中国/大手アパレルのデザイン 模倣疑惑が話題に/知財意識が向上、法整備も進む

2019年06月11日(Tue曜日) 午前11時26分

 中国で地場大手アパレルのデザイン模倣疑惑が話題を集めている。背景には、法整備の進展や一般市民の知的財産への意識の高まりがありそうだ。(岩下祐一)

 中国で大手アパレルブランドが相次いでデザインの模倣をSNS上で糾弾され、話題になっている。直近では5月、深センの新興ストリートブランド「ROARINGWILD」がSNS「微信(ウィチャット)」上で、中国のアパレル最大手、海瀾之家グループのストリートブランド「黒鯨(HLA JEANS)」に噛みついた。お笑い芸人風の若者が、ユーモアを交えながら両者の類似品を手に黒鯨の模倣を非難する動画を配信し、ネット上で大きな話題を集めた。

 3月には中国の著名スーパーモデル、呂燕氏がSNS「微博(ウェイボー)」で、高級レディースブランドの影児グループが自身のブランド「COMME MOI」を模倣したと訴えた。ところが逆に、業界関係者から呂氏が韓国ブランドを模倣していると非難される事態となった。

 中国で最も成功しているデザイナーブランドと言われる江南布衣も、やり玉に挙がった。昨年11月、中国の若手デザイナー、陳鵬氏が微博で江南布衣傘下の高級レディース「less」が自身のデザインを模倣していると指摘。直後に同社の株価が下がり、模倣騒動が影響したとの憶測を呼んだ。

 こうした話題が関心を集める背景には、中国社会の知的財産への関心の高まりがありそうだ。

 中国は米中貿易戦争で知財侵害を非難されるなど、海外からいまだに「ニセモノ大国」の非難を受けることが多いが、実のところ10年以上前から「知財大国」になっているとの指摘がある。

 中国で模倣対策支援を手掛けるIPFフォワードの分部悠介代表は、「2007年に法律が整い、10年から執行が強化されている」と指摘。地場大手企業の首脳は「知財の重要性を日本企業以上に認識している」と言う。17年の中国の特許出願は、7年連続で世界トップだ。

 一方、ニセモノ大国の汚名をぬぐえないのは、法執行の至らなさや、発展途上国と先進国が共存しているような国情が要因となっている。しかし、この2点も近年変化が見られる。

 以前は、海外メーカーが模倣品業者を訴え、裁判所が損害賠償の判決を出したとしても、業者は逃げることが多かった。ところが、14年ごろから当局の「個人信用システム」が機能するようになり、判決を無視した者に飛行機や列車に乗れなくなるなどの社会的制裁が加えられるようになった。これにより「判決の実効性が大きく高まった」(特許・商標の代理登録を手掛ける上海金天知的財産代理事務所の夏宇所長)。

 一般市民の意識も変わりつつある。経済発展を遂げた大都市の一、二級都市では、偽物は「安心安全面が心配」「ダサい」と認識されている。コンテンツの有料化が急速に進むネットテレビや音楽配信サイトは、一般市民の知財への意識向上に貢献しているとみられる。

 いまだ模倣品は絶えないが、こうした変化は、内販を手掛ける企業には福音だ。アパレル企業の模倣品へのリスクは、従前に比べ低減しているはずだ。