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特集 スクールユニフォーム(9)/学生服地・シャツ地メーカー/制服の価値に貢献する

2019年05月29日(Wed曜日) 午後5時12分

 制服が持つさまざまな価値を実現することに貢献するのが学生服地だろう。近年、羊毛価格の高騰を背景に、学生服のウール混率の低下傾向が一段と鮮明になった。このため毛紡績は天然の機能性や環境への優しさなどウールの魅力を一段と明確とした学生服地の開発と提案を強めている。一方、合繊メーカーにとってウール混率低下はポリエステル混率の上昇を意味する追い風。合繊ならではの機能を打ち出す。それぞれの素材の強みを生かし、制服の価値に貢献する開発と提案が加速する。

〈東レ/合繊メーカーの強み発揮/IJ捺染で先染め代替〉

 東レは羊毛高騰を背景に学生服地でもポリエステル高混率品への注目が高まっていることを生かし、合繊メーカーの強みを発揮した商品提案を強める。ポリエステル高混率やポリエステル100%の学生服地で機能を高度化することで合繊ならでは価値を追求する。

 同社の学生服地販売はポリエステル高混率品の拡大傾向が続いている。学校別注向け主力商品「トレラーナ」もウール(W)50%・ポリエステル(E)50%混が主流だが、W30%・E70%混品やW15%・E85%混品の販売が大幅に増加。ポリエステル100%梳毛調織物「マニフィーレ」も採用が増加した。

 こうした流れを追い風に、2019年度も引き続きトレラーナ、マニフィーレを主力にポリエステル高混率品の提案に力を入れる。防汚加工「テクノクリーン」など原糸・製織・加工の組み合わせによる機能の高度化で合繊ならではの価値を追求する。

 女子スカート地や男子パンツ地向けの柄物では小松マテーレと取り組むインクジェット(IJ)捺染「モナリザ」の提案を進める。学生服の柄物は先染め織物が主流だが、学校ごとにデザインが異なることなどから多品種小ロット生産となり、生産効率が悪い。納期対応の負担も大きく、コストも高くなる。

 一方、IJ捺染は下地を備蓄することで短納期での多品種小ロット生産ができる。独自の利点を打ち出すことで先染め代替の需要開拓に取り組む。

 そのほか、トリコットシャツ地や高視認染色生地「ブリアンスター」など特徴のある素材を活用し、周辺アイテムでの採用拡大も目指す。

〈シキボウ/素材で学校生活を快適に/集団感染に備える加工も〉

 シキボウは、学校生活を快適にする機能素材を数多く展開する。実績としてはスクールシャツ地を中心に中学・高校で着用されるものが多く一部、園児のスモッグ、シャツ、ブラウスの販路もある。

 定番の織物シャツ地が売り上げの大半だが、機能素材にも底堅いニーズがある。高いストレッチ性で着心地の良さを追求したトリコットのシャツ地も扱う。

 機能では、部屋干し対策、制菌・消臭・抗ウイルス加工といった清潔・衛生面で優れた効果を持つ機能が充実する。

 ニーズが底堅いものとしては消臭加工「スーパーアニエール」、部屋干し対応素材「ルームドライ」などがある。前者は臭気成分を中和し、いやな臭いを消せる。後者は速乾機能に抗菌防臭機能を加え、室内干しの不快な臭いを抑制する。

 学校での食中毒やウイルスの集団感染に備える加工もある。制菌加工「ノモス」、抗ウイルス加工「フルテクト」「ノロガード」があり、繊維上の細菌やウイルスの増殖を抑制する。SEKマークのオレンジと赤を取得しており、日本学校保健会の推薦も受ける。

 防汚加工「汚れま戦隊シリーズ」は汚れを付きにくく落ちやすくする後加工。皮脂をはじめボールペンや油、血液の付着にも対応する。

 年々厳しさを増す酷暑対策素材もある。ワークウエアで好調の高通気素材「アゼック」や涼感素材「すだれ織り」、加工では綿の放熱性を高める涼感加工「トレハクール」がある。「コンフ」は汗を吸い上げ素早く生地表面に拡散、蒸発させる吸汗速乾素材。

〈東海サーモ/副資材をトータル提案/機能芯地も開発〉

 芯地総合メーカーの東海サーモ(岐阜県大垣市)は国内で唯一、芯地を紡績から染色整理加工まで一貫生産していることを強みとする。生産拠点は大垣の本社工場と近隣にある西大垣工場の2工場。「水都」と呼ばれる奇麗で豊かな水があふれる大垣の両工場で安全・安心かつ快適な服作りの“メイドインオオガキ”を標ぼうする。

 提案商品は、その特徴を生かし、顧客別に問題解決型の商品や市場のニーズに即した付加価値・機能商品を展開する。特に快適性、イージーケア性に対しては上着の芯地だけでなく、裄綿(ゆきわた)、肩パッド、さらに伸び止めテープ、襟芯地、インサイドベルト芯まできめ細かく糸から副資材トータルで開発しているのが特徴だ。

 スクールユニフォーム用途向けでは、一般衣料と比べてその着用頻度の高さから“軽量・ウオッシャブル性”は言うまでもなくシルエットの保形に優れた“耐久性”と接着力がより得られやすい芯地を提案。近年では消臭効果を持たせた接着芯地が好評な他、さらに防風などエリア別のマーケティングを意識した機能芯地の開発もファッション衣料以上に注力する。

