メーカー別 繊維ニュース

論 ニュースの深層/低浴比染色機の導入相次ぐ/加工工程での“環境対応”必須に

2019年10月08日(Tue曜日) 午後1時20分

 製造業にとって設備投資は事業継続に不可欠。どのような設備を導入するのかは、今後の事業戦略の大きな方向性を示すことになる。最近、国内の染工場が低浴比(染める生地に対する染料液の重量比が低い)の液流染色機を導入する動きが目立ってきた。背景には節水や省エネ、薬剤使用量削減によるコストダウンの必要性が高まったことがある。さらに受注獲得に加工工程での環境負荷低減の取り組みが必須になりつつあることがある。

 富士紡ホールディングスの紡績・加工事業子会社であるフジボウテキスタイルは、ニット染色加工の和歌山工場(和歌山市)の液流染色機を新型の低浴比タイプへ順次更新する。同工場は約30台の液流染色機を保有するが、既に1台を台湾製の低浴比タイプに更新した。半年ごとに1台のペースで更新を計画しており、山本公彦社長は「将来的には全台を低浴比タイプに切り替えたい」と話す。

 韓国製の低浴比タイプ液流染色機の導入も進む。ソトーグループの日本化繊(愛知県一宮市)はこのほど、韓国のドンアダイイングマシナリーの低浴比タイプ液流染色機「iスマート」を導入した。iスマートは染色槽が国内で一般的なチューブ型ではなくドーナツ型となっており、漕内で高速回転する生地に独自のノズル機構から染液を噴射し染色する。これにより浴比を1対3~4に抑えることができる。

 iスマートの国内販売と日系企業の海外拠点への販売は伊藤忠システックが担当しており、日本化繊のほか尾州産地や京都の染工場が導入した。常圧タイプもタオル向けで今治産地の染工場が複数台を導入した。ほかにも多数の商談が進んでいる。伊藤忠システックは年間100台の販売を目指すとしており、今後の需要拡大に強気の姿勢を見せる。

 国内の染工場で低浴比タイプの液流染色機が導入される背景には、厳しい事業環境がある。近年、エネルギーコストの高止まりに加えて染料・薬剤価格が高騰したことで抜本的なコスト削減の必要性が高まった。このため設備更新によるプロセス革新でコスト削減を進める動きが加速する。

 フジボウテキスタイルの山本社長は「加工単位当たりの水と染料の使用量を減らし、コストアップを吸収することが狙い」と話す。日本化繊の奥村直規代表取締役は、「水量の削減は排水量の削減にもなり、その出し入れの時間短縮にもなる。水量に加えて薬剤使用量、エネルギーの削減にもつながる」と期待を寄せる。

 もう一つ見過ごせないのが、環境負荷低減につながる設備を持つことが将来の受注獲得に不可欠となる可能性が出てきたことだろう。現在、繊維産業でも世界的にサステイナビリティー(持続可能性)への要求が高まる。伊藤忠システックは「海外では環境負荷を抑える設備を保有する染工場にしか発注しないアパレル・SPAが増えている」と指摘する。

 こうした動きが日本でも顕在化する可能性がある。このため染工場としては、今のうちから環境負荷の低い加工設備を導入することは今後の事業戦略にとっても大きな意味を持つ。短期的にはコスト削減、中長期的には受注獲得の前提条件として低浴比タイプ液流染色機といった環境負荷低減型設備への投資が不可欠になってきたと言えそうだ。