共同開発の行方は YKK×JUKI (後)

2019年08月28日(Wed曜日)

縫製の悩みに取り組む

 「1890年代に米国のウィットコム・ジャドソン氏がファスナーを発明した当時はテープがなかった。その意味で“エアリーストリング”は原点に返った製品だが、縫製工の熟練度や技術に依存せず、縫製工程の簡略化もできる」。YKKの本田孝一執行役員ファスニング事業本部フィールドテクノロジー戦略室長は、新商品をこう紹介した。

 7月の商品発表以来、問合せが相次いだ。なぜ、エレメント(務歯)を生地に直接縫製できるのかという疑問だ。技術のポイントは、スライダーと開部の箱を後付けすることと、上止から開部まで縫製できる形状にしたことだった。

 電子千鳥縫いミシンをベースにした専用ミシンで、生地にエレメントを沿わせ、ジグザグ縫いする。エレメントに針が接触しない精度で生地とファスナーをくるめるように縫製する。エレメントと生地を同期させて確実に送る新機構のほか、各種部品にも専用の改良を加えた。縫いを制御するパネルで、生地の種類に応じた適切な送り量や縫いピッチを設定でき、縫製オペレーターをサポートする。

 「後付けの箱は簡単に付けられ、かつ取れない」(本田執行役員)、「生地厚は1・3㍉以下が推奨。今後もいろんな生地で検証を行う。送りの機構などにも特許がある」と、JUKIの本間君雄縫製機器&システムユニットプロジェクト主管はコメントする。

 テープのない分だけ衣服はより軽くなり、柔らかい風合いに仕上げることができる。ポケッタブルのような薄い生地にも適する。ファスナーの開け閉め動作の操作性も向上、ファスナーと生地との一体感も生まれ、すっきりとした印象のデザインになる。サイズはビスロンファスナーの№5で、スポーツ・アウトドアの中軽量衣料向けにまず展開。既に1社にテスト販売した。

 YKKが専用ミシンをレンタルし、日本、中国、アジアでサービス網を構築していく。実物は「YKKファスニング・クリエーション・フォー2020」でも紹介。「技術開発は第一ステップ。次に合理化、量産化に発展させる。縫製業界の悩みに今後も両社で取り組んでいく」(本田執行役員)

(おわり)