 同社は今年で設立61年目。当初、毛芯地メーカーとしてはやや後発でスタートしたものの、1950年代にいち早く接着芯地をドイツのメーカーから技術導入しその後、基布から接着樹脂の開発まで副数の特許を取得。今では芯地のイノベーター的な役割を果たしている。

〈ニッケ/夏の「ミライズ」が登場/広がるラインアップ〉

 ニッケは、ウール主体の学生服生地ブランド「ミライズ」のラインアップの拡充に力を入れる。発売当初は店頭販売のセーラー服のみで提案してきたが、昨年に強度を高めてブレザーや詰め襟にも使えるようにした。

 購入者の要望から夏服に特化したミライズも改めて開発し、来春入学生向けに提案を始めた。女子セーラー服向けが基本だが別注で男子向けも可能。これまでよりもさらに軽く涼しい。

 ミライズは長短複合偏芯構造交撚糸「ニッケ ナガラガワ」を51%以上使う。18年春から本格的な販売に乗り出した。上質なウールの性質に加え、軽量、高いストレッチ性と耐久性、家庭での手入れが簡単といった高い機能性を併せ持つ。取扱店は現在、187店と発売から3倍を超える。

 夏服用ミライズとは別に新たな涼感素材も開発した。混用率はウール50%・ポリエステル50%。昨年6月に開いた展示会で参考出品したが、そこからさらに物性面での改良を進め商品化した。冬用の学生服向け調温新素材も開発している。

 近年、学生服の価格へ批判が強まっていることを受けて、学生服の教育的価値やウール素材の優位性の発信にも力を入れる。「ウールラボ」というプロジェクトを立ち上げて、学校にニッケから講師を派遣し家庭科の授業でウールの学生服地としての優れた性質について解説したり、昨年から学校施設・サービス展に出展し、ニッケならではの学校向けサービスをアピールしたりしている。

 近年、学校が配慮すべきテーマとして急浮上したLGBT問題にも対応する。これまで学校によっては男子用、女子用とで柄を分けるケースもあったが、LGBTの観点からあらゆる性に対応できる色柄やスカート、ズボンなどアイテムを問わず学生が気持ちよく着られる生地を開発している。

〈東亜紡織/ウールの価値打ち出す/2ウエーストレッチ投入〉

 東亜紡織は学生服地で積極的に新商品を投入することで改めてウールの価値を打ち出す。その一つとしてウール50%・ポリエステル50%混で2ウエーストレッチの学生服地も開発した。

 2019年度もモデルチェンジ商戦で堅調に新規案件を獲得している同社だが、やはりウール混率低下が大きな課題となる。こうした状況を打開するために新商品として2ウエーストレッチの学生服地を新規投入する。学生服地でもストレッチ生地のニーズは高いが、従来は1ウエーストレッチが一般的だった。これに対して同社は紳士服地の技術を導入することで学生服地に必要な物性と機能を両立した。無地だけでなく柄物も用意し、学校別注向けでの提案を進める。

 店頭販売の詰め襟向けにウール混率30~50%の濃染品も新規投入する。染色整理加工を担うソトーと連携しながら、一格上の詰め襟学生服地としてウールならではの色調と品位を実現した。

 先染めの柄物は来春入学商戦に向けて84柄を新たに用意。スラックスとスカート両方に使える小柄も用意し、女子用スラックスなどLGBT(性的少数者)に配慮した制服企画など社会の新しい潮流にも対応する。

 アパレルとも連携しながら制服販売店や学校関係者に対してウールの価値を改めて啓発する活動にも取り組む。天然繊維である羊毛が持つサステイナビリティー(持続可能性)や消臭性、吸放湿性など天然の機能性を紹介することなどで、ウールが学生服地に最適な繊維素材であることを改めて訴求する。

〈御幸毛織/多様化するニーズに対応/素材のバリエーションも進化〉

 御幸毛織のユニフォーム事業部の2019年入学商戦は、前年並みで着地した。「地方の学校の統廃合が一段落し、モデルチェンジも少なかった印象」(同事業部)と言う。学生服アパレルメーカーもかばんや体操服など制服以外のアイテムを増やす傾向がある。

 同社は、18年4月に東洋紡テクノウールと合併し、ユニフォームを事業の重要な柱に据える。学生服地に用いられるウールは、原料の羊毛価格の高騰が続いており、学生服市場全体の課題になっている。

 厳しい環境の中でも同社は、糸や生地で差別化を図る。例えば夏服向けの生地「テクティサマー」は軽量で通気性に優れる。一方で「ブラインド効果」で透けにくい特性を持つ。

 長短複合糸を使った「プロタック」は、繊細なファインウールを使用。光沢感や柔らかな手触りを特徴とする。多様化するニーズに合わせて近年はウールの混率を減らして価格を抑えたタイプなど生地バリエーションを増やす。ユニフォーム事業部の安藤律子学生服グループ長は「消費者に分かりやすい商品開発に力を入れる」と話す。

 素材の開発では東洋紡グループの強みを生かし、機能性の高い糸や生地を開発するスポーツ事業と情報交換を重ねる。

 昨年の合併のシナジー効果も期待できる。御幸毛織は高級紳士服製造のノウハウを持つ。このため制服向けのニットなどを作る時は、縫製のアドバイスを受ける場面もある。米田尚志ユニフォーム事業部長は「スクールユニフォームの有用性は認識されている。多様な制服の要望に応えられる素材開発を進めたい」と話している。