ITMA2019レビュー⑨

2019年07月26日(Fri曜日)

市場に合った提案へ

 インクジェットプリンターでは、ヘッドを固定して1回でプリントする1パス方式が生産性から引き続き注目されるが、今回展は現在の市場に沿った提案の方が目立った印象がある。

 イタリア勢ではEFIレジャーニが、1パス方式で毎分90㍍を実現した「ボルト」を紹介した一方、1パスで先行するMSは今回、高速スキャン機「ミニ ラリオ」を発表した。1パス機「ラリオ」と市場のギャップを埋める手段として、ヘッド64個・毎時1094㍍を実現した。

 コニカミノルタは、1パスの「ナッセンジャーSP1」をパネル展示にとどめ、ブースでは「ナッセンジャー10」をメインに訴求した。1パスを導入する企業は世界でも限定されており、個別商談の方が向くことなどが背景にある。

 「ナッセンジャー10」はソフトウエアのアップデートなど扱いやすさを向上させた。「ITMA2015」(イタリア・ミラノ)から4年で50台を納入した実績を背景に、安定性の面でも向上させた。今後は紙分野での実績を応用し、稼働状況管理や分析による生産性向上、データ入力から実生産までのデジタルデータの流れを簡素化して省人化につなげるなどユーザーの利便性を高める開発も進めていく。

 東伸工業は、フラットスクリーンとインクジェットの利点を組み合わせた「iugo」の進化版や靴下用インクジェットプリンター「ギンガ」を披露した。iugoはフラットスクリーンで地色やベースパターン、インクジェットで柄を表現することで生産性と繊細な柄表現を両立させる。インクジェットをコニカミノルタ製に変え、印刷速度を毎時390平方㍍に向上させるなどの改良を加えた。ギンガは筒状の靴下に360度連続の柄をプリントでき、新しい提案として注目された。

 エプソンヨーロッパは、「モナリザ・エヴォ・トレ」で、プリントヘッド数64個の新機種を披露した。最高印刷速度は毎時779平方㍍(600×600dp

i 、スキャン式)で、最大印刷解像度1200dp

i となっている。

 ミマキエンジニアリングのブースでは、小ロット対応の昇華転写機「TS55」などが好評を得た。新たにインク供給ユニット10㌔(従来は2㍑)が可能とし、2500㍍の転写紙を使えるミニジャンボロールを搭載するなど長時間の連続稼働を可能とした。「タイガー 1800B MKⅡ」では電気系統を一新し、ノズルリカバリー機能を搭載するなど安定性が向上した。

 富士フイルムは、プリンタヘッドとインクを紹介した。半導体の製造プロセスを応用して開発したMEMS技術によるヘッドは精密性が強みで、SPGやムーベントなどの有力メーカーも同社品を使っているという。顔料インクは中間体から一貫で生産。独自の分散体により高い均一性を実現している。

 松井色素化学工業所は、顔料インクの新色、ホワイトインクを披露した。白度が高く、洗濯など耐久性も高い。同社はスクリーンプリント用の「ダイストーン」で培った技術を生かし、デジタルプリント用の強化に取り組んでおり、テキスタイル用だけでなく紙用にも広げていく。

 今回のITMAは各分野で新技術が発表され、10万5千人超が訪れるなど盛況のうちに閉幕した。ただ、館やブースの位置によっては閑散とし、4年前より来場が減ったとの声も聞かれた。トルコやインドなどの市況低迷、米中貿易摩擦など世界的に市場環境が難しくなっていたこともあるが、部品関連が分散されるなど展示方法の改善を指摘する声もあり、次回につなげることが期待される。

 次回は2023年6月8~14日にミラノのフィエラ・ミラノ・ローで開催される。(おわり)