秋利美記雄のインドシナ見聞録(62)/ユニクロのベトナム1号店

2019年05月20日(Mon曜日) 午後4時11分

 ユニクロがホーチミン市内に開くベトナム1号店について、出店先は1区レタントン通りにある改装中の6階建てデパート「パークソン」で、3フロアを占めることになると、先月報じられた。開店時期は9~11月だとも伝えられている。

 現地財閥ビンコムグループが建設した東南アジア一高いビル「ランドマーク81」に入るのではないかという憶測が飛び交っていたが、ホーチミン市の中心も中心で、ZARAとH&Mの入っている「ビンコムセンター」の真向かいのビルに入るということになる。

 H&Mが進出し、成功している「ビンコムセンター」を横目に見る「パークソン」は大不調。ユニクロは3フロアぶち抜き、さらに客寄せ効果を訴え、かなり賃料を値切ったのではと勘繰る人もいる。

 市内のどこに出店するかという問題もあるが、それ以前にユニクロのベトナム初出店に際し、そもそもホーチミン市で良かったのかということ自体に私は疑問を抱く。

 決めてしまったものを今更どうなるわけでもないが、ユニクロはベトナムではハノイ進出を先にしたほうが有利だというのが私の考えだ。

 ベトナム北部は南部に比べて、日本や韓国といったアジアに目を向ける傾向が強く、ユニクロはまだ実態もないうちから、既に偽物が出るほど人気ある。さらに、寒い冬に「ヒートテック」などの機能性商品を出せばユニクロの強みを生かせる。ハノイの人たちの中には「ウルトラライトダウン」のうわさを聞き付け、冬には日本から買ってきてもらう人もいるという。

 実際の消費者の言葉ほど強力な広告はないわけで、ブランドの評判が飛び交う中で進出するほうがうまくいくものではないか。

 そういう意味で、ユニクロがホーチミン市をベトナムの最初の出店先に選んだのは作戦ミスだと考えている。北部市場を労せず抑えて足場を築いてから南部の最大消費地ホーチミン市に出た方が有利に市場を攻略できるのではないか。

 おしゃれやファッション性を求めている、欧米志向の強いサイゴンっ子たちの前で、ファッションではないと公言するユニクロが、先行した欧米勢ZARAやH&Mの店舗のすぐ目の前に、いきなり大型の旗艦店を立ち上げるというのはどういうことだろうか?

 いきなり背水の陣を敷く作戦にしか見えないのだが、秘策はあるのか。成り行きを見守りたい。

あきとし・みきお 繊維製品輸入販売会社カラコロモ〈東京〉代表、ミラン・コンサルタント〈ホーチミン〉副会長