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旭化成/新中計「シーズプラス・フォー・トゥモロー2021」始動/21年度に営業益2400億円へ

2019年06月18日(Tue曜日) 午前11時52分

 旭化成は、2019年度(20年3月期)が初年度の中期経営計画「Cs+ for Tomorrow(シーズプラス・フォー・トゥモロー)2021」を策定、実行に入った。小堀秀毅社長は「成長への積極投資のスタンスは維持する」とし、3年間で約8千億円の設備投資・投融資を行う。収益性の高い付加価値型事業の集合体を実現させ、最終の21年度連結で売上高2兆4千億円、営業利益2400億円を目指す。

〈成果を上げた前中計〉

 前中期経営計画「シーズ・フォー・トゥモロー2018」は、19年3月期で終了(16~18年度)。多様な“C”(コンプライアンス、コミュニケーション、チャレンジ、コネクト)をキーワードに、将来に飛躍するための基盤作りを進め、自動車分野と環境・エネルギーを中心に設備増強やM&A(企業の合併と買収)などによる約6700億円の長期投資を行った。

 11年度から5カ年の中期経営計画(フォー・トゥモロー2015)の投資規模は累計約1兆円に達し、年平均では2千億円だったが、シーズ・フォー・トゥモロー2018の年平均は2200億円で10%上回った。大型のM&Aでは、米国の自動車内装材大手であるセージ・オートモーティブ・インテリアーズ(サウスカロライナ州)を18年に買収した。

 5月29日に東京都内で開催された新中期経営計画説明の席上で、前中計を振り返った小堀社長は、最終の2018年度に過去最高の売上高(2兆1704億円)と営業利益(2096億円)が計上できたことを評価し、「収益性を追求する取り組みができた」と強調した。増配に加え、17年ぶりの自己株式の取得と消却を決定し、総還元性向も目標(35%)を上回る39%となった。

 経営環境については「サステイナビリティー(持続可能性)への期待や産業構造の変化が顕著だった3年間」と説明。今後も温室効果ガス(GHG)の削減、海洋プラスチック問題への対応、ダイバーシティー、モビリティー革命などを念頭に置きながら経営に当たる。それらの中でも「欠かせないキーワード」との認識を示したのがサステイナビリティー。

 旭化成が目指しているサステイナビリティーには二つの形がある。一つは持続可能な社会への貢献であり、もう一つは持続的な企業価値向上。同社従業員が持つ共通の価値観である「誠実」「挑戦」「創造」をベースに世の中の課題へのソリューションを提供して社会に貢献し、それによって企業価値を高めるという好循環を生み出す。

〈設備投資・投融資8千億〉

 前中計での成果とこれからの姿を踏まえた上で策定したのが、新中期経営計画のシーズプラス・フォー・トゥモロー2021。従来の“C”による基盤作りを継続しながら、人と地球の持続的な発展にこれからも貢献していく旭化成グループの姿勢を「ケア・フォー・ピープル、ケア・フォー・アース(人と地球の未来を想う)」という言葉で表現した。

 新中計では、グローバルGDP成長率を上回る持続的な利益成長を志向する。最終となる22年3月期の目標として売上高2兆4千億円と営業利益2400億円のほか、売上高営業利益率10・0%(19年3月期実績9・7%)、EBITDA3700億円(3137億円)、売上高EBITDA率15・4%(14・5%)を掲げる。思い描く姿は収益性の高い付加価値型事業の集合体だ。

 そのほかの計数目標では、1株当たり当期純利益(EPS)を成長させるとともに安定配当と継続的な増配を目指す。持続可能な社会に向け、GHG排出削減にも視線を注ぎ、設備の導入や運転の最適化などに注力してGHG排出量を13年度の水準から35%低減させる(達成は30年度を計画)。電池セパレータや軽量化樹脂など、省エネルギーとGHG削減に貢献する事業も拡大する。

 設備投資・投融資(意思決定ベース)は、M&Aを含めて3年間累計で約8千億円を実施する計画で、前中計の年平均を500億円近く上回る見通し。小堀社長は「前中計では競争優位性がある分野に投資した」と前置きした上で、「世界経済は流動的。競争優位性を持つ分野に投資を続けるか、次の成長を見据えた投資を行うのが良いのか見極めがいる。その時の状況で判断する」と述べた。

