インドネシアの日系繊維企業/商材の高付加価値化進む/独自性生かし拡大めざす

2019年09月05日(Thu曜日) 午後4時54分

 インドネシアの日系繊維企業が、現地で作る商材の高付加価値化や事業構造の転換を進めている。背景には高水準の賃金上昇に加え、日本市場の売れ行き不振や短納期、少量生産といったニーズに現地の生産ラインが合致しなくなりつつあることがある。ローカル素材メーカーの技術力向上も進む。これから現地での事業拡大を目指すなら、コストを下げながら、各社にしかできない独自性や強みを磨く必要がある。(橋本 学)

 インドネシアの日系繊維企業の多くは、日本市場をターゲットとした最終製品の縫製やそれに使われる素材の製造販売を稼ぎ頭とする。これまでインドネシアは、アジアという巨大な繊維製品のサプライチェーンで、豊富な生産年齢人口や中国より競争力のある製造コストを強みに、生産が比較的容易な、汎用素材を大量に作る場としての役割を担ってきた。

 ところが日本市場が近年、よりリーズナブルな価格で店頭に置けてしかも良質な商品を、少量・多品種、さらに短納期で要求するようになってきた。このため、日系繊維企業では、従来の生産の在り方や既存のビジネスモデルを見直すところが増えている。

 近年の日系企業の動きで共通するのが人員削減。クラボウのクマテックス(ジャカルタ)、シキボウのメルテックス(東ジャワ州モジョケルト)、東洋紡グループ、ユニチカのユニテックス(西ジャワ州ボゴール)はここ数年で軒並み、工場従業員数を減らし、人件費高騰への対策を打ってきた。

 現地生産品の品質向上、高付加価値化も共通課題とする。ある日系繊維メーカーの社長は「汎用的な素材は現地企業でもそれなりのものができるようになっている。日系企業にしかできないことをやらないと、ここで生産する意味はない」と話す。

 衣料用原糸の高付加価値化を急ピッチで進めるのがメルテックス。ダブルツイスターをはじめとする新たな紡績設備を昨年から増設し、双糸、2層構造糸、強撚糸、精紡交撚糸、複合糸など生産品の高度化、多品種化を加速させている。販路も、ユニフォーム、中東民族衣装用生機に加え、日本向けのホテルリネン、寝装・リビング分野にも広げる。

 ユニチカトレーディングインドネシア(ジャカルタ)も、北陸で生産してきた一部のスポーツ衣料用途の機能性生地の生産を現地の協力工場に切り替える。同社の主力はスポーツウエア用ニット地だが、今期には機能糸を日本から調達した上で、機能付き高密度織物4品番も現地で本格的に生産する。

 先進国市場を中心に環境配慮型素材のニーズが拡大していることも、繊維工場に変化をもたらしている。原料分野ではインドネシア企業のティフィコがペットボトル由来の再生ポリエステルわたを既に製造販売するほか、東レグループも現地での再生ポリエステルわたの製造を具体的に検討している。こうした環境を切り口にした付加価値化も日本市場での需要増を考えれば、今後さらに進むものとみられる。