明日へ これが我が社の生きる道 染色加工編⑰

2019年05月10日(Fri曜日)

奥田染工場 国内繊維産地のハブに

 モノ作りとモノ作りを結ぶ場所が東京都八王子市に存在する。プリント加工場の奥田染工場が運営する「つくるのいえ」だ。ここを起点に八王子市内の企業はもちろん、各繊維産地やデザイナーなどがつながる。奥田博伸代表取締役(39)は「交流だけでなく、物販も行い、繊維産地のハブになる」と力を込める。

 元々は東京都内で呉服を販売していたという同社。いつしか風呂敷の加工を手掛けるようになり、1930年代前半に水を求めて八王子市内に移転した。51年に株式会社化(奥田染工場発足)してからも風呂敷の加工を続け、シルクスクリーンプリントを中心に業績を伸ばしていく。

 製織や染色・加工を含めた八王子の繊維業は、70年代に生産高がピークに達する。それ以降は減少の一途をたどり、セーターやTシャツ、ネクタイなどさまざまなアイテムのプリントを手掛けてきた同社も厳しい局面に立たされる。特にネクタイの生産が減ったことが痛かった。

 奥田代表取締役が入社したのは22歳の時。「(会社が)最も苦しかったのではないか」と言う90年代を乗り越えた頃で、コレクションブランドの比率を高め、若手デザイナーとの仕事が増えていった。しかしながら、インクジェットプリントの台頭で曲がり角を迎え、その後は シルクスクリーンプリントの価値を訴えることに活路を見出す。

 シルクスクリーンプリントの良さ、価値について「色を適切に選んで着色が可能なこと」のほか、「色が生地の奥まで入ることもメリット」と話す。「ハンドスクリーンであるため、小回りが利き、いろいろなニーズに応じられる」とした上で、「シルクスクリーンで分からないものはない」とも強調する。

 技術力についても自負する。その一つが広島県尾道市の造船所から出る鉄粉を活用した「鉄染め」。鉄独特の色合いや経年変化が楽しめ、ごみの削減にもつながる。帆布メーカーから頼まれて開発した加工で、「技術の奥行きに自信があり、課題を与えてくれれば解決する。要求に対して120%で応える」と力を込める。

 同社が2017年12月に立ち上げたのがつくるのいえ。産地企業の製品展示の場や交流の場として活用され、工場と工場、工場とデザイナー、デザイナーとデザイナーなどが結び付いてきた。今後の目標として「19年中にセレクトショップ化したい」とし、自社の製品(衣料品や小物、生地)に加え、各産地の製品も販売する。

社名:株式会社奥田染工場

本社:東京都八王子市中野上町1-12-14

代表者:奥田 博伸

主要設備:シルクスクリーン台10台

月産能力:6千㍍

従業員:5人

(毎週金曜日に掲載)