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新たな地平に向かって/香港の日系繊維企業/中国、欧米開拓で成果

2019年04月26日(Fri曜日) 午後4時22分

 香港の日系繊維企業が、新たな地平に向かって前進を続けている。昨年から中国内販や欧米顧客の新規開拓で成果を上げるケースが相次ぐ。各社は香港に拠点を置く意義を模索し、もがいてきたが、それがようやくはっきりしてきた。

(岩下祐一)

 日系繊維企業にとっての香港は、1980年代後半は欧米ブランドのバイイングオフィスへの日本製生地の販売拠点、90年代からは中国・華南地区の縫製工場の生産管理を担う拠点の位置付けだった。それがこの10年、縫製のASEAN地域へのシフトや欧米系バイイングオフィスの上海への移管が進み、拠点縮小や撤退を余儀なくされるところが多かった。

 残った企業は、割高な人件費やオフィス賃料の高騰が続く中、日本本社から「香港に拠点を置く意義」を厳しく問われることになり、各社はその模索を続けてきた。

 その答えがここに来て、ようやく見えつつある。それは、ASEAN地域シフトの加速や、香港、マカオ、広東省が連携する「粤港澳大湾区」構想の本格化を背景に、ASEAN地域生産の司令塔となり、香港の地の利やビジネス環境(自由度の高い貿易や金融制度、整ったITインフラ)、英語と中国語を操り欧米文化に精通する現地スタッフを生かし、欧米向けと中国内販を同時に攻めるというものだ。

 蝶理〈香港〉は約1年前、香港の中心部からやや外れた茘枝角(ライチーコック)から、九龍・尖沙咀(チムサーチョイ)の一等地のオフィスビルに引っ越した。グループのASEAN地域を中心としたグローバル展開の司令塔の役割を担っていくための“仕切り直し”が目的だった。この一年はバングラデシュ・ダッカの駐在員事務所との連携を強化。今後、バングラデシュやベトナム生産の、欧米や香港地場顧客への売り込みを計画する。

 東レ香港(THK)は、中国大手スポーツブランドとの取り組みに乗り出した。中国の主力工場、THKアパレル(広東省珠海市)の高度化や商品提案強化の努力が実った。同顧客を中心とした中国スポーツ向けを新たな事業の柱に育てる。

 三景横濱〈香港〉の2019年3月期決算は、前期に比べ大幅な増収増益だった。欧米ブランド向けの副資材販売を、ASEAN地域の自社工場をフル活用し伸ばした。社内のセクショナリズムを廃し、部門間や中国、ASEAN地域の拠点との連携を促したことが奏功した。

 豊島〈亜洲〉は、ミャンマーで生産するダウンウエアの欧米向け販売を拡大。19年3月期業績はこれが貢献し、増収微増益だった。香港の地の利を生かし、さまざまな国の最適な素材を調達しASEAN縫製するという、目指してきた役割が形になりつつある。

 八木〈香港〉はリサイクルコットン糸の欧州顧客への販売を伸ばしている。主要顧客のスポーツSPAの商品特性への理解が深まったことが、本格採用につながった。

 旭化成紡織〈香港〉は、ポリウレタン弾性繊維「ロイカ」の糸の中国内販を始めた。欧米向けが中心だった華南地区のニッターの顧客が昨年から中国内販の開拓を積極化し、内販向け製品へのロイカの機能糸の採用が増えている。