脱サラ撚糸道 西撚(後)

2019年08月30日(Fri曜日)

繊維に入って良かった

 受注が落ち込む中で、西川代表は事業転換に向けて動き出す。

 まずはイタリー撚糸機を売却し、合撚機やダブルツイスターを導入しました。この時ばかりは市場調査を行いました。衣料用は波が激しいのですが、非衣料は安定しており、借金し投資しても返済のめどは立つと判断しました。

 この糸商が仕事を回してくれたこともあり、事業は軌道に乗るものの、その糸商も経営が行き詰まる。ただ、そこの専務が他の糸商に転職し、そこからの受注でその後も事業は継続できた。しかし、その糸商も倒産してしまう。

 2度も発注先の倒産に合ったわけですが、その専務が自ら糸商を始められます。それがシモムラ(石川県小松市)の西山成幸社長です。今でもビジネスがありますし、その他、義理の弟が始めた商社を通じたレース用などの糸加工も手掛けています。ただ、ピーク時だった3年前に比べると、受注状況は80%ぐらい。コスト上昇もあり、採算的にも厳しいですね。

 同社は現在、合撚機3台、ダブルツイスター1台、アップツイスター3台、パーンリワインダー3台などを保有し、従業員4人で切り盛りする。西川代表の技術屋としてのノウハウもそこで生きている。

 実は設備が故障しても創業以来、業者を呼んだことはほとんどありません。ある時、電装系を電気業者に見てもらったことがあったのですが、どうも原因が分からない。そこでふと、計器を見て「こうしたらどうか」と指示を出してみると、直ってしまった。だから業者には嫌われているかもしれません(笑)。

 西川代表はデンソー時代に、異なる職種の1級、2級を取得し、愛知県複合技能士称揚を受けている。設備も自分で修理できるほどの技量を持つが、そんな西川代表も驚くことがあった。

 糸の品質管理の厳しさです。経糸9千本の内、1本でも糸切れがあればC反になります。つまり、99・9999%の精度を求められているわけです。これは宇宙産業と変わりません。最初はこんなに厳しい世界なのかと思いましたよ。

 異例の経歴を持つ西川代表だが、最後に脱サラの後悔はないのか聞いてみた。

 デンソー出身であることは他ではあまり話をしていません。心の奥底では残っていた方が良かったかもという気持ちもありますが、あえて抑えています。結論はこの世を去る時でしょう。ただ、繊維の世界に踏み入れたことは良かったと思っています。デンソーに居れば社内だけの人脈にとどまっていたと思います。撚糸業を始めたことで地元や永平寺町、福井県、そしてさまざまな組合を通じて、幅広い人とのつながりをもつことができました。これは大きな財産になっています。(おわり)