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特集 メンズインナー&ソックス/熱を帯び始めた市場/ボトムス中心に活気

2019年05月30日(Thu曜日) 午前11時58分

 紳士インナー・ソックス市場に活気が見えてきた。機能性肌着の登場以降、大型のヒット商品に恵まれていなかったが、ボトムスを中心に動きが出てきた。火付け役となったのがグンゼの次世代アンダー「エアーズ」で、着用快適性という需要を掘り起こした。ワコールもアンダーウエア「パンツホリック」の販売を伸ばすなど、マーケットは熱を帯びつつある。

 2500億~2600億円と推計されるメンズインナー市場。機能性肌着に続くヒット商品が誕生していないことなどから近年は縮小基調が続き、暖冬の影響を受けた19秋冬シーズンも盛り上がりに欠いた。「紳士インナー市場全体としては閉塞感が強くなっている」(インナーメーカー)のが実情と言える。

 そうした状況の中で動きが活発化してきたのがボトムス(アンダーウエア)だ。グンゼが2018年7月に発売したエアーズが19年3月で売り上げ50万枚を突破するなど、ヒット商品となった。紳士アンダーで当然だったウエストゴムを廃した同ブランドは、婦人分野で浸透している「快適」という価値を紳士分野にもたらした。

 ワコールが「ブロス」ブランドで展開しているパンツホリックも伸長を見せる。SからLLまで着用できるワンサイズ設計(18秋冬のデビュー時はSからLまで)のほか、伸びて包み込むという新感覚のはき心地が好評を博す。

 トリンプ・インターナショナル・ジャパンは「スロギー」ブランドでメンズライン強化に乗り出している。

 今後、靴下分野でも動きが出てくる気配を見せる。ナイガイは19秋冬から再編成したブランドの本格展開に入る。はき心地にこだわった5本指靴下を打ち出すなど、ナイガイの価値を示す。福助は使い捨てプラスチックの削減に乗り出す。

〈トリンプ・インターナショナル・ジャパン/「スロギー」で紳士強化/今後の伸び代に期待〉

 トリンプ・インターナショナル・ジャパンは、快適ボディーウエアのブランド「スロギー」で、紳士アイテムの販売を強化する。現状はスロギー全体の1%未満にすぎないが「伸び代がある」として積極訴求する。インナーシリーズ「スロギー エバー バランス」でも商品投入を行うなど展開ブランドも増やす。

 メンズラインは欧州市場では既に数年前から販売され、国によってはスロギーブランドの15%を占めるケースもある。日本では18秋冬で販売がスタートし、「スロギー ゼロ フィール」「スロギー エバーフレッシュ」「エス バイ スロギー」の3ブランドで紳士アイテムがそろう。

 19秋冬シーズンからはスロギー エバー バランスで新商品を打ち出す(9月上旬発売予定)。高機能特殊ポリマーによる調温調湿機能が特徴であるほか、レーヨンを使ったオリジナル生地を用いている。アイテムは、トップス(長袖、半袖)とロングパンツをラインアップする。

 販路は電子商取引(EC)が中心(自社サイトや大手ショッピングモール)となっているが、「ブランドの知名度は高く、良好な反応が得られている」と言う。認知がさらに進むなど、「準備が整えば百貨店をはじめとするリアルショップでの販売も視野に入れる」と話している。

〈ワコール/商品が持つ魅力を発信/「ワコールメン」で新商品〉

 ワコールは、「ブロス」を中心にワコール紳士インナーの認知を高めるための施策としてタレントを起用したプロモーションを展開してきた。これによって顧客との新たな接点が構築できたとし、19秋冬は商品力や商品そのものの魅力を発信することによってユーザーとの強固な関係作りを推し進める。

 ブロスブランドでは、18秋冬シーズンでデビューした「パンツホリック」が一番手。SからLまでワンサイズ設計と伸びて包み込むという新感覚のはき心地を持つ商品として登場し、19春夏でサイズ許容(SからLLまで対応)を広げた。19秋冬ではパッチや腹巻などのアイテムも投入し、一層の拡大を目指す。

 具体的には「19秋冬から20春夏の1年で30万枚超えの展開」を狙う。顧客に商品価値を分かりやすく伝えるために、各機能商品を“素材×設計”という切り口で訴求していく。売り場の商品構成も機能別に再編集して、消費者が商品を手に取りやすい売り場環境の構築を図っていく。

