秋利美記雄のインドシナ見聞録(64)/暴露された原産地偽装

2019年07月16日(Tue曜日) 午後4時57分

 米中貿易戦争が激しくなるにつれて、米国向けの中国製品にかけられる高い関税を回避するために、ベトナムやカンボジアのような東南アジアに工場進出し、そこで生産して米国に輸出しようという動きは今年に入ってますます顕著に表れている。

 生産移転に伴う投資が膨大に上り、今年はベトナムへの最大の投資国が中国になってしまっているという。

 だが、正式に生産拠点を設立して製品を輸出するならまだいいが、中国本土で作られた中国製品をベトナムやカンボジアのような第三国に送り、ベトナム製品やカンボジア製品に偽装して米国に輸出しようとする業者も一部にはいる。

 特にベトナムは、中国に陸続きで接しているため物資を簡単に運べ、中継地となりやすい。ベトナム政府がこういう連中を見逃せば、それは中国企業を手助けすることになるわけで、米国は当然こうした動きに目をとがらせている。下手をすれば、中国の「共犯」に間違われる恐れもある。

 そんな折、ベトナム国内の家電業界で原産地偽装の問題が発覚し、大事件に発展している。

 ベトナムの家電大手の一角を占めるアサンゾは、主力製品のテレビをはじめ極端な安売りでこの5年間に毎年40~60%の急成長を遂げてきた。

 テレビ以外にも空調機器、さらに最近では携帯電話にも分野を広げ、「日本のテクノロジーを集大成したベトナム製品」といううたい文句で消費者の信頼を勝ち得ていた。

 ところが、この急成長ぶりに疑問を抱いた大手新聞「トゥイチェー」紙が昨年から、同社の従業員に装わせてスタッフを潜入させ、調査取材を行った。その結果、アサンゾは、中国企業から完成品を輸入し、製品のタグを「Made in China」から「Made in Vietnam」に付け替えていただけだったという衝撃的な事実が暴露された。

 米国に輸出する製品ではないとはいえ、それでも米国は事件の成り行きをしかと見守っていることだろう。

 ベトナムは「米中貿易戦争の最大の勝者」とさえ見られ、米国との貿易不均衡も急速に拡大している。昨年のベトナムの米国への輸出は492億ドルで、米国からの輸入は97億ドルに過ぎなかったという。トランプ大統領はそれが面白くないのか、ベトナムを名指しで非難する場面もある。

 ベトナム政府は事の重大さを感じてか、原産地表示問題に真剣に取り組みだしたようだ。

あきとし・みきお 繊維製品輸入販売会社カラコロモ〈東京〉代表、ミラン・コンサルタント〈ホーチミン〉副会長