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2019春季総合特集Ⅳ(15)/top interview 宇仁繊維/生地は必須、悲観なし/社長 宇仁 龍一 氏/大手アパレル攻略進める

2019年04月25日(Thu曜日) 午後2時33分

 今4月で創業20周年を迎えた宇仁繊維。創業以来、減収決算は一度もないが、その伸び率は近年、鈍化している。数字の母数が大きくなったことに加え、市況が良くないためだ。しかし、宇仁龍一社長は将来を悲観しない。「衣食住」の衣である服には生地が絶対に必要。需要は全世界にある。生地への一点集中主義、国産主義を貫く方針だ。

  ――平成という時代はどんな時代だったのでしょう。

 ひとことで言えば、激動の時代でしょう。繊維で言えば輸入製品がどんどん増えた時代です。生地も海外製が増えています。そんな中で当社は国産にこだわって会社を成長させることができました。「海外のことは分からない」という弱者の発想から生まれたものですが、産地出身の私ですから、日本の製造業を残したいという思いも強い。国産という方針をぶれずに追求しながら成長できたことはうれしいことです。

 一方、平成の30年間で小口化やスピード化も随分進みました。この流れも当社の多品種・小ロット・短納期という戦略にうまくはまりました。

  ――令和という新しい時代を迎えました。どんな時代になるでしょう。

 不安視はしていません。服は常に人と共にあるものです。それはいくら技術革新が進もうが、これから先、少なくとも100年は変化しないのではないか。その服を構成する生地を作る当社にはビジネスチャンスが無限にあります。服は生地がないと作ることができないわけですからね。さまざまな変化は今後もあるでしょうが、ここには一定の普遍性があります。

 高級化を目指し、着用者の個性を表現するような方向性で生地を開発していけば、未来はあると考えています。国内市場は縮小しますが、市場は全世界にあります。国内でも仮に自動縫製が進んだとすれば、生地の国産回帰も確実に起きます。大量生産品は別として、高級服は国内で自動縫製し、生地も国産。この流れが生まれることに期待しています。備蓄力と供給スピードを強みとする当社の出番です。

  ――確かに市場は全世界が対象になります。

 日本の生地は世界で勝負できます。「プルミエール・ヴィジョン」や「ミラノ・ウニカ」でもそれは証明されています。一方でそのモノ作りを担う産地はまだ縮小しそう。これが心配ではあります。

 産地の疲弊の原因は幾つかあると思いますが、一つは売る機能と作る機能が分断されていることだと思います。イタリアや中国などではこの機能の多くは融合されており、国際競争力も持っています。当社には十分と言えるかどうかは別として、売る機能と作る機能の両方がある。「テキスタイルのSPA」と呼べるかもしれません。将来的にはこの融合機能が今よりもっと強みになってくると思います。

  ――2019年8月期の上半期が終わりました。

 単体売上高は37億円で、前年同期比0・7%増です。輸出がやや苦戦し、全体としても伸ばし切れませんでした。利益は順調に伸ばせました。コストダウンに努めたほか、ベテランスタッフの退社などで一般管理費が減ったことが理由です。

  ――子会社は。

 売上高の増減は凹凸のある結果でした。中国向けを軸とする宇仁テキスタイルが15%減、雑貨販売の宇仁繊維ファッションが17%増、丸増が10%減、ウインザーが6%増、オザキプリーツが38%増です。

  ――下半期はどのような戦略で臨みますか。

 0・7%増では満足しません。そのために新たに進めるのが、大手アパレル向け戦略商品の投入です。当社が作る生地は多品種・小ロット・短納期機能が評価され多くの顧客に浸透していますが、その多くがメインの生地ではありません。ブランドのメインの生地になることを目指して大手アパレルブランドへの売り込みを強めるプロジェクトを進め、成果も出ていますが、進展のスピードが遅い。加速するために投入するのが戦略商品です。

 この戦略で重視するのはコスト。大きめのロットで単品を量産し生産コストを下げます。組織や糸使いを変えて例えばこれを10品番作る。要望があればすぐに各種加工やプリントを施すことも可能です。この商材を大手アパレルに力強く提案し、多くの採用を目指します。

  ――開発商品の高級化もテーマに掲げています。

 ジャカード、デジタルプリント、シルク、トリアセテートなどを増強しています。特にジャカードでは社内プロジェクトも組みながら設備投資も進めています。デニム、裏地、ユニフォームなど当社にとっての新規商材新規販路にもトライしていきます。

〈平成の思い出/社員と楽しみながら成長〉

 宇仁さんにとって平成の思い出と言えば、なんといっても宇仁繊維を起業したこと。平成11年のことだった。今4月で創業20周年を迎えたが、平成が終わる年とそれが重なるのも「何かの縁かもしれない」。4人で創業した同社も今や278人という大所帯。「厳しい時代の中でなんとか社員と共に楽しくやってこられた」と感慨も深い。ただし、20周年を迎えても、平成が終わっても、宇仁繊維の事業は続く。「アパレルのブランド化戦略を生地で下支えする」という使命も残っている。

〔略歴〕

うに・りょういち 1999年桑村繊維を退職後、44年余りの経験、実績を基に一部商権と商品を引き継いで宇仁繊維を創業。