米ブルックスが越生産拡大/関税を懸念、中国を大幅に縮小

2019年05月15日(Wed曜日) 午後1時46分

 米国のランニングシューズ市場で最大のシェアを持つブルックス・ランニングが、中国での生産を縮小し、ベトナムに大幅に移管する方針を示した。米中貿易摩擦による関税引き上げを踏まえた措置となる。専門家は、貿易摩擦の機会を生かしてベトナムが米国向けの輸出を今後も増やしていくには、商品表示の取り決めなどを正確に把握する必要があると指摘している。

 ブルックスは米国のランニングシューズメーカーで、同名ブランドのシューズやアパレルを展開している。100ドル以上のランニングシューズ分野では国内でシェア23%を持ち、最大を誇る。有名投資家ウォーレン・バフェット氏が率いる投資ファンド、バークシャー・ハサウェイが出資していることでも有名。

 ブルックスは世界56カ国・地域で商品を販売しており、ベトナムでは55%を生産。残りを中国で生産している。ブルックスのウェバー最高経営責任者(CEO)はロイター通信に「中国の生産を大幅にベトナムに移管する」ことを明らかにし、移管後の割合は今後に決める考えを示した。65%をベトナム、10%を中国、25%をその他の国にするといった案を検討中という。中国では引き続き、小規模の生産と研究開発(R&D)を続ける。

 生産移管を決断した理由についてウェバーCEOは、「以前から生産を移管する構想はあった」としたものの、米中摩擦による関税引き上げが大きな要因だと説明した。「関税引き上げの脅威は非常に大きい。ブルックスは販売価格を簡単に引き上げることはできないからだ」。同社のランニングシューズの販売価格は100~160ドルだが、「貿易摩擦が収まるとしても、それまで待てない」(同CEO)のが実情。

 中国での人件費上昇や、環境規制の強化などを背景にした製造業の「チャイナ・プラス・ワン」の動向に加え、米中の貿易摩擦が生産移管を後押しする流れが本格化しつつある。米国企業では昨年12月、タイヤ大手のクーパータイヤ&ラバーがベトナムのサイルン・ベトナムと合弁会社を設立すると発表。クーパーが35%を出資する。2億2千万~2億4千万ドルを投じ、ホーチミン市近郊に年産能力200万本のラジアルタイヤ工場を立ち上げる。2020年上半期にも稼働する。

〈30年に対米輸出900億ドルも〉

 米中の貿易摩擦を巡っては、関税引き上げの応酬で依然として先行きが見えない。一方で、ブルックスの例もあるように、貿易摩擦の影響も後押しし、ベトナムの米国向け輸出や投資は堅調に推移している。

 在ベトナム米国商工会議所(AmCham)によると、ベトナムが07年に世界貿易機関(WTO)に加盟して以来、米国向け輸出は急拡大を続けている。08年に129億ドルだった輸出額は、18年には492億ドルにまで拡大。特に繊維・アパレル輸出は18年に129億ドルと、全体の26・2%を占める。AmChamのシニアアドバイザー、ハーブ・コクラン氏はNNAに「ベトナムから米国への輸出総額は、30年には905億ドル、繊維・アパレル輸出は206億ドルに達する」との見通しを示す。ベトナムの対米貿易黒字は18年に395億ドルで、25年までに600億ドルを突破し、30年には785億ドルにまで増える可能性がある。

 ベトナムは米国にとって、ASEANの中で最大の輸入元で、ASEANからの輸入の26・5%を占める。ただ、コクラン氏は「ベトナム企業が貿易摩擦の機会を生かして米国向け輸出を増やすには、商品表示などに関する知識がまた足りない」と指摘する。例えば、コーヒーの生産や販売を手掛けるチュングエンは、米国の法律に適合したラベルを作れず、輸出したコーヒーが大量に戻ってきたことがあった。同氏はこういった大きな損失を避けるためにも、米当局のサービスを利用することなどを推奨している。

 コクラン氏は「ベトナムの対米貿易黒字が膨らみ過ぎれば、米国側が何らかの制限を課してくる可能性がある」との懸念も示す。ベトナムがエネルギーや農産物、インフラといった分野で米国からの輸入を増やす措置を取らなければ、中国がそうであったように、国内の幅広い産業にとってリスクになる。〔NNA〕