材の調達もしやすいベトナムが周辺国の中では投資先として有利になる」と説明する。

 ベトナム側からのインドに対する期待も大きい。ホーチミン市繊維業界の幹部は、AITIGAが、高品質で安価なインド産の原材料や機械を確保できるチャンスになると期待感を表明している。

〈大手アパレルの動向が鍵に〉

 マルティス氏は「インド企業にとってベトナムは主要な輸出先で、現状ではインド企業がベトナムに大規模な工場を設立する計画は見当たらない」と現状を分析する。インド企業はエチオピアのような国では工場を設立しているが、今後にベトナムで同様の動きはあるのか。鍵となるのは、大手アパレルメーカーからの要請と言う。「仮にH&M(ヘネス・アンド・マウリッツ)のような大手企業がインド企業に対してベトナムでの拠点設立を要請すれば、インド企業は大きな投資をする可能性が高い」

 今年1月にAITIGAが適用されたことで、インド産の綿糸や綿製品に対する、大部分の輸入関税が撤廃となる。インドとベトナムの繊維・アパレル業界にとって期待は高いものの、インドからは積極的な売り込みが必要になる。マルティス氏は「AITIGAの効果だけではそれほど大きな需要は生まれない。インド企業はベトナム市場に積極的に売り込みをかけるべきだ」と指摘する。

〔NNA〕