繊維街道 私の道中記/大城戸織布 代表 大城戸 祥暢 氏(5)

2019年05月31日(Fri曜日)

ツウツウなら面白いモノ作れる

  大城戸織布の自販の顧客は50軒前後に増えた。そのほとんどが、1人か2人で運営している小規模アパレルだ。

 当社が現在自販している生地の平均単価は1㍍当たり4千円前後です。顧客は、それを使って4、5万円の服を一着作り、それを見せて注文を取る。注文が取れた分だけ生地を追加発注してくるという形が多いですね。

 当然ですが、当社の顧客は生地にこだわります。見本作りを何回もやり直したりするので、一つの生地見本を作るのに2、3週間かかることもあります。やり直しをするたびに料金を請求するので、見本を作るためだけに20万~30万円費やす顧客もいます。提案された生地の中から選ぶだけの大手アパレルならあり得ないことです。

 顧客とは、間に業者を入れたりせず、直接取引するようにしています。そうしないと、リンゴが欲しいと顧客が思っているのに、ミカンを作ってしまったということになりかねないからです。

 直接やり取りすることで、顧客も当社のことが分かってきます。こう言えばこうなるということを分かった上で、当社に要望するようになります。

  実は大城戸には、彼のモノ作りに共感し、志願して入社した若い“弟子”が2人いる。一番弟子の穐原真奈さんは、2017年から東京で開催されるようになった産地の若手テキスタイルデザイナーの合同展示会「ニナウ」に参加できるまでに成長した。

 穐原は今年で実質7年目になります。最初は私が受注した生地を織ってもらっていたのですが、3年目から一部の顧客を担当し、顧客と直接やり取りするようになりました。ニナウ展に出展してからは、“穐原の顧客”も増えています。穐原は今、弟子ではなく、仕事のパートナーです。

 一昨年には、椿原(悠至)が入社しました。モノ作りをしたくて、それまで勤めていた東京の住宅設備メーカーを辞め、文化服装学院でテキスタイルの勉強をしていたのですが、当社のことを知り、中退して来てくれました。

  大城戸は、自販を始めるのとほぼ同時に「フェイスブック」での情報発信を開始した。以来今日まで、ほぼ毎日のように発信し続けている。

 やろうと思う人が千人いたとすると、実際にやる人は100人、やり続ける人は1人なのではないでしょうか。発信し続けることで、「続ける人」だと思ってもらおうとしています。私という人間に興味を持ってほしいと思っています。

  取材の最後に、自販でもうけるための秘訣を聞いてみた。

 モノが売れなくなったといわれますが、欲しいものがないから買わないだけ。高付加価値品を作れば、幅広く売れるわけではありませんが、求める人はいます。価値を共有できる人を見つければ、もうかるというよりも、楽しみながら仕事ができます。織布工場とデザイナーがツウツウの仲になれば、面白いモノが作れます。そうなれば、ファッション業界も変わっていくはずです。

(この項おわり、文中敬称略)