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2019春季総合特集Ⅳ(3)/top interview 豊島/早い変化への対応が鍵/社長 豊島 半七 氏/やるべきことを迅速に

2019年04月25日(Thu曜日) 午後2時26分

 「平成の30年間以上に、令和の時代は変化のスピードが早くなる」と豊島の豊島半七社長はみる。しかも、その変化の度合いも激しく、先を読むのが「より難しさを増す」と語る。その中で課題に掲げる素材発信力・調達力の強化による主力商材のシェアアップ、産業資材・合繊分野と海外販売の商流拡大、OEM/ODMの進化など「やるべきことに、迅速に取り組むことが重要」と強調。これらの課題解決をさらに加速させながら、急速な変化への対応力を高めていく。

  ――平成の30年間は、繊維産業にとって、どんな時代だったと思いますか。

 山あり、谷ありの30年でしたが、事業環境は年々、特に直近はより厳しくなっていると感じています。顧客の商況も刻一刻と変化し、ファッションテックの登場で流通構造が短絡化し、グローバルでの距離感も短くなり、変化のスピードが早い。半年先でさえ、どのように変化しているのかを捉えることが難しくなっています。

  ――それを踏まえ、令和時代の繊維産業はどのように変わるのでしょうか。

 さらに変化のスピードが早くなるでしょうし、その変化も激しく、先を読むのはより難しくなっています。対応を間違えると、その変化に追い付くには相当の時間がかかってしまいます。

  ――さて、2019年6月期の業績見通しはいかがですか。

 厳しさが増しています。ただ、これは事業環境の問題ではなく、当社の問題です。やるべきことができていない。

 今期は①素材発信力・調達力の強化による主力商材のシェアアップ②産業資材・合繊分野と海外販売の商流拡大③OEM/ODMの進化④CVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル・ファンド)とM&Aの加速による新商材やIT活用によるマーケット開拓――を課題に取り組んできましたが、いずれも遅れています。

 産業資材・合繊分野の商流拡大については分母が大きくないこともあって、他の課題に比べて相対的には進んでいますが、計画通りとは言えません。不織布も含めた産業資材用合繊は年々進化しています。国内外含めて、まだまだ開拓の余地はありますが、のんびりと構えていては伸びません。さらにスピードアップを図ります。

  ――CVCを通じた投資についてはいかがですか。

 ITベンチャーへの投資により、取引先のIT化や電子商取引(EC)に関連した課題解決を支援する一方で、ケミカルリサイクルの日本環境設計(東京都千代田区)、スマートアパレル開発のXenoma(東京都大田区)、インドネシア最大級のVIP PLAZAインターナショナルなどへの事業投資を行っていますが、顧客支援への投資は新しい案件もあります。

 事業投資は既存部分をいかに軌道に乗せるかが課題です。日本環境設計によるケミカルリサイクルでは一部商売がスタートしています。

  ――昨今はエコロジーやサステイナビリティー(持続可能性)の重要性が高まっています。日本環境設計もその流れに合致していますね。

 特に欧州のファッションアパレルや欧米のスポーツアパレルがエコロジー、サステイナビリティーを重視していますが、当社は30年前から環境に配慮した再生セルロース繊維「テンセル」を手掛け、オーガニックコットン「オーガビッツ」も15~16年の歴史があります。

 さらに、廃棄食材を染料として活用するテキスタイルブランド「フードテキスタイル」も5年近い。その面では早くから環境商材を展開しており、これに日本環境設計が加わった形です。エコロジーやサステイナビリティーへの対応には自信を持っていますし、当社の企業姿勢でもあります。

  ――CSRの観点も重要性が高まっています。

 当社は健康経営の普及促進に向けて、経済産業省と日本健康会議が共同で実施する「健康経営優良法人2019~ホワイト500~」に2年連続で認定されました。年々ハードルが高くなるため、全ての企業が連続で認定されるわけではありません。

 今後も従業員一人一人が健康を維持し、その能力を十分に発揮できる制度を拡充するとともに、経営理念である「時代から求められる企業であり続ける」ために心身ともに健康で、活気に満ちて働くことができる職場づくりを推進していきます。

  ――来期の事業環境についてどのようにみますか。

 環境は一段と厳しくなるとみています。特に衣料品市況は秋の消費増税の影響も懸念されます。ただ、当社の基本的な方針に変わりはありません。やるべきことに、迅速に取り組むことが重要ですので、今期に掲げた課題をさらに加速させていきます。

  ――衣料品の中でもファッション衣料は一段と厳しくなりそうですね。

 消費者におけるファッション衣料の優先順位が下がっていますので、業界を挙げて振興に取り組んでいくことが重要ではないでしょうか。それに対して当社もサポートはしていきます。やはり、ファッションが楽しいと思わせないと、ますます縮小し実用衣料の着回しだけになってしまいます。

  ――需要振興ではオーストリア・レンチングとテンセルの消費者向け共同プロモーションキャンペーンも展開していますね。そのテンセルの長繊維「テンセル リュクス」についてはいかがですか。

 好評ですが、今は高価格でもあるため、欧米メゾン向けなどを地道に開拓していきたいと考えています。

〈平成の思い出/3年連続の天皇誕生日一般参賀〉

 「12月23日」。豊島さんは平成27、28、29年と3年続けて、天皇誕生日一般参賀に皇居を訪れた。これが最も思い出深い出来事と言う。キッカケは天皇・皇后両陛下が太平洋戦争の激戦地、パラオ共和国のペリリュー島を訪問されたこと。「ペリリュー島だけでなく、戦没者慰霊の旅を続ける天皇陛下にはただただ頭が下がる。その姿を見ると、自然と涙が流れ出す」。その感慨が豊島さんを一般参賀に赴かせた。間もなく平成が終わる。それだけに12月23日の一般参賀は、より思い出深いものになった。

〔略歴〕

とよしま・はんしち 1985年豊島入社、90年取締役。常務、専務を経て、2002年から現職。