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2019春季総合特集Ⅳ(12)/top interview スタイレム/二極化傾向が強まる/瀧定大阪 社長 スタイレム 会長 瀧 隆太 氏/海外市場で成長描く

2019年04月25日(Thu曜日) 午後2時31分

 小売りや製品販売といった消費ブランド事業から撤退し、生地販売を軸としたサプライヤー事業への回帰・集中の方向性を鮮明にする瀧定大阪グループ。同社社長兼スタイレム会長の瀧隆太氏はその中で、市場の二極化を強く意識する。そのどちらか一方でなく、両方を拡大対象とし、組織変更も行った。攻めるのは海外市場。輸出、外・外の両方で海外戦略を加速する。

  ――平成時代を振り返ると。

 バブル崩壊以降は国内ファッション消費が上向くことはなく、基本的に右肩下がりで推移しました。当社の業績もバブルの頃がピークです。しかし、事業の内容もこの30年で変わりました。変わったというよりも、変えてきたと言ったほうがいいかもしれません。量販店アパレル向けが主体だったのを百貨店アパレル向けやSPA向けにシフトし、付加価値化を進めた結果、利益も確保してきました。市場変化に対応するという当社の強みと戦略が奏功したと言えます。

 リーマン・ショック以降の平成後半も変化に対応してはきましたが、全体としては厳しい状況が続きました。その一つが低価格志向の高まりです。デフレが定着し、規模も縮小したという意味では日本のファッションマーケットにとって決して良い30年だったとは言えないと思います。

 一方、生産面での変化も大きかった。中国を中心とした海外シフトが一気に進んだのが平成という時代と言えますよね。

  ――平成終盤にはさまざまなデジタル技術が急速に世に出てきました。

 1990年代半ばにインターネットが登場、普及したことと比べても、よりインパクトの大きいものだと思います。ただ、繊維・ファッション業界がそのインパクトの大きさにいまいちピンと来ていないことが非常に怖い。取り残されるのではないかという危機感です。社会インフラも大きく変化してきているのに、電子商取引(EC)や個別のスマートファクトリー化などにとどまっているのがこの業界の現状です。とはいえ、業界全体でデジタルというものをどう使いこなすのか、私自身にも見えていません。真剣に研究しなくてはいけないと感じています。

  ――令和という時代、繊維・ファッション産業にはどのような課題が出てくるのでしょう。

 大きな流れとしては、デジタル化などで効率化を図って、適時、適品を適量で供給することが今以上に重要になってくると思います。一方、ファッションが持つ本来的な意味合いである、人間の生き方を表現するツールという価値が見直されてくるのではないかとも感じています。この両極が強まり、価格面だけにとどまらない市場の二極化現象が加速するのではないでしょうか。さまざまな場面で多様性も認められていくでしょう。

  ――2019年1月期の業績を振り返ってください。

 瀧定大阪グループ13社の合算業績は、売上高が982億円で前期比4・0%減少しました。ただこれは、オリーブ・デ・オリーブなど幾つかの事業会社で行っていた小売り事業が、消費ブランド事業からサプライヤー事業への集中という方針の下でゼロになったことによるものです。既存事業は増収増益です。国内生地販売はほぼ横ばいで、卸売の衣料品とタオルを軸としたライフスタイル製品は減収でしたが、海外市場向け生地販売が拡大しました。けん引したのは中国向けです。瀧定大阪とスタイレムの2社連結業績は売上高が0・1%増で、各利益も伸びました。

  ――今期の重点戦略を。

 二極化への対応が重点方針です。そのために今期から組織変更も実施しました。一つは、生地販売のファブリック事業部を2部制にしたこと。これまでの当社生地販売事業は先ほども話したように百貨店アパレルや高感度SPA、海外メゾン向けなどが主力でした。ここを維持拡大した上で、国内外のボリュームゾーン向けで拡大を狙います。販路を明確化したゾーン別の組織に変えたということです。

 製品事業は企画提案型と生地を軸としたOEM型という二つの組織としました。こちらは機能別に分けた組織変更です。

 国内市場は少子化もあり基本的に縮小していきます。ですので、当社の成長戦略も海外が主体になります。日本製の生地を欧米や中国に販売する輸出に加え、海外各拠点が現地で生産した生地を、海外市場向けに販売する外・外ビジネスの本格拡大に取り組みます。

 生産面では、顧客からQRを求められている一方、国内産地や染工場の納期がかかるようになっています。この矛盾を解決するためにも海外生産に力を入れるとともに、国内製造業との関係強化にも改めて力を注ぎます。

〈平成の思い出/予想に反して世界は激動〉

 高校一年生で昭和から平成への改元を経験した瀧さん。冷戦も終結し、「新しい何かが始まる」というワクワクした期待感が社会全体に漂っていた。しかし、日本にとっては戦争のない平和な30年だったものの、世界各地で紛争・戦争が絶えることはなく、さまざまな社会変化もあった。「9・11はいろいろな意味でターニングポイントだったのではないか」と瀧さん。“テロとの戦い”が始まり、その後はグローバル主義の絶対性も揺らいだ。「良し悪しではなく、時代の流れを正確に踏まえること」を令和に期す。

〔略歴〕

たき・りゅうた 1999年ソニー入社。2007年瀧定大阪入社。08年4月から瀧定大阪社長。18年4月から兼スタイレム会長。