両角みのりのイタリアモードの今 (16)

2019年06月28日(Fri曜日)

「シルク教育博物館」/ コモのシルクロードを訪ねて

 イタリアファッション界を支える高級ウール生地の産地がピエモンテ州ビエッラなら、シルクの産地はロンバルディア州ミラノに近いコモが中心だ。リゾート地としても知られるコモ湖だが、古くから、そして現在においてもイタリアにおける絹の生産量95%を占める絹の産地でもある。コモの中心地から少し離れた場所にひっそりと「シルク教育博物館」が存在する。

 大きな看板もなく、そこを目的地と定めて向かわない限り偶然にはたどり着けないだろう。観光客が多いコモ湖にあって、集客にあまりに無関心に見えるこの博物館。よく見るとただの博物館ではなく教育博物館と書いてある。大学や絹工場と同じ敷地にあり、研究や学位論文などシルクの研究や大学のニーズに応えるべく存在していると聞き納得した。

 施設内は12の部屋から成り、明るく風通しの良い空間に、1850年から1960年に使用されていた機械が展示されている。蚕の飼育室に始まり、製糸過程(煮繭、繰糸、揚返し)や撚糸、染色、織り、印刷まで絹織物が出来る過程を学芸員の案内で回ることができる。

 第2次世界大戦後、養蚕業は衰退し、生糸は主に中国や日本からの輸入に頼っていたそうで、当時輸入した生糸の証紙の展示もあった。山梨県、岐阜県郡上市、そしてコモ市と姉妹都市の新潟県十日町市など、産地や会社の名前が入ったレトロな証紙が額に入って飾られているのも楽しい。博物館のアーカイブからは、デザイナーの起こしたデザイン画と実際のプリント生地のサンプルの一部が展示され、設置された画面では、多くのデジタルアーカイブを見ることもできる。

 約10年の歳月をかけ1990年に開館して以来、ファイバーアートや絹をテーマにした展示会も定期的に行われており、個人から家族までの一般対象から、学校の課外授業や大学での研究向けのテーマごとのアプローチも積極的に行っている。博物館の資料により、織物産業がコモの経済・社会・地域の発展に与えた影響をうかがい知ることができた貴重な体験だった。織物産業に従事される方はもちろん、一般の方にも興味深い展示ではないだろうか。

博物館紹介 

Museo didattico della Seta

Via Castelnuovo ,  9 ,  22100

Como - Italia

Tel./Fax +39(0)31 303180

https://www.museosetacomo.com/museo.php?lang_id=1

もろずみ・みのり 15年前にイタリアに渡り、建築デザインとファッションを中心とした企業視察や通訳を務める。2016年からImago Mundi代表。