メーカー別 繊維ニュース

2019春季総合特集Ⅱ(5)/top interview 旭化成/成長領域は産業の壁の先に/社長 社長執行役員 小堀 秀毅 氏/前中計はやり遂げた

2019年04月23日(Tue曜日) 午後4時29分

 2019年3月期が中期経営計画「シーズ・フォー・トゥモロー2018(CT2018)」の着地となった旭化成。計数目標は達成する見通しとなり、小堀秀毅社長兼社長執行役員は「基盤強化を含めて、計画していたことはおおむねやり遂げられた」と一定の評価を与える。今年度から新たな中期経営計画がスタートするが、米中の通商問題の余波などから事業環境は厳しくなる可能性があると気を引き締める。持続可能な社会への貢献と企業価値の持続的な向上の実現に向け、足を止めることなく前進を続ける。

  ――平成の30年間はどのような時代でしたか。

 東西冷戦が終わりを迎え、中国が市場経済化しました。その中国によるWTO(世界貿易機関)の加盟など、一気にグローバル化が進んだのが、この30年間だったのではないかと思います。「ウィンドウズ95」の発売に象徴されるように、インターネットの普及と高速化が進みました。これらが地球をかなり“小さく”したと感じています。

 特に目立ったのは、新興国の台頭です。アジアというエリアの存在感が極めて大きくなったと言えるのではないでしょうか。日本や米国、英国、フランス、ドイツ、イタリア、カナダの財務相や中央銀行総裁による会議だったG7が、現在ではG20に置き換わるなど、先進国の影が薄くなりました。

  ――繊維産業の30年間はいかがですか。

 こうした状況は繊維産業の30年間そのものとも言えます。まず中国を中心とした新興国の台頭があります。それに伴って欧米の大手企業が繊維事業からの撤退を余儀なくされるなど、主役の座を譲らざるを得なくなります。日本も同様で、汎用型繊維から高機能繊維へかじを切らなければなりませんでした。

  ――新時代を見据えた場合、課題は何になりますか。

 これからの10年、20年、30年を考えると、従来の産業構造の延長では成長領域は見えてきません。デジタルトランスフォーメーションの重要性が指摘されているように、IoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)、ビッグデータなどを駆使して新たなイノベーションを起こすことが不可欠です。成長領域は産業の壁を越えたところに誕生します。

 「産業」という枠にこだわっている限り、広がりは難しいと言い換えることもできます。特定の産業で培ってきたテクノロジーがあるならば、今後はそれを使ってどのように社会へ貢献するかということを考えていかなければならないでしょう。そうした動きができなければ、どの産業であっても厳しさが増すばかりだと思います。

  ――旭化成はCT2018が終了しました。この3年を振り返ると。

 成長と収益性の追求と、経営の基盤強化に力を入れましたが、為替が比較的安定していたほか、原燃料価格もおおむね想定の範囲で推移するなど、この3年間は事業環境に恵まれました。2018年3月期に初めて売上高2兆円超えを達成し、19年3月期は営業利益が2千億円を上回る見通しです。計数目標をクリアすることは評価しても良いと考えています。

 一方の基盤強化ですが、コンプライアンスの徹底や人材育成、デジタルトランスフォーメーションの実現に向けた取り組みを進めました。これらは今後も継続するべきものですが、ベースは固められました。課題を挙げるとするならば、新事業を見出すスピードが足りなかったことや厳しくなっている事業とのメリハリを強く持てなかったことでしょうか。

  ――19年度は新中計の初年度になります。

 比較的恵まれた環境だった前中計の3年間とは違って事業環境は少し厳しくなると予想しています。米国と中国の通商問題がグローバル化の流れに水を差す可能性があるためです。高い成長性を続けていた中国経済にも減速感があります。ただし、中国は依然としてポテンシャルを持っており、引き続き重要視しています。米国も欧州も同様です。これからはグローバルという視点を持ちながら、「地域対応」を意識しないといけません。その意味では投資戦略が難しくなっています。

 当社は、中期展望として25年度に売上高3兆円と営業利益2800億円という数字を描いていますが、営業利益率は10%以上に高めたいですね。実現するには、世の中の変化が進む中で、われわれの中身もしっかりと変え、旭化成グループがどのような価値を提供してどのように社会に貢献するかを示す必要があります。

 そうした意味合いからも新中計では、サステイナビリティー(持続可能性)がキーワードになると考えています。「旭化成グループとして持続可能な社会に寄与し、貢献する」「旭化成グループの企業価値を持続的に向上する」。この二つにしっかりと取り組みたい。

  ――4月1日付で組織を改編しました。

 繊維事業本部と高機能ポリマー事業本部、消費財事業本部を統合し、パフォーマンスプロダクツ事業本部としました。繊維が持つ編織・染色のファイバーテクノロジーは極めて重要なものであると位置付けており、今回の組織改編はファイバーテクノロジーに磨きをかけることはもちろんですが、そこにこれまでにはなかった違うモノを組み合わせることでイノベーションを起こすことが狙いです。

 繊維に携わる人間は他領域のテクノロジーに触れる機会を持てます。他領域で仕事をしてきた人間にも同じことが言えます。市場の変化も高いところから眺められるようになるでしょう。大きなくくりだからこそ生まれるものは多く、今後の成長に期待しています。

〈平成の思い出/テクノロジーの変化知る〉

 「平成の30年間は仕事一筋だったので反省している。働き方改革をもっと早くやればよかった」と笑う小堀さん。長く携わったのはエレクトロニクス関連で、家庭用ビデオカメラの普及、携帯電話の浸透など、テクノロジーの変化を間近に見てきた。一番驚いたのは「携帯電話にカメラが搭載されたこと」で、「新時代に突入した」と感じ、客先を含めて、事業戦略を見直した。平成はテクノロジーに向かい合う企業が生き残ってきたが、これからは売り方を変化させることも必要になると予想する。

〔略歴〕

こぼり・ひでき 1978年旭化成工業(現旭化成)入社。2010年旭化成エレクトロニクス代表取締役社長兼社長執行役員、12年旭化成取締役兼常務執行役員、14年旭化成代表取締役兼専務執行役員、16年4月1日付で旭化成代表取締役社長兼社長執行役員。