 「ワコールメン」では、ボクサーパンツを柱に、ブランドミッションでもあるフィッティングにこだわった、“納得の付加価値”を発信する。19秋冬では「フラットフィットパンツ」を新発売。ウエストゴムの締め付けがない解放系パンツが市場を形成する中、キュプラ繊維「ベンベルグ」の使用と、接着技術によるシームレスな設計によって満足度を高める。

 ボクサーブリーフは「ウエストゴムに入ったブランド名で売れてきた部分があるが、(ウエストゴムレスで)それもできなくなってしまった。これからは商品の良さで購買が判断される」と強調。「ワコールにとって有利な時代になったと思うが、気を緩めず開発を続ける」

〈グンゼ/SDGsに積極的対応/オーガニック綿使いの製品〉

 グンゼは、メンズインナーの主力ブランド「ボディワイルド」でオーガニックコットンを使った商品の販売を増やす。これまでもプレミアムグループで展開してきたが、19秋冬ではスタンダードグループでの販売も始める。持続可能な開発目標(SDGs)に応じる商品として提案する。

 日本でもSDGsへの意識が高まりを見せている一方で、「メーカーはSDGsへの対応が遅れている部分がある。何かをしなければならない」との考えから、オーガニックコットンを使った製品の販売を開始。スタンダードグループにもトップス2型、ボトムス4型を追加した。

 ボトムスでは、次世代アンダーウエア「エアーズ」を昨夏に発売し、ブリーフ、トランクス、ボクサーブリーフに続く第4のカテゴリーを作った同社。「紳士インナー市場には閉塞(へいそく)感も見られる。肌着の理想を研究する企業としてヒット商品を生み出し、市場活性化を図りたい」と強調する。

 その中で、もう一つの主力ブランド「YG」で面白い商品が登場している。Tシャツ専用アンダー「インティー」だ。Tシャツの下に着用することで透けや汗染みを防止するアイテムで、差異化技術である「カットオフ」を用いているため、ひびきにくいのも特徴の一つ。

 若年層をターゲットに開発したが、幅広い年代から支持を集める。透け防止だけでなく、「気に入ったTシャツを大切に着たい」「中古品として販売する際に価値を下げないため」といった観点でも広がってきた。販路は電子商取引(EC)に限定しているが、「予想以上に売れている」と言う。

 YGでは透けにくいインナー「ステルスインナー」を販売。19秋冬ではTシャツの上に着用する「オンティー」もデビューする。

〈平松工業/「+3℃」で冬こそ快適/体温を素早く熱伝導〉

 平松工業は19秋冬向けに、蓄熱加工肌着「+3℃」をラインアップに加えた。

 +3℃は、特殊カーボンポリマーを採用。カーボンポリマーが体温を吸収し、生地全体に素早く熱伝導することで、冬の寒い時期でも快適に過ごせるようにした。体から放出される遠赤外線を効果的に熱伝導するカーボンの特性を生かした。

 皮膚表面温度の挙動を模擬し、人体の熱損失量を近似で測定するサーマルマネキンを使ったテストがある。これによると一定条件下での衣服内温度は一般衣料と比べて、プラス3℃の評価となった。

 蓄熱保温以外では、UVカットや帯電防止機能も備える。冬の紫外線から肌を守り、着脱する際に発生しやすい静電気を抑える。これもカーボン由来の性質によるもの。

 平松工業は2019年7月期の売上高について、過去最高となる45億円(前期比110%)を見込む。主力となる紳士の定番肌着では量販店をはじめ、スーパーやホームセンター、ディスカウントストアなどの新規開拓が奏功した。シキボウの消臭加工「スーパーアニエール」などを採用した高付加価値な機能商品も順調で業績に貢献した。

 今後は高付加価値な機能肌着の開発を深耕する一方で、購入しやすい価格帯を意識した自主企画の開発も重視する。「それには『衝動買い』や『買い集める』といったコンセプトが軸になる。業界の慣習的な2P、3Pといったセット販売ではくみ取れなかった、選ぶ楽しさをくすぐるようなカテゴリーを肌着で開発したい」(平松明憲常務)と、次の成長に意欲を示す。

〈フジボウアパレル/綿100%防寒商品が人気/体の大きな人の肌着も〉

 フジボウアパレルは、「BVD」の19秋冬の展開で綿100%の防寒インナーシリーズ「綿暖」の提案に力を入れる。18秋冬で1型を投入したところ、「綿100%のカラーアイテムが売り場にないことや合繊使い商品との差別化が評価されて堅調に推移」した。19秋冬は商品も拡充し、一層の拡販を目指す。