 成長戦略では、成長領域を「マテリアル」「住宅」「ヘルスケア」の三つに定め、「ケア・フォー・ピープル」と「ケア・フォー・アース」の視点を持ちながら、「エンバイロメント&エネルギー」「モビリティー」「ライフマテリアル」「ホーム&リビング」「ヘルスケア」の五つの分野で価値提供を推し進める。

 経営資源の配分は四つの軸「価値提供注力分野」「高い収益貢献」「高い市場成長率」「持続可能な社会との親和」から判断する。事業ポートフォリオを転換し、サステイナブルかつ高付加価値な事業で稼ぐ構造を作るほか、グローバルオペレーション強化や新事業創出、デジタルトランスフォーメーションによる事業高度化の推進も重要なアクション計画と捉えている。

 グローバルオペレーションの強化では、各地域の市場特性に適応する事業の拡大を図るほか、各事業との連携で成長促進とシナジー創出を狙う。欧州、中国、米国、インド、ASEANといった国・地域に視線を注ぎ、企業理念の浸透、エグゼクティブマネジメントの強化、ナショナルスタッフの採用・育成、情報の共有、横断的マーケティング、R&D(研究開発)推進に取り組む。

 新規事業創出については、グループが持つ多様なコア技術と幅広い市場との接点を生かしたマーケティング機能、社内外でのコネクトを掛け合わせて価値創造を図る。コア技術は高度専門職制度によって深掘りと拡大を図り、マーケティングは「マーケティング&イノベーション本部」の設立で強化。コネクト活動では他企業との連携深耕などに力を入れる。

 デジタルトランスフォーメーションによる事業高度化では、デジタルマーケティング、マテリアルズインフォマティクス、生産技術革新、IPランドスケープに焦点を当てる。デジタルプロフェッショナル人財を150人以上の体制(21年度末)に拡充するなどアクセルを踏む。

〈繊維は引き続きコア事業〉

 繊維を含むマテリアル領域は、注力する価値提供分野に経営資源をシフトし、高付加価値事業の拡大を目指す。価値提供分野の一つであるモビリティーでは、30年時点でもエンジン搭載車が9割存在すると予想されているが、電気自動車の販売が飛躍的に伸びるといわれており、安全・快適・環境技術によってこれからのモビリティー社会に貢献する。

 ケア・フォー・ピープルの観点では、安心・安全でエコバッグ基材を、快適空間で人工皮革「ラムース」を展開する。未来の車の快適空間を考えたものでは、車室空間のコンセプトモック「AKXY(アクシー) POD」を制作した。搭乗者にとって快適・安全・安心な未来の車室空間をさまざまな繊維製品や樹脂製品、センサーなどを使って具現化している。

 ライフマテリアル分野では、特徴のある製品と技術力によって健康で快適な日々の生活に貢献する。再生セルロース繊維のほか、紙おむつ素材にも繊維が活躍する場が出てくる。小堀社長は「繊維は引き続きコア事業に位置付けている。繊維とプラスチック、センサーをそろって提案できる企業は少なく、大きな強みにする」と語った。

 住宅領域では、都市で培ったノウハウを生かして良質な社会ストックと豊かな暮らしに貢献する。その中でバリューチェーンマネジメントを強化・拡張し、ストック事業・新規事業を成長のドライバーとする。ヘルスケア領域は、グローバル・ヘルスケア・カンパニーに進化するため、海外市場での成長を加速。グループ内の一層のコネクトや国内外のイノベーションを取り込み、新製品・サービスを生み出す。

 これらの戦略を実行して、最終年度目標をクリアし、25年度には売上高3兆円、営業利益3千億円以上(営業利益率10%以上)、売上高EBITDA率16%以上を展望する。「16年度時点では25年度に営業利益1800億円を掲げていたが、前中計が順調に推移したことで“目線”を上げた。新しい3年もしっかりと取り組む」(小堀社長)。