明日へ これが我が社の生きる道 染色加工編⑱

2019年05月17日(Fri曜日)

美研繊維 古さと新しさが共存

 平腰秀裕社長(71)が日本有数の捺染工場集積地である京都で美研繊維を興したのは1986年。「少なくとも京都では最後発」の染工場設立だった。現代の“定番”であるオートスクリーン捺染機を保有しながら、「古き良き」旧式のロール捺染機、最新鋭のインクジェット(IJ)捺染機を駆使して付加価値品を生み出し続ける。

 同社を立ち上げる前、平腰氏は個人で生地の仲買をしており、染工場に発注する立場だった。「こんな生地があれば売れる」と思いついても、「リスクが高い」「難しすぎる」「手間がかかる」と染工場から断られることが多かった。「ならば自分で作ってやろう!」と思い立ったのが美研繊維を興した理由だった。

 まずは定番のオートスクリーンを導入した。しかし、時代は中国への生産シフト真っただ中。「誰でも作れる商品はいずれ海外にシフトする」と考え94年に中古のロール捺染機を導入する。なぜ旧式のロール捺染機なのか――。同業や取引先からはそう疑問を持たれた。同業の多くがロール捺染機を廃棄し、ロータリー捺染機やオートスクリーン捺染機を相次いで導入していた。

 「(ロール捺染は)簡単な捺染だが、繊細で深みのある表現はロールでしかできない」ことが、あえて旧式捺染機を導入した理由だった。彫刻業者との協業や独自の改良も加えて、この旧式捺染機による事業は徐々に軌道に乗る。

 一方、2014年には最新鋭の捺染技術であるIJ捺染機2台の導入に踏み切った。懇意にする生地商社との連携もあり、同機は順調に受注を拡大。この順調拡大を支えたのも、浸透性の高いプリント技術の確立という独自性の付与だった。昨年9月には3台目のIJ捺染機も導入。「これからIJ捺染機はまだまだ進化していく」と話し、増台も計画する。

 同社の特徴は機械への独自性付与だけにとどまらない。平腰社長の出自が物語るように、企画提案力が同社最大の強み。昨年夏から開発を始めた同社初の自社製品ブランド「あそ美心」がそれを象徴する。IJプリントの風呂敷を現状76柄で展開するもので、柄は全て同社オリジナル。「東京インターナショナル・ギフト・ショー」にも出展し、今月下旬には個展も開く。ブランド自体の拡販はもちろん、「IJプリントをもっと世に広めたい」という思いがある。

 平腰社長には「染色加工に対するアパレルの理解が低すぎる」という危機感もある。「難度の高いものでもすぐにできて当たり前と捉えられている」と感じる。それが悔しい。染工場などモノ作り企業の工夫、努力、研さんを少しでも世に伝えるためにも、企画提案力を磨き続ける。

社名:株式会社美研繊維

本社:京都市南区上鳥羽塔ノ森下河原22

代表者:平腰 秀裕

主要設備:神崎鉄鋼製ロール捺染機1台、東伸工業製オートスクリーン捺染機2台、セイコーエプソン製インクジェット捺染機3台、ほか各種付帯設備

従業員:53人

(毎週金曜日に掲載)