秋利美記雄のインドシナ見聞録(63)/東京五輪の暑さ対策は「ノンラー」で

2019年06月17日(Mon曜日) 午前11時49分

 東京都の小池知事が2020年の東京五輪・パラリンピックの暑さ対策の一環としてボランティア向けの「かぶる日傘」を製作し、試作品を発表した際の世間一般の反応はかなり手厳しかった。

 ベトナム在住の日本人たちの間でもこの発表はちょっとした話題となった。

 私自身、ほぼ同じものを既にハノイの夜市で、露天商の売り子がかぶっていたのを目撃したことがあったので、今さら公金を投じて開発し試作するほどのものでもないだろうと思った。

 のみならず、これならベトナムの「ノンラー」のほうがずいぶんましだろうという意見がちらほらと見受けられた。

 ノンラーとは日本の菅笠に似た、ベトナムの伝統的な円錐形の笠のことである。あるいは、ベトナム戦争を主題にした映画でベトコンの兵士たちがかぶっていた三角形の笠と言ったほうが分かりやすいかもしれない。

 このノンラーは、椰子の一種の枇榔(ビロウ)という木の葉を主な材料としていて、軽くて丈夫、日傘の役割だけではなく、雨よけにも十分。天然素材で作られているから、環境にも優しい。

 もっとも現地ベトナムの若者たちはもはや時代遅れの「ダサい」アイテムと見ていて、買う人はいないが、海外からの観光客はお土産にいい、と喜んで買っていく。

 私自身、写真を撮る際に、現場がベトナムであることを説明したいときに、笠をかぶった行商の人が通るのを一緒に写すようにしている。現場が市場周辺なら、撮りたくなくても間違いなく必ずフレーム内に入ってくる。

 街中でも、シャッターを押す前に一呼吸おいて、ちょっとあたりを見回せば、どこかにはいるものである。それほど、今でも身近な存在で、ベトナムを象徴する小道具の一つでもある。

 名うての職人らがそろう中部のフエなら、透かし彫りや刺しゅう入りといった趣向を凝らしたものもできるし、最近は笠の外側に絵を描いたデザイン物もある。

 ベトナム全土で生産されていて、ハノイの市場で買うと4万ドン(200円)くらいはするが、地方ではもっと安いだろう。非常に経済的だ。

 というわけで、評判芳しくない「木枯し紋次郎スタイル」をやめて、日越友好のための取り組みとして、ベトナムの素敵なノンラーを採用してみてはいかがだろうか?小池百合子都知事殿。

あきとし・みきお 繊維製品輸入販売会社カラコロモ〈東京〉代表、ミラン・コンサルタント〈ホーチミン〉副会長