 綿暖は、紳士インナー市場で潮流の一つとなっている綿100%の機能商品シリーズだ。“ふんわり厚地のスムース編み”“暖かい空気を蓄える二重編み”“ふっくら極厚エイトロック編み”の暖かレベル1~3段階(軽、中、重)の商品をラインアップ。裏起毛で着用した瞬間から暖かさを実感できる「瞬暖」シリーズも底堅い動きを示している。

 ニッチマーケットを狙った商品では体の大きな人向けの「ポチャボディ」シリーズが人気を獲得し、取り扱い店舗の数は100近くになった。同シリーズは、ありのままの自分に自信を持ってファッションを楽しんでもらうために「大きいサイズ」と「ファッション性」の両立をコンセプトにしている。

 トップス(クルーネックTシャツなど)は、前身頃が縦・横に立体的に大きくなっており、腹がすっぽりと隠れる設計となっている(特許取得)。立体成形ボクサーも加わり、選択の幅が広がった。商品開発には社内のアンバサダー2人をモニターとして活用している。

 BVDブランドのボトムインナーでは、「ボディギア」のアイテム拡充を図っている。同シリーズはスポーツ要素を取り入れながら、天然繊維のはき心地を付与したアンダーウエア。スポーツに適した素材、機能、形状を追求して商品を開発しているが、日常生活でも快適に着用できるデザインを施している。

〈アズ/ブリーズテックスが好調/19秋冬にレディース投入〉

 アズが16秋冬に発売した防風透湿肌着「ブリーズテックス」シリーズが順調に売り上げを拡大している。オージーフィルム(神奈川県山北町)が開発した防風透湿フィルム、「ブリーズテックス」を採用した肌着で、生地はポリエステル地とポリエステルフィルム、身生地の3層で構成する。

 昨シーズンは、この商品を進化させた「ブリーズテックス ハイパー」を投入した。ポリエステル生地の間に輻射熱反射フィルムをサンドイッチのように挟むことで防風性に加え反射熱効果もある。フィルムなしの肌着よりも衣服内温度を5℃高められる。

 大阪市立大学の都市健康・スポーツ研究センターと共同開発した。使用するフィルムは厚さ15マイクロメートルとより薄くし、着心地をより快適にした。長袖丸首シャツ、長袖ハイネックシャツ、前開きロングタイツでの展開に加え、今秋冬から腹巻きやアームウオーマーといった派生商品も投入する。

 2年間でメンズの売れ筋商品として定着したブリーズテックスだが、19秋冬からはレディース商品を初めて投入する。防風・ポリエステル裏起毛ベア天竺素材で、トップスはベスト、8分袖インナー、ハイネック8分袖インナー、ボトムスはフルレングスで展開する。色は杢グレー、黒、赤の3色展開。

 売り先の幅も広げる。これまでスポーツ用品店、量販店で展開してきたが、新たに百貨店向けで提案する。松井久嗣企画開発部長は「全方位的に拡大する」と意欲を示す。

 ブリーズテックスは、フィルムの商標であると同時に、肌着を含む被服の商標でもある。被服としての商標は、アズが登録する。

〈アツギ/人気インナーに紳士ライン/筋活動サポート商品でも〉

 アツギは、幅広い年代の女性から人気を獲得しているインナー「クリアビューティーアクティブ」にメンズラインを加える。「CBAフォーメン」の名称で19秋冬シーズンから展開するが、オールラウンドやコンプレッションなどの三つのシーンで商品を訴求する。

 オールラウンドでは成形のTシャツやボトムスを投入する。快適な着用感や吸汗速乾などの機能性を加味しているほか、ジャカードでデザイン性も付与する。コンプレッションは、クリアビューティーアクティブにはないカテゴリーとなり、丸編み地を使ったトップスとボトムスを打ち出す。三つ目のシーンはウインターで、防寒と抗菌防臭などの機能を加味した。

 筋活動の効率化のサポートが期待できる商品をラインアップする「アドエルム×アツギ」でもメンズアイテムを強化する。

 これまではユニセックスで使用できるアームカバーやカーフカバーを展開してきたが、トップス、ショートパンツ、ハーフタイツといったアイテムを販売する。

 「アドエルム」は、アクティブコンディショニングをテーマに開発された技術で、独自の運動理論を基に、用途に合わせて調合されたミネラルパウダーを応用する。アドエルム×アツギは、このパウダーを練り込んだ素材を用いて商品が作られている。

