メーカー別 繊維ニュース

特集 スクールユニフォーム(8)/商社編/高機能・高品質の生地供給

2019年05月29日(Wed曜日) 午後5時11分

 2019年春入学商戦での商社の商況は前年に比べ苦戦の声が多い。昨年度、中学・高校を合わせた新入学者数が大幅に減少した影響で、学生服メーカーが生地備蓄に慎重になっていることによる。利益面はウールをはじめとする原料費が上昇しており、運送費のアップもマイナス要因。一部のメディアによる学生服の価格への批判は、値上げのハードルを高くしている。この逆境の中、多彩な機能や高い品質を強みに学生服の価値向上に貢献する。

〈「ミライズ」着実に浸透/ナカヒロ・スクール部〉

 ニッケグループのナカヒロはニッケの学生服用生地ブランド「ミライズ」の提案に力を入れる。小出石史人執行役員スクール部長は「3シーズンを通して着実に消費者に浸透している」と話し、「今年は関東の学校の詰め襟として採用が決まった」と実績を強調する。

 ミライズはニッケのウール高混率の織物ブランドで、学校、保護者、生徒の3者の要望に基づいて開発した。2017年の発売当初は店頭で売られる定番女子セーラー服向け素材として販売してきたが、前期から詰め襟、ブレザー向けも拡充した。ウール特有の上質感に加え、軽い着心地、適度なストレッチ性を持ち、家庭でも扱いやすい。

 ミライズを中心に、学生服の価値を学校、保護者、生徒たちに改めて訴える。小出石部長は「生徒が減少傾向にある中、顧客に制服の価値を伝えることが一層重要になる」とし、「同時に学生服の価値を自ら創造することがわれわれの使命」と話す。

 19年春入学商戦は前期に比べ増収、営業利益は減益となった。18年12月から19年3月にかけて追加が多く売り上げの伸びにつながった。一方で、ウール原毛の価格高騰で利益が伸び悩んだ。セーター、ベストといったスクールニットの動きは引き続き好調。女子だけでなく男子でも採校が増えている。

〈部署連携で相乗効果/東洋紡ユニプロダクツ〉

 東洋紡ユニプロダクツ(大阪市中央区)は、部署間連携を強める。異なる事業領域での情報共有を図り、業務効率を高める。国内外の生産体制や企画力でも相乗効果を狙う。

 同社は2018年10月に東洋紡STCのテキスタイル事業部と東洋紡グループ繊維子会社3社(合同商事、東洋紡テクノユニ、東洋紡アパレルシステムズ)が統合して発足した。売り上げ規模は約90億円で、従業員は105人。

 スクール用布帛シャツで既に連携の成果が出始めている。この分野は旧・合同商事が手掛けてきたが、東洋紡ユニプロダクツになったことで海外の生産基盤が充実した。ベトナムでの増産が可能になり、海外生産を増やすことで、価格対応力が強まった。

 部署間連携では寝装・タオルを扱う部署とスクールユニフォーム事業部の連携により、学校向けの災害対策用寝袋や学校オリジナルタオルハンカチといった新商品が生まれた。これ以外にスクールシャツとビジネスシャツの縫製工程を組み合わせた、工場の操業度の平準化も検討する。

〈学校別注の商品開発も/牧村〉

 牧村は素材メーカーのテキスタイルを学生服アパレルへ供給するほか、学校別注向けの商品開発や企画提案にも力を入れる。制服地に加えセーター、ベスト、カーディガンなどのニット製品も扱い、全国7拠点から拡販する。

 2019年5月期は売り上げ、営業利益ともに横ばいとなる見通し。直近の入学商戦はアパレルが計画生産を進めたことにより「急な追加発注が少ない落ち着いたシーズンだった」(同社)と言う。入学者数減や製造・輸送コスト上昇など環境は厳しいが、顧客のニーズに合った対応力を強め、来期も業績を堅持する方針。

 近年、学校別注のセーター、ベストなど横編み製品の売り上げを堅調に伸ばしている。紡績段階から日本国内で生産し、「ラッドワン」ブランドで卸売りしている。着脱時の不快感の元となる静電気の発生を抑制する機能糸使いの商品や独自のデザイン性の高い別注製品が好評。

 ニット製品の好調は業界内で共通しており、背景には、少子化という環境下で、学校がより多くの入学生を呼び込むために、学校ごとの特色の打ち出しを強めていることがあるようだ。

〈「インセーター」好評/チクマ〉

 チクマのキャンパス事業部は、少子化を要因に市場縮小が進むことを見越し、これまで以上に新商品開発に力を入れる。新商品開発加速の一環として今年1月に販売を開始した「インセーター」は4千枚弱を既に売り切り、今期(2019年11月期)中に7千枚を販売する計画。

