繊維街道 私の道中記/ユキトリイ・インターナショナル デザイナー 鳥居 ユキ 氏(4)

2019年06月27日(Thu曜日)

創作活動で「守るべきもの」

  長くクリエーション活動を続ける中で、制作現場の環境も変化してきた。手描きに代わってパソコン上でパターンのニュアンスを伝えたり、繊維産地ではファッションデザイナーの要望を巧みに表現する職人が減少したりしている。こだわりの強いデザイナーにとって逆境とも言えるが、それでも鳥居はオリジナル性にこだわってきた。

 プリント柄については全てオリジナルで対応しています。柄は自分自身で描かないと納得できない。もちろんパソコン上で作業を行えば楽ですが、出来上がった柄はどこか平面的に見えてしまいます。一般的なドットやボーダー柄を見ても、線や色合いがはっきり出過ぎることがあります。格好良さを求めるならば、こうしたコントラストを効かせた服もいいと思います。しかし、私が追求するクリエーションとは明らかに違うんです。

 プリントだけではなく、生地もオリジナル。プリントや生地を独自に制作すると手間はかかるし、ファッションショーの寸前まで生地が仕上がらないこともあります。作業の効率化は重要ですが、デザイナーがディレクター(専門スタッフに指示して全体を監修する)的な役割に振れ過ぎると、服が無機質に見えてしまう。この表現が適切かどうか分かりませんが、強さばかりが目立ってしまいます。「ユキトリヰ」の服は見た目の格好良さよりも、お客さまが求めるかわいい雰囲気や優しいフィーリングを大切にしているのです。

  近年はファッションの現場で、AI(人工知能)の活用を推奨する論調がある。数年後、AIが服の需要予測や売れ筋の推考を行うかも知れない。ファッションデザイナーにとってAIは、どのような存在になるのか。鳥居は、寛容なスタンスでファッションの未来を見据えているようだ。

 AIの話題は、多くのメディアで報道されるようになりましたね。私はデザイナーとうまく共存できると思っているし、AIには得意分野で威力を発揮してほしいと思います。ファッションは感性の部分も大きいので、クリエーティブな面や手仕事の素晴らしさ、ぬくもり、人間的な優しさ、真心も大切だと考えます。微妙なさじ加減も人間の得意分野なので、今まで「ユキトリヰ」でやってきたクリエーションを実直に頑張りたい。でも、どこまで共存進化できるか楽しみでもあります。

  前述したクリエーションの現場に加え、東京の街を歩く女性のファッションも大きく変化している。ファッションに対する消費が伸びず、廉価なグローバルSPAの服が大量に出回る現状をどう見ているのか。約半世紀にわたって女性のファッションをリアルに見続けてきた鳥居は「やはり、ファッションは時代を象徴するもの」と話す。

 ファストファッション(グローバルSPA)は気軽にトレンドを取り入れられるので、さまざまな服をトライするにはいいですね。私の孫娘もファストファッションをスタイリングに取り入れ、うまく着こなしているようです。これも今の時代を象徴していますよね。

 また、変わらないこともあります。日本の女性は同じものを着て安心したり、周囲の目を気にし過ぎたり、外見のパッケージに左右されたりする傾向が強い。一方、欧州の女性は高級品、リーズナブルなモノに作用されず自分の価値観で服を選んでいます。日本人女性も自身の感性を信じて好きなものを堂々と着てほしい。自信に満ちていると輝いて見えますから。

(文中敬称略)