繊維街道 私の道中記/ユキトリイ・インターナショナル デザイナー 鳥居 ユキ 氏(5)

2019年06月28日(Fri曜日)

デザイナーに必要な「資質」とは

  鳥居へのインタビューを実施したのは、19秋冬シーズンの展示会を終えてのタイミングだった。東京ファッション・ウィークで披露した最新アイテムも好評で、取引先からは「パッチワーク柄のドレス」に反響があったと言う。一つ一つ丁寧に言葉を選び、クリエーションに対する考えを示す鳥居だが、若いデザイナーにとって参考となる発言も数多くあった。そして、「何事も手間をかけることが大事なのよ」と笑顔で話す。

 電子商取引(EC)や会員制交流サイト(SNS)が発達し、私も2016年7月に始めたインスタグラムを通じて、顧客の方と交流できるようになりました。インスタは世界中の人が見られますし、写真をいつでも投稿できるのでとても便利。私が着用するコーディネートを参考にしてくださる人もいて、モデルが着用する形式とは違い、身近に感じておしゃれをするきっかけになれば、と思って投稿しています。

 ただ、ファッションデザイナーがパソコンやスマートフォンでの作業に傾倒し過ぎると、自分自身の感性がなくなってしまうと思うのです。自分の目で見て、手で触って、街を歩く。画面上で色の加工や画像の修正を簡単にできるようになりましたが、情報収集など過度な利便性に頼るとデザイナーとしての個性も失われてしまう。

 画像で分かりやすく見えるテキスタイルを採用したり、(視覚的に)印象に残るパターンを使うケースも増えています。ECを念頭に置いた判断だと思うのですが、本来はミリ単位での調整や生地の触感にこだわることも必要だと思います。相反するようですが、私のインスタをアップしてくれる孫娘は「肌を白く加工しておいたよ」と親切に言ってくれています。確かにスマホは便利ですけどね(笑)。

  最後に、デザイナーへ求められる資質について聞いた。当初は「私が話すようなことではありませんし……」と丁寧に断られたが、無理を承知で聞くと、幾つかの心構えや貴重な体験談を披露してくれた。

 先ほども話しましたが、SNSの発達でリアルなつながりが薄くなった印象があります。そこに新しいビジネスが生まれることもあるのだろうけど、やはり「デザイナーの資質=個人の資質」なので、自身のセンスを磨くことが重要なのです。

 私の場合は団体行動が好きではなかったので、一人で欧州の美術館や観劇、美しいと思う場所へ出向きました。友人たちと観光するよりも、一人で考え、見たものをそしゃくしながら行動してきたのが良かったようです。

 一人でいると、時代をキャッチする能力やコミュニケーション力も鍛えられます。さまざまな問題を解決する危機管理のような能力も備わり、今でも一人で良かったと思いますよ。

 実は、人任せにしたコレクション品番が売れなかったこともあり、自分で選んだ生地やパターンを使用する大切さを痛感したことがあります。お客さまもどこか雰囲気が違うと感じたのでしょう。(ニットの)ネック部分のリブが少し違うだけでも、顔の見え方が大きく変わってきますから。即ち人任せにせず、自分のセンスを磨き、信じることでデザイナーの資質も高まります。見て、触って、自身の感性を創るという表現も正しいですね。

(この項おわり、文中敬称略)