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特集「ITMA2019」プレビュー(1)/繊維機械の新潮流を発見

2019年06月14日(Fri曜日) 午後1時34分

 国際繊維機械見本市「ITMA2019」が20日から26日までスペイン・バルセロナで開催される。4年に1度開かれることから“繊維機械のオリンピック”とも言われる「ITMA」。今回も世界の有力繊維機械メーカー、パーツメーカーが、最新機種とソリューションを披露する。繊維産業を取り巻く環境が大きく変化する中、新たな潮流を発見する絶好の機会になることは間違いない。

〈46カ国・地域から1700社以上が出展〉

 ITMA2019は、バルセロナの国際展示場「フィラ・デ・バルセロナ・グランビア」で総計22万平方メートルの展示スペースを使って開催される。世界46カ国・地域から1700社以上が出展し、147カ国・地域から12万人の来場を予想するなど文字通り世界最大級の国際繊維機械見本市となる。

 展示カテゴリーも「紡績機械」「織機」「編み機」「染色加工機」「捺染機」のほか「ファイバー・ヤーン」「染料・加工剤」「縫製・刺しゅう」「不織布」、さらに「リサイクル・ソフトウエア」そして「研究機関」まで網羅。繊維産業の現在と今後の全体像にワンストップでアクセスできる展示会といえよう。

〈IoT、自動化なども注目〉

 繊維機械の開発で生産性と省エネルギーは永遠のテーマ。このためITMA2019でも生産性や省エネルギーに焦点を当てた開発が披露されることは間違いない。加えて近年、特に注目が高まっているのがモノのインターネット(IoT)を活用したシステムやソリューションだろう。前回の「ITMA2015」でも多くのメーカーがさまざまな機器やシステムを提案し、既に実用化も進められている。こうした動きがどのように進化し、いわゆる“インダストリー4・0”を繊維産業でどのように実現するのかを占うことが今回の見どころとなる。

 もう一つの注目点はメンテナンス性と自動化の動きかもしれない。近年、繊維機械メーカーの多くが従来機よりもメンテナンスの必要性が少ない機種を相次いて開発している。背景にあるのが新興国などでの熟練工不足。繊維産業が盛んな新興国でも経済発展によって他産業との間で労働力の奪い合いが起こっている。このため経験の浅い作業員でも容易に扱える機械のニーズが高まる。操作性の一段の向上やメンテナンスフリー化された機構への注目が高まる。

 自動化も同様の理由から求められている。先進国では人手不足が深刻化し、新興国でも熟練工の不足から、繊維産業に従事する労働者の不足へと段階が進みつつあるからだ。さらにIoTとの連動で自動化された“スマートファクトリー”への道筋が明らかになるのではないか。

 こうした繊維産業の新潮流と未来像を発見する機会としてITMA2019への期待は大きい。

〈主催者から/欧州繊維機械製造者協会(CEMATEX)会長 フリッツ・P・マイヤー 氏/テキスタイルの世界を革新する〉

 “インダストリー4・0”とインテリジェンスでフレキシブルなモノ作りの時代に入ったことで、技術革新はテキスタイルと衣料の製造に革命をもたらすだけでなく業界の持続に不可欠なものになりました。このメッセージが展示会のテーマ「テキスタイルの世界を革新する」に込められています。デジタル化はわれわれの業界にとって最大のチャンスであり、それはITMA2019で展示されるイノベーションに反映されています。

〈インタビュー/SDGsもテーマに/日本繊維機械学会 繊維機械研究会委員長 金沢大学 理工学系 教授 喜成 年泰 氏〉

 近年の繊維機械の開発トレンドなどを含め、「ITMA2019」の見所は何か。日本繊維機械学会の繊維機械研究会委員長を務める金沢大学の喜成年泰教授に聞いた。

  ――近年の繊維機械の開発のトレンドは何でしょうか。

 モノのインターネット(IoT)を活用した情報管理システムを繊維機械に組み入れる流れは続いています。この点に関して日本の繊維機械メーカーは早くからアイデアがあり、要素技術もかなりの水準まで開発しています。あとはデータを提供することにユーザーがどこまで同意するのかという問題があります。このため現在、IoTの活用は単独の企業グループ内での活用にとどまっています。しかし、IoTの真価は企業グループを超えてサプライチェーン全体の情報をつなげ、統合管理するところから生まれます。果たしてそれがどこまで進むのかが今後の焦点になるでしょう。

 もう一つ注目すべきは、国連が提唱するSDGs(持続可能な開発目標)という考え方が繊維機械の開発にも登場してきたことです。国などもこれを後押ししています。このため省エネや環境負荷低減に加えて、作業者の安全性や作業環境の改善なども開発テーマとなってきました。背景には、情報化によって生産現場の様子が消費者にもオープンにされるケースが増えていることがあります。環境や作業者の安全性を軽視したモノ作りでは消費者に受け入れられなくなっています。

  ――そうした観点も含めて「ITMA2019」の見どころは何でしょうか。

 省エネに加えて、省人化のニーズが高まっています。これまで熟練工の確保が難しくなるという状況の中で操作性の向上などが進められてきましたが、最近では新興国の繊維産業でも労働力自体の確保が難しくなるという段階に入りつつあるからです。このため自動化のための装置や技術が注目でしょう。もう一つは、SDGsの流れを受けた開発です。例えば染色加工機などでの水使用量削減といった課題があります。インクジェット捺染機の存在感が高まっているのもこのためです。

 そして、個人的にも非常に気になるのが中国の繊維機械メーカーです。昨年、中国・上海で開催された「ITMAアジア2018」を見て感じたのですが、中国の繊維機械メーカーの技術的キャッチアップが想像以上に進んでいる可能性があります。この動向には要注目だと思います。