 同商品は、セーラー服の中の着用に特化した新発想のセーター。七分袖、タイトめのシルエット、広めの襟ぐりなど「中に着る」ことを意識した点が学生から好評を得ている。

 セーラー服の外にセーターを着ることを禁じる学校も少なくなく、「でもセーターを着ないと寒い」という社員の声を反映して開発した。

 着用者アンケートでは、「ごわつかない」「暖かい」といった声が寄せられており、さらなる拡販に自信を示す。商標登録済みで、現在は意匠登録申請中。

 年内には「吸水速乾ソックス」(仮名)も発売し、来入学商戦で中高生男女に向けて5千足を販売する計画。ポリエステル100%製にして速乾性を高めた上、糸の段階で部屋干し加工も施した。甲部分にはメッシュを入れ、通気性も高めている。

 今後も「環境」「安全」「安心」を切り口に新商品開発に力を注ぐ。

〈多彩な快適素材が充実/イシトコテキスタイル〉

 イシトコテキスタイルは、中学・高校向けの別注生地の販売を手掛ける。近年、素材に対する快適機能ニーズの高まりに合わせて、透け防止やUVカット、通気性に特化した素材や抗菌防臭や抗ウイルス加工といった衛生面での機能素材を充実させている。

 綿混素材はシキボウの、ウール混素材は東亜紡織の素材を学生服メーカーに供給する。強みは大手には難しい学校ごとの少量・多品種対応に特化して、細部まで要望に合った素材を調達できる点。少子化や学校の特色の多様化で近年、アパレルの小ロット、多品種のニーズが高まっており、こうした需要をターゲットにシェア拡大を図る。

 生地の用途はブレザー、セーラー服、シャツ地、カーディガン・ベストと幅広く、学校衣料に必要な素材がワンストップでそろう。

 取り扱いやすさ、動きやすさに対する要望に応える商材としては東亜紡織のジャージー素材「エクスパンジャー」がある。スクールジャケット用素材で肌触りが柔らかくストレッチ性に富んでいて、シワになりにくいという快適性とともにスクールユニフォームに求められる高い物性も併せ持つ。

 「ニュー・パワール」はシキボウのストレッチ糸で高いストレッチ性とイージーケア性、ソフトな肌触りを併せ持つ。ニットシャツで活用する。

〈4千種類以上の生地提案/アカツキ商事〉

 ニッケグループのユニフォーム専門商社、アカツキ商事の2019年4月の入学商戦は、前年並みで着地した。大手学生服アパレルメーカー向けのOEM生産ではベストやセーターといったニット製品が増えた。

 同社は半世紀以上、スクールユニフォーム事業を手掛け、4年前からは学生服に特化している。扱う生地は4千種類以上でバリエーションに富んだ提案を強みにする。

 その一つが、学生服を代表するタータンチェック。1998年から20年以上にわたり、スコットランド最大手のタータンメーカー、ロキャロン社とライセンス契約を結ぶ。「学校に本物を届ける」という理念の下、ロキャロン社のデザインごとに糸を染めるこだわりを持つ。

 ニッケグループの戦略素材「ミライズ」も中学校を中心に幅広く提案する。ミライズはウール高混率の高級感を持ちながら、家庭で洗濯できて扱いやすい。須蒲邦和執行役員は「生地の販売商社として、顧客の要望に100%対応したい」と話す。

 学生服は、地域や私立、公立の違いによってニーズが大きく異なる。国内の縫製工場が減り、年々生産場所の確保が難しくなる課題もある。須蒲執行役員は「学校と綿密にコミュニケーションをとりながら、20年も早めに作り込みを行っていきたい」と話している。

〈ⅠJプリントによる柄物強化/東レアルファート〉

 東レアルファートの2019年3月期の学生服メーカー向け商況は、一部の学生服メーカーによる在庫調整の影響を受け、前期比で微減収となった。ただ、機能素材は伸びる傾向で、今期も引き続き機能素材の販売に力を入れるほか、東レと連携しながらインクジェット(IJ)プリントによる柄物の提案も強める。

 シャツ向けのニット地は、適度なストレッチ性による快適性とアイロンがけ不要といったイージーケア性が認知され、「売り上げが右肩上がりに伸びている」(ユニフォーム部の本間徳倉敷営業所長)。女子制服向けを中心に展開する「トレラーナ」も、家庭洗濯が可能な点や形態安定性、軽量、ストレッチ性、ソフトな風合いなど多機能な点から新規の学校への採用が増えてきた。

 IJプリントによる柄物は、小ロット、多品種で生産や納期対応の負担が大きい先染めの柄物の代替として提案、既に引き合いも増えつつある。

 原反だけでなくレインウエアといった製品の販売も拡大。縫製機能も強化しつつあり、「倉敷に拠点を持つ強みを生かして、学生服メーカーのニーズに応える」ことで事業拡大に取り組む。