〈ナイガイ/「ナイガイ」を本格訴求/こだわりの商品そろえる〉

 ナイガイは、19秋冬物から「ナイガイ」ブランドの本格展開に入る。リブランドを実施した19春夏物は既存商品の再編成にとどまっていたが、19秋冬はブランドのコンセプトに合致した商品の充実を図った。はきやすさを追求した5本指靴下を打ち出すなど、こだわりの商品をそろえ、ナイガイの価値を消費者に伝える。

 リブランディングは2020年の創立100年に向けて実施しているもの。展開ブランドも、心地よさを考えた「ナイガイ コンフォート」、自分らしさを訴求する「ナイガイ スタイル」、動きやすさを加味した「ナイガイ パフォーマンス」、ロングセラー商品を集めた「ナイガイ トラディショナル」の四つに再編した。

 19秋冬では快適やソリューションなどのコンセプトに沿って商品開発を進めており、「ブランドにふさわしくないと判断した商品は販売をやめた」という。代表商材の一つで、ナイガイ コンフォートの中心アイテムでもある5本指靴下でははきやすい商品に特化。「ホールガーメント」横編み機を活用して一本一本の指の形にまでこだわって編み立てる。

 ナイガイ コンフォートでは着脱がしやすいループソックスも重点的に訴求する。ナイガイ パフォーマンスではゴルフソックスをリニューアルしたほか、ランニングソックスも投入する。

〈福助/「満足」でタイツを投入/脱プラの取り組みも〉

 福助は、基幹ブランドの一つ「満足」の19秋冬の展開でメンズタイツを商品化した。量販店におけるメンズタイツの売り場では“裏起毛”や“暖かさ”を切り口にした商品が多く台頭しているが、新商品はファッショントレンドになっているアウトドアに着目し、パッケージを工夫することで独自性を持たせた。

 新商品は寒さ対策に最適な、重ねばき用タイツ。抗菌防臭加工に加えて、乾燥への対策として潤い加工を施した。アウターへのまとわりつきを軽減する加工も付与した。80、160、240デニールの3種類を用意し、秋口から真冬にかけて着用できる。サイズはM~L、L~LL。

 満足では、はき方が選べる2ウエー設計の暖かビジネスソックスも打ち出す。見た目はレギュラー丈ながら、150%の縦伸びが可能なため、寒い時はふくらはぎをカバーできる。独自開発の特殊な編み方を採用しているため、伸ばしたり、戻したりしてもたるみにくいのが特徴。

 同社は使い捨てプラスチックの削減に乗り出している。「フクスケ ファン」ブランドで販売する靴下アイテムの資材で脱プラ化に取り組み、陳列の際に用いるフックを紙製に変更し、パッケージと商品の留め具をプラスチック製から糸に切り替える。1年間で約1トンのプラスチック削減につながるという。

〈三和/現場の魅力をアップ/「ゲンバ男子」とコラボ〉

 インナー、ファッション衣料製造卸の三和(大阪市中央区)はこのほど、町工場など、製造業で働く人のニーズに応える新たなメンズ機能インナーを開発した。4月から全国の量販店で販売を始めた。これまで一般衣料としての肌着を開発・販売してきたが、ワークウエア市場向けのインナー開発は今回が初。

 新商品は大阪市の中小企業支援機関「大阪産業創造館」(産創館、大阪市中央区)の製造業の若手不足の解消プロジェクト「ゲンバ男子」とコラボする。パッケージに産創館が商標を持つゲンバ男子のロゴや産創館のプロジェクト公式サイトにスマホですぐにアクセスできるQRコードをプリントする。

 この商品シリーズは、若者の感性に合った色柄のバリエーションに加え、吸水速乾、防臭、制菌などの衛生機能、さらに部分伸縮による着心地の良さなど5カテゴリーからなる。価格は千円前後。

 1年前に開発をスタート。大阪市の製造業3社で働く従業員計40人に直接ヒアリングを重ね、作業現場に最適な仕様にした。絶妙なフィット感、吸水速乾性、臭いなどへの機能性に優れ、現場から要望の多かった襟元の汚れへの対策も施した。

 三和の奥村浩司ニット事業部リーダーは今回の産創館との連携について「肌着の作り手として現場で、より快適に働ける肌着を作ることで、製造業の魅力を高め、少しでも若手不足の解消に貢献できれば